第27話 修練場でのハプニング
今回は零夜と倫子のプロレスバトルです!
零夜達はガンテツの案内で修練場の前に辿り着くと、その前には頑丈でデカい扉があった。
この先に修練場があるようだ。
「この先が……修練場に繋がるのか……」
「じゃっど。いっき開くっど」
ガンテツが扉を開けると、そこは凄い光景が目に映っていた。多くの運動器具は勿論だが、何故かプロレスのリングまで置いていた。
異世界にもプロレスのリングがあるのは、全く持って想定外と言えるだろう。
「凄いところだが……なんでこの世界にプロレスのリングがある?」
ノースマンは呆れながらガンテツに質問し、彼は真剣な表情で説明する。
「こん世界ではどうやら『プロレス』ちゅう競技が流行っちょっごたっ。じゃっでこそ、こんリングも作ったでな」
「マジか……」
ガンテツの説明にノースマンがポカンと呆れてしまう中、零夜は先に進んでリングへと向かう。プロレスラーになる夢があるからこそ、立ち止まらずにはいられない性格だろう。
「零夜君?」
「この場所にリングがあるというのなら、俺はこのリングで戦う覚悟はできている。やるからには……強くなるのみだ!」
零夜は宣言したと同時にすぐにリングへと上がり、ストレッチを行いながら戦う準備をし始めた。
「零夜君はプロレスラーになる夢があるし、これは私も付き合わないとね!」
この様子を見た倫子も決意を固めながらリングの中へと移動し、準備運動をしながら戦闘態勢に入り始める。
「二人は戦う覚悟を既に決めているみたいね。折角だから練習試合を見てみましょう」
「ええ。プロレスの試合がどんなのか見てみたいしね」
ミミ達も決断した後にリングサイドへ移動し、零夜と倫子の戦いを観戦し始める。
ヒューゴ達もプロレスはどんなのかを知る為に別のリングサイドへと移動し、そのまま零夜と倫子の戦いのゴングが鳴らされた。
(最初から油断は禁物だ……ここは組み合わせていくか!)
零夜は心の中で警戒したと同時に、倫子と身体をぶつけ合いながら組み合い始める。
すると零夜は倫子を押し始め、リングロープへと身体を押し付けたのだ。
「おっと!」
それと同時に零夜は素早く倫子から離れ、強烈なハイキックを繰り出す。
しかし、倫子は片手で止めてしまい、攻撃は不発に終わった。
「その攻撃は見切っているから!」
「がはっ!」
すかさず倫子のボディーブローを喰らってしまった零夜は後退するが、根性で耐え切ってすぐに態勢を立て直す。
(やはりそう簡単にはいかないか……俺とした事が想定外だったかもな)
零夜は心の中で気を切り替えた直後、彼女はダッシュからのビンタを彼に炸裂しようとする。
「そこだ!」
すると零夜が倫子の左手首を掴み、攻撃を不発にさせてしまう。
更にそのまま背後に回り込んで彼女の腰を掴み始める。
「そらよ!」
倫子は抵抗しつつも後に投げられてしまい、両肩をリングマットに付いてしまう。
「今のは反り投げ!」
「零夜って、格闘技も強いんだね……」
アミリスとエヴァが零夜の戦う姿に興味が沸く中、ヒューゴは今の戦いに真剣な表情をしていた。
「今の技は攻め込みも良くて見事だと言える。しかし、ここからどう攻めるかだ」
ヒューゴの意見にミミ達も同意する。
「ヒューゴの言う通り。戦いでも自らどう動くかで戦況が変わる。一瞬一瞬が勝負だからね」
「零夜君だけじゃない。倫子さんも私も、ミミちゃんも、エヴァちゃんも、アミリスちゃんも、ソニアちゃんも、ジャンヌちゃんも戦士である以上は戦わなければならない。選ばれし戦士達としての自覚がある以上、この戦いも学ばないといけないからね」
ミミとヒカリの真剣な意見にエヴァ達も真剣に頷く中、零夜は倫子に投げられてコーナーポストに激突する。
