第220話 おかしなおとぎの戦士達
おとぎの戦士達が登場します!子供達がこれ見たら……泣きそうかも……
「おーい……いい加減機嫌直してくれよ……俺が悪かったからさ……」
敵を倒し終えた零夜達は桃太郎達の元へ向かおうとしているが、不穏な空気が漂っていた。彼が謝罪の言葉を掛けても、ミミ達は頬を膨らましながら横を向いていた。おまけに倫子は彼の背におんぶされていて、そのままグーグー寝ているのだ。
その原因は零夜が自来也の大技を繰り出してしまった事で、ミミ達は爆発に巻き込まれてしまった。当然零夜はミミ達にボコボコにされた上、倫子を背負いながら歩く羽目に。こうなったのは自業自得であるので、誰も味方してくれないだろう。
「元はと言えば零夜が悪いんだからね。少しは反省しなさい!」
「はい……」
ミミからの指摘に零夜はガックリと項垂れたその時、倫子がゆっくりと目を覚ました。目をゴシゴシと右手でこすった後、キョロキョロと辺りを見回し始める。
現在いる場所はまだ平原となっているが、目の前に街があるのを確認する。
「ねえ、あれって目的地の街じゃない?」
「ん?」
倫子が指差す方をよく見ると、目的地である街が見えていた。しかも看板には「おとぎの世界の中心街」と書かれていて、ウサギは笑顔でコクリと頷いていた。
「その通り!あれが僕達が今いる街さ。ここを防衛拠点としているけど、敵はあの城の中さ」
ウサギが指差す方を見ると、遠くに立派な洋風の城が建てられていた。元は誰かが住んでいたが、カボチャ男爵によって奪われてしまった。今では彼が満足そうに優雅に暮らしていて、皆はワナワナ怒るのも当然である。
「凄い城……ここにカボチャ男爵がいるのね。でも、誰が住んでいたのか気になるけど……」
「「「うーん……」」」
マーリンが立派な城にカボチャ男爵がいる事に納得するが、前は誰が住んでいたのか気になってしまう。アミリス達も同様に考え始めたその時だった。
「それはこのわしだ!」
「へ?あなたは……いいっ!?」
マーリンは声のした方を見ると、一人の男が姿を現した。それにマーリンは驚いて引いてしまい、アミリスの隣に移動してしまった。
その理由は王様でありながら、パンツ一丁の筋肉男である。彼こそ裸の王様であるのだ。
「あなたは裸の王様!もしかするとこの王国の王なのですか!?」
「そう。わしはおとぎの世界の王を務めている。以前はこの城に住んでいたが、カボチャ男爵に負けて追放されてしまったのだよ」
零夜からの質問に王様は冷静に答え、現在の状況を正確に説明する。元はと言えばこの国の王であり、この城に住んでいた。しかしカボチャ男爵に奪われてからは、この街でレジスタンスとして活動しているのだ。
「それでこの街に住んでいるのですね」
「うむ。今ではレジスタンスのリーダーを務めている。ウサギよ、無事に帰ってきただけでなく、増援を連れてきてご苦労だった」
「いえ、もったいない言葉です」
ウサギは王様に対して敬礼しながら応え、彼はコクリと頷いていた。もしウサギが死んでいたら、増援は来ずにこの街もやられていただろう。
「では、わしの仲間を紹介する。付いてきてくれ」
王様は零夜達を連れて、自身の仲間がいる場所へと向かい出した。すると倫子がスリスリと零夜の顔に擦りついていて、それに彼は彼女に視線を移そうとする。
「抱っこですか?」
「うん。お願いできる?」
「仕方がないですね」
零夜は倫子をおんぶから抱っこに切り替え、落とさない様にムギュッと抱き締める。すると彼の手が彼女のお尻に当たるが、落とさない様にするにはこうするしか無いのだ。
「はい。そろそろ着くから離れましょうね」
「ひゃっ!」
しかしエヴァによって倫子は引っ張られ、地面に足をついてしまった。これ以上やらかしたら大変な事になると判断し、今の行動を取ったのだろう。
「良いところなのに……」
「これを皆に見られたら大変な事になりますよ……」
倫子は不満そうな表情で頬を膨らまし、日和は苦笑いしながらも彼女を落ち着かせる。このまま抱き着いた状態が続いていれば、お姉さんの立場から甘えん坊の存在に変わってしまう。こんなのを他の皆に見られたら、赤っ恥は確定だ。
「話はそこまでだ。さっさと行くぞ」
杏の合図に倫子は不満さが残っているが、従うしかないと考えて先に進み始める。零夜も自らのやるべき事に気付き、慌てながら後を追いかけ始めた。
※
街の中に入った零夜達は、辺りを見回しながら進んでいた。するとスーツ姿のメガネ男が姿を現すが、彼はおかっぱで円形が禿げている髪型をしていた。この人こそ金太郎である。
「ウサギ、増援を連れてきてくれたようやな。お疲れさん」
「途中で怪我したが、この方達が助けてくれたんだ」
ウサギは自身を助けてくれた零夜達を指差し、金太郎は納得の表情をする。そのまま彼は零夜達に近付き、一礼をしながら挨拶する。
「ワイは金太郎。ビジネスインテリ武将と言われておるで!」
「だからスーツ姿なのね……なんか違和感があると思ったらこんな事だったのか……」
金太郎の自己紹介に対し、キララは苦笑いしながらも納得する。金太郎と言えば前掛け姿なのに、スーツを着ているのは違和感があると感じていた。しかし、その理由を聞いた途端、彼女やミミ達も納得の表情をしていたのだ。
「まあ、幼い頃は前掛けやったが、恥ずかしくてスーツにしたんや。今じゃなんでもできるインテリ男と呼ばれておるで!」
「なるほど……他にもいるの?」
金太郎の説明を聞いて納得したミミが、彼に対して質問をする。同時に一人のイケメン男が姿を現すが、服装の和服姿から見ると桃太郎である事が判明した。
「おお。ウサギ、無事だったか!」
「桃太郎!ただいま!」
桃太郎はウサギが無事だった事に安堵し、すぐに零夜達に視線を移す。彼等の助けによってウサギは助かる事が出来たので、お礼も兼ねて自己紹介をする。
「俺は桃太郎。ウサギを助けてくれて感謝する」
「いいや。当然の事をしただけさ」
「そうか……ん?」
零夜が苦笑いした直後、桃太郎はすぐにルリカに視線を移す。彼女犬の獣人である事に間違いないが、彼としては亡くなっていた犬の面影があったのだろう。
「何でしょうか?」
「いや……お前を見ると、亡くなっていた犬の事を思い出した。名前は何と言う?」
「ルリカです。今では零夜様のパートナーを務めています!」
ルリカは桃太郎に対して自己紹介をした後、彼は零夜を見つめながら考え始める。彼が犬の獣人をパートナーにしているのなら、もしかすると可能性があるかも知れないだろう。
「桃太郎、どうした?」
零夜が桃太郎に対して心配な表情をしたその時、桃太郎の頭の中である閃きが思い浮かべた。すかさず彼は零夜に視線を移し、彼の両肩をガッチリと掴んだ。
「お前が犬の獣人をパートナーにしているのなら、猿の獣人とキジの鳥人もパートナーにしているのか?」
「パートナーにはしているが、仮契約となっているからな……」
桃太郎からの質問に対し、零夜は頬を掻きながら正直に応えていた。それを聞いた桃太郎は喜びの表情をした後、考えていた事を説明する。
「それなら話は早い。四天王の一人である鬼達を倒すには、俺のスキルが必要になる。犬、猿、キジの三人が揃えば、鬼達も余裕で倒せる事が可能だ」
「本当なのか!?」
桃太郎の説明を聞いた零夜とルリカは、彼に接近して真剣な表情で見つめ始める。その話が本当なら、早速伝授して欲しいと懇願してしまうのは当然である。
「そうだ。しかし、伝授される者は強き者でなくてはならない。まずはお前の実力を確かめる為、決闘を受けてもらう!」
「へ!?決闘!?」
桃太郎は零夜を指差しながら決闘宣言をしてしまい、それに彼等は驚いてしまう。しかし王様はその様子を見ていて、楽しそうな笑みを浮かべていたのだった。
桃太郎から決闘宣言!果たしてどうなるのか!?
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