第216話 帰還からの新たな道
今回で第六章終了です!
トーナメント進出から二日後、零夜達は山口県からヒーローアイランドに帰還していた。待機していた仲間達にお土産を配り終えた後、付いてきていた修吾達にヒーローアイランドを案内していた。
「お前達がここで生活しているとは驚いたが、自然豊かで良い所だな」
修吾が辺りを見回しながら良い場所だと実感していて、文香達も小鳥のさえずりを聞きながら楽しんでいた。ヒーローアイランドは自然豊かな場所だが、異世界の動物達や多くの種族の女性達がいる。その事については事前に伝え済みなので、大丈夫と言えるが。
「まあな。自然豊かなところで鍛えるからこそ、新たな強さも身につくし。それに異世界から来た皆は元奴隷達だが、皆いい人ばかりだ」
零夜が笑みを浮かべながら説明したその時、ミノタウロス族の女性が駆け付けてきた。彼女は奴隷の一人であるキャトルで、酪農と農業の担当をしている。因みに胸はとても大きく、オーバーオールがとても似合うのだ。
「零夜さん!大きなりんごの件ですが、新しい商品を開発しました!是非来てください!」
「分かった。すぐに行く!」
零夜は修吾達と共に、キャトルの案内でりんご園へと向かい出す。そこに辿り着くと、他の種族達がりんごの中を掘りながら収穫作業をしていた。スコップやツルハシ、ドリルなどで掘りまくり、回収済みのりんごはジュースやキャラメルなどに加工されていたのだ。
「ほーう。ここまでやるとはね……」
「それと同時にジュースも用意しています!」
アミがりんごの加工作業に関心を持つ中、キャトルはりんごジュースをコップに入れながら配り始める。ストレートで絞ったジュースなので、そのままの素材が楽しめるのだ。
「どれどれ?」
零夜達はストレートのりんごジュースを飲むと、さっぱりとした甘さが口の中に広がっていた。百%の無添加果実である為、素材の良さの実感は勿論の事。更にそのりんごは蜜入りりんごとなっているので、甘くて誰でも飲みやすくなっているのだ。
「美味しい!このりんごジュース、滅茶苦茶イケるぞ!」
「ええ!数本か家に持って帰りたいぐらいだわ」
「ありがとうございます!商品化してビジネスを展開したいと思います!」
零夜達からの高評価を聞いたキャトルは笑顔で一礼し、すぐにりんごジュースのビジネスに取り掛かる。彼等から高評価を聞いた以上、商品化しなければ意味がないと感じたのだろう。
「奴隷については速報などで聞いているが、お前達は彼女達を仲間として迎え入れているみたいだな。しかし、何故か女性が多いみたいだが……」
「アークスレイヤーは女性を攫っているが、年齢や見た目で決めつけているからか。後は殺されてしまうのがオチとなっている」
修吾からの質問に対し、零夜は冷静にそう応える。アークスレイヤーは女性を奴隷として働かせていて、年齢は中学一年生ぐらいから三十九歳までの女性を奴隷としている。美人や可愛い人限定で、太っている人や醜女に関しては殺してしまうという残酷的な差別である。まさに外道としか言いようが無いだろう。
「なるほど。しかし……ふしだらな行為はしてないだろうね?」
「はい……していません」
哲郎は零夜に対して再び闇のオーラを発動させ、太鼓の音まで聞こえてきた。この事に関しては零夜も正直に伝えているが、あまりの恐怖に冷や汗も流していたのだ。
「なら、良いとしよう。しかし、トーナメント進出したからと言って油断は禁物だ。強敵となるチームが出てくるこのトーナメントでは、一筋縄では行かない。油断したと同時に敗退となる恐れもあるだろう」
哲郎は零夜の意見に頷いたと同時に、トーナメントの厳しさを彼等に忠告する。トーナメントでは負けたら終わりの一発勝負となる為、一瞬の気の緩みが負けに繋がる可能性となっている。
この件に関しては零夜達も真剣な表情で頷くしかなく、中には冷や汗を流す者もいたのだ。
「哲郎さんの言う通りです。連携の隙などを見せない様にする為にも、更に強くなるしかありません。一番乗りでトーナメントに進出した以上、無駄な時間を使わずに練習に励むのみです!」
零夜の真剣な意見を哲郎達に伝え、ミミ達も頷きながら同意する。もし、零夜達のトーナメント進出が一番乗りでなかったら、限られた時間での激しい練習が待ち構えていただろう。その点については本戦に一番乗りした事を、心から感謝するべきである。
「それなら心配はいらