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第272話 憧れを超える決意

今回は決勝戦へのプロローグです。

 準決勝の第二試合が終わりを告げられたが、観客達は一部が帰っている状態だった。しかしラビリンは次の決勝戦の内容を伝え始めようとしているのは勿論、帰ろうとする観客達を呼び戻そうとしているのだ。


「皆さん、帰らないでください!まだ決勝戦の内容が伝わっていませんよ!」


 ラビリンの実況を聞いたその場にいる全員が立ち止まり、すぐにそれぞれの席へと戻り始める。決勝戦の内容についても気になっている者もいるので、聞き逃す理由にはいかないのだろう。


「決勝戦についての会場ですが、地球にある国立競技場で行う事になりました!対戦カードはブレイブペガサスとプリンセスヴァルキリーズとなっていて、試合内容は……一騎打ち対決の5本対決となります!」


 ラビリンのルール内容に観客達は勿論、零夜達も驚きを隠せずにいた。最後の戦いが一騎打ちとなると、激しい戦いになるのは確定と言えるだろう。特にブレイブペガサスでは零夜、ミミ、倫子、エヴァの四人が有力。プリンセスヴァルキリーズでも風子、夢子、ポーラ、アルビダの四人がこの戦いを得意とする。しかしどの様に対戦を決めるのかは、当日になれば分かるはずだ。


「試合は一週間後!それまで皆様、楽しみに待ってください!」


 ラビリンの宣言と同時に説明が終わりを告げられ、観客達は帰り始める。零夜と三上は倒れてしまったヒューゴが心配である為、急いで彼の元へと向かったのだった。


 ※


 零夜と三上はシャイニングナイツの控室に辿り着き、ドアをノックしようとしていた。するとヒューゴ達が彼等の前に姿を現し、零夜と三上に視線を移す。


「ヒューゴ。怪我はなかったか?」

「ああ……なんとかね……」


 ヒューゴの怪我が無い事に、零夜と三上は安堵のため息をつく。しかし彼は下を俯いたまま、顔を上げようとはしなかった。観戦していたグラディアスの皆の期待をぶち壊しにした罪はとても重く、責任を果たせなかった事を後悔しているだろう。


「ごめん……零夜君。勝つ事ができなかった……」

「気にするなよ。風子さんが強かったし、俺も彼女に何度も負けたからな……」

「えっ?零夜さんも風子さんと戦った事があるのですか?」


 ヒューゴは俯いた状態で零夜に謝罪し、彼は苦笑いしながらも横を向きながら過去を思い出してしまう。それに紬は疑問に感じ、彼に質問してきたのだ。零夜が風子と戦った事を詳しく知っていないので、聞きに行くのは当然と言えるだろう。


「ああ。俺が選ばれし戦士として活動する前だが……あの時は普通の会社員だったからな。彼女は武術全般が免許皆伝という実績を持っていて、俺でさえも太刀打ちできなかったからな……」


 零夜は当時の事を振り返りながら、ヒューゴ達にその時の事を話し始める。

 当時零夜はプロレスラーになる為、様々な武術に取り組んでいた。その時にアドバイスしてくれたのが風子であり、彼女の指導を受けながらも徐々に強くなっていた。時には風子に挑んで実力を試す事もあったが、見事コテンパンにされてしまったのだ。

 因みに三上もこの訓練に参加していて、こちらも風子に太刀打ちできなかったのだ。


「この話を最初に聞いていたら……攻略法が分かってこんなに早くやられる事はなかったぞ!」

「それなら早く言ってよ!」

「ご、ごめん……」


 零夜の話を聞いたクレオパトラとクロエはぷんぷん怒り、それに零夜は謝罪してしまう。するとヒューゴが真剣な表情で彼に近付き、その肩に手を置いた。


「大丈夫。零夜君は悪くない。負けてしまったのは僕が弱かった。それだけさ」

「ヒューゴ……」


 ヒューゴは零夜に対して寂しそうな笑みを浮かべた後、そのまま控室の中に入っていく。それと同時に紬達も控室の中に入り、扉は閉じられてしまった。


「行こうか……」

「ああ……」


 零夜と三上はお互い頷き合い、そのままその場から立ち去っていく。これ以上言葉を交わすのは不要と判断しただけでなく、後はチームでの問題だと感じていたのだった。


 ※


 零夜は三上と別れた後、会場の外にあるベンチへと座り込む。彼は夕暮れの空を見上げながら、今後の戦いを真剣に予測し始めていたのだ。


(相手はプリンセスヴァルキリーズか……けど、相手は風子さんだし、俺は彼女を超える事ができるのだろうか……)


 零夜は心の中で不安を感じながら空を見上げたその時、風子が彼の元に姿を現す。彼女は外の空気を吸いに行こうとしていたが、零夜を偶然見つけてしまったので今に至るという事だ。

 

「何を考えているんだ、零夜?」

「ギクッ!」


 風子が零夜に呼びかけた途端、彼は慌てながら彼女に視線を移す。情けない姿を見られてしまった事がとても恥ずかしく、慌ててしまうのも無理ないのだ。しかし風子には嘘は通じないので、大人しく話しておく必要があるだろう。


「風子さん!じ、実は……」


 零夜は自分が考えていた事を、そのまま正直に話し始める。彼は心から正直な意見を通す性格の為、それが原因で騒動を起こしてしまう事も。しかしその性格こそ彼の長所と短所でもあり、零夜らしい性格でもあるのだ。

 零夜の話を聞いた風子は納得したと同時に、彼女も夕暮れの空を見上げる。


「それなら私も同じ気持ちがあった。高校生で剣道部に所属していた時の事だが、全国大会で強敵と遭遇した事があった。あの時の悔しさによって、今の私がここにいるからな」

「えっ?風子さんもですか?」


 風子は自らの過去を振り返りながら、その当時の事を赤裸々に零夜に話し始める。それに彼はキョトンとしてしまうが、彼女の話を真剣に聞く事に。

 風子が高校一年生の頃、剣道部の未来のエースとして団体戦の全国大会に出場。その時の相手が当時日本最強と呼ばれた高校二年生の強敵であった。風子は諦めずに挑んだが、結果は判定負け。チームも1回戦で敗れてしまい、風子は悔し涙を流してしまった。


「あの時の敗北があったからこそ、翌年の全国大会でリベンジを果たす事に成功。そのまま勢いよく個人戦で優勝してしまい、新時代の到来と話題になってしまったけどな」

「そうだったのですか……だから今の風子さんがここにいるのですね」


 風子の話を聞いた零夜は納得の表情をしていて、彼女も笑顔で答えていた。その直後に仲間達の呼ぶ声が聞こえ始め、二人は時間だと感じてベンチから立ち上がる。


「いずれお前も私を超える時が来る。1週間後、戦えるのを待っているぞ」

「ええ!その時は全力で立ち向かいます!あなたを必ず超える為にも!」


 零夜と風子はガッチリと握手を交わし、そのままそれぞれの仲間達の元へと駆け出していく。その様子をカーンがこっそりと木の陰から見ていて、うんうんと頷きながら納得の表情をしていた。


(来週行われる決勝戦……この二人がどう戦いを繰り広げるのかで、ヒーローズエイトの代表が決まるだろう。この戦いは……見逃せないみたいだな)


 カーンが心から思った直後、真剣な表情で夕暮れの空に視線を移す。同時に風も強く吹き始め、トーナメント史上最大の戦いになろうとしていたのだった。

 1週間後に行われるトーナメント決勝は、ブレイブペガサスとプリンセスヴァルキリーズの戦い。果たして勝つのはどちらなのか。そしてヒーローズエイトに選ばれるのはどのチームなのか……

いよいよ戦いは決勝戦へ。果たしてどうなるのか!?


次回投稿は12月20日(金)です!


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