すかさず倫子がブートの蹴りを零夜に見舞い、更に彼を前方に投げ飛ばして狙いを定める。
「はーっ!」
そのままジャンプと同時に二段蹴りの要領で振り上げた右足で、相手の顔面を蹴り抜く。これこそ彼女の技である新人賞だ。
「フォール!」
そのまま零夜は倫子にフォールされてしまうが、カウント2で返す。
「くっ……ここで倒れる理由にはいきませんよ!」
零夜はすぐに立ち上がったと同時にすかさず倫子の足を掴み、そのままジャイアントスイングの態勢に入る。
「うおおおおお!!」
零夜のジャイアントスイングで倫子は物凄く回されてしまい、そのまま投げられて背中を打ってしまった。
「今のジャイアントスイングは見事だ!これが零夜の本領発揮なのか?」
「ええ。けど、零夜はここで終わらないわ!」
ヒューゴの質問にミミが真剣な表情で答えた直後、彼は倫子の足を絡めて動きを封じ、そのまま彼女を強く抱きしめる。
「今の攻撃は何!?」
「新たな技だけど、凄く痛そう……」
零夜の新たな技に皆が驚きを隠せずにいて、倫子は痛みで苦しんでいる。零夜は倫子を強く抱き締めたと同時に、彼女の足と身体を絡めながら身動きを封じる。これこそ女性相手に使う技である『博愛ホールド』だ。
(女性相手に使う技だからな。俺の博愛ホールドからは逃れられない!)
零夜が心の中で勝負を決めようとしたその時、倫子はすぐに左手で零夜の後頭部を掴んで息を吸い込む。
「よし!」
すると倫子は決心したかのように、零夜の唇に自らの唇を強く合わせてキスをしてしまう。
まさに仰天行為その物である。
「うおっ!?まさかのキス!?」
「これは想定外かも!」
「なんか恥ずかしくなってきた……」
殆どがこの光景に赤面して顔を抑えてしまう中、ミミだけは嫉妬と怒りのオーラを放ってしまう。
さすがに我慢できなかったのか、素早くリングに上がって倫子に接近する。
「倫子さん!今のはやりすぎです!」
「?」
倫子がミミの方を向いた途端、零夜は仰向けに倒れて鼻血を出してしまった。彼は女性にキスをされる耐性は0に近い為、こうなるのも無理ないだろう。
「鼻血が出たわ!しっかりしなさい!」
「ごめん、零夜君!やり過ぎちゃった……」
「やり過ぎで済むなら……警察はいりませんよ……」
零夜は鼻血を出しながらも倫子の謝罪に答え、そのまま失神してしまう。
この結果はノーコンテストとなり、ミミが零夜にヒーリングを施しながら治療していた。
「私も零夜の事が好きだからキスしたかったのに!」
ミミは嫉妬で頬を膨らましながら倫子の方を向く。零夜とは幼馴染の関係なのだが、実は零夜の事がとても好きである。自ら告白しようとしているが、なかなか素直になれない部分もあるので難しさを感じている。
「ごめんね。じゃあ、ミミちゃんもしたらええやん」
「へ!?私が!?」
倫子の謝罪と提案を聞いたミミは、思わず驚いてしまう。まさかのキスを自身もする事になってしまうのは、余程の想定外と言えるだろう。
「ミミちゃんは零夜君の事が好きだから、この場面でキスをしてもいいと思うけど」
「私なんか無理ですよ!多分、失敗しそうで怖いですし……」
ミミは顔を赤くしながら恥ずかしがりつつも、零夜のヒーリングを終えて彼に視線を移す。彼女の表情は負けたくない気持ちと、自身も零夜の事が好きな思いで満ち溢れていた。
(けど……頑張らなきゃ!私だって零夜の事が好きだから……)
ミミは冷静に落ち着きながら息を吸い込み、決意を固めたと同時に零夜の唇にキスをした……
戦いはまさかのキスで失神。無理もないですね。
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