第46話 ルリカの過去
今回はルリカの過去の話です!
零夜達はホムラの温泉に入っているが、彼は露天風呂に浸かりながら一人で考え事をしていた。湯当たりしていないのにも関わらず、何故か赤面している。
「温泉は良いとしても……なんでここは混浴なんだよ……」
そう。ここの温泉は露天風呂が混浴なので、零夜が赤面しているのも無理はない。幸い零夜達以外に人がいないので助かるが、エヴァ達がタオル一枚で入っているのは流石にドキドキしてしまうのも無理ない。
「しょうがないでしょ。ここは混浴が売りだから」
「そうそう。スキンシップも兼ねて楽しみましょう!」
「楽しむどころか逆に倒れそうですよ……」
倫子とヒカリが零夜に寄り添ってスキンシップを楽しもうとするが、彼は首までお湯に浸かっていて、恥ずかしさでますます身体が赤くなり始めていた。
「零夜様は恥ずかしがり屋ですね。慣れれば大丈夫ですよ」
「慣れても赤面しそうだから無理だよ……」
ルリカの苦笑いに零夜が恥ずかしがりながら俯く中、エヴァとジャンヌが彼等の元に駆け寄ってきた。
「気になるけど、ルリカの過去ってどんな事があったの?」
「私も気になりました。教えてもらいませんか?」
エヴァとジャンヌからの真剣な質問に、ルリカはコクリと真剣な表情で頷く。
「私はかつて孤児でしたが、奴隷として売られてしまいました。そこで出会ったのが高藤光太郎さんです。私は彼の優しさに救われて共に行動していました。あの事件が起きるまでは……」
ルリカは自身のこれまでの過去を話し始めるが、途中で俯いてしまう。そう。今から話す事は彼女にとって重大な出来事だったのだ。
※
それは零夜達と出会う半月前、ルリカは光太郎と共に二人で旅をしていた時だった。その日は夕方ぐらいで、街にはあと少しで辿り着けるところだった。
因みに光太郎は十八歳の引きこもりだったが、とあるネットで突然異世界に転移。ルリカを買い取って契約したと同時に彼女と共に行動しているのだ。
「取り敢えずこのぐらいだな。それにしても、日が暮れるのは早いな……」
「ええ。このまま何事も無ければ良いですけどね……」
二人が楽しそうに話をしていたその時、突然風が強くなり始める。その様子にルリカが敵の気配を察し、思わず冷や汗を流してしまう。
「この気配……敵が来ます!」
「いきなりかよ……」
ルリカの報告に光太郎がため息をついたその時、一人の男が彼の前に姿を現す。その姿は黒いスーツを着用し、サングラスを掛けていた。しかも額には傷が付いているが、何者かによって付けられたのだろう。
「何者だ?」
光太郎の質問に男は冷静な目で前を向き、すぐに戦闘態勢に入る。その様子だと明らかに殺そうとしている覚悟だ。
「……一発で終わらせる」
男はすぐに両手の拳にオーラを溜め始め、そのまま冷静さを保ちながら光太郎に向かって走ってきた。
「来ます!ここは私が!」
ルリカが盾を構えてガードするが、彼は彼女に対してデコピンで頭を弾く。その威力はとても凄まじく、彼女は強く飛ばされて地面に激突。そのまま気絶してしまった。
「ルリカ!」
光太郎が慌てながらルリカの元に駆け付けようとした直後、男は彼の前に立ちはだかり、そのまま彼を睨みつけながら攻撃を仕掛けようとする。
「お前なんぞにこの俺を倒す事は不可能だ。恨むのだったら……自分の愚かさを恨めよ」
男は手刀で光太郎の首筋を斬り裂き、その跡から血が大量に吹き出てしまった。光太郎はそのまま絶命して前のめりに倒れてしまい、そのまま光の粒となって消滅した。
「さてと……お前等、連行しろ」
「「「はっ、神室様!」」」
神室の合図で兵士達が一斉に姿を現し、そのままルリカを抱えてその場から移動し始めた。それと同時に男も彼等と共にその場から転移したのだった。
※
「その後、私達の世界は滅亡してしまい、今に至ります……」
ルリカは涙を流しながらこれまでの事を話し終え、エヴァ達は何も言えず黙り込むしかなかった。すると、零夜は傷口のついた男を見てある事を思いつく。
「傷口のついた男……名前については知っているのか?」
「えーっと……確か神室とか聞いた様な……」
「そうか……まさかあいつがこの世界に来ているとはな……」
ルリカの説明に零夜は真剣な表情で考えている中、エヴァが気になって彼に質問する。
「神室って?」
「俺が小学生時代にいた苛めっ子だ」
「「「苛めっ子?」」」
エヴァ、ジャンヌ、ルリカが零夜の説明に疑問に感じていた直後、倫子とヒカリが彼女達に説明を始める。
「零夜君は神室にいつも虐められていて、強くなる為に道場に通っていたの。そして強くなった彼は神室をコテンパンに倒しちゃったわ」
「その後に彼は転校する事になり、高校生の頃に事故で亡くなってしまったと聞いたけど……まさか生きているとはね……」
倫子とヒカリの真剣な説明に、エヴァ達は納得の表情をしながら零夜の方を見る。彼は神室が生きている事を知って冷静な表情をしているが、冷や汗まで流していたのだ。
「神室との戦いは一筋縄ではいかなくなるだろう。あいつが根本的に悪に染まろうが、俺は戦う覚悟だ。ルリカの心の傷を付けた以上……必ず奴を倒す!」
零夜の冷静な決意にルリカは目に涙を浮かべ、そのまま零夜を抱き締める。自身を優しく大事にしてくれるだけでなく、彼の姿に亡き光太郎の面影を感じていた。パートナーは違っても、自身を優しくしてくれる事については変わらないだろう。
「ありがとうございます……零夜様……」
ルリカは我慢できずに涙を流してしまい、零夜達は彼女が落ち着くまで優しく抱いたり頭を撫でたのだった。
※
温泉から上がった零夜達は、この後どうするか考えていた。まだ時間はたっぷりあるし、食事もどうするか考える必要がある。
すると、倫子がある事を思いつく。
「だったら、魚料理を食べない?ホムラでは魚料理が有名だから」
倫子からの提案にエヴァはある事を思い出す。ホムラの街は温泉街の為、温泉卵や温泉饅頭などが有名だが、魚介類も豊富の為、魚料理がとても多いのだ。
「それなら、焼きししゃもが食べたくなるな」
「じゃあ、私はマグロの刺身!」
「私は魚の煮付けかな」
零夜、倫子、ヒカリの意見にエヴァはとある店を見つける。そこは定食屋だが、魚料理は勿論あるのだ。
「じゃあ、ホムラ食堂に行きましょう!其処の方が美味しそうだし!」
「良いわね!皆で行きましょう!」
エヴァの提案で皆が頷いたその時だった。
「おい」
「「「?」」」
零夜達が声のした方を見た途端、一人の男が彼等の後ろに姿を現した。その男と出会った瞬間、新たな事件も起ころうとしたのだった。
零夜達の前に現れた男の正体は、次回で明らかになります!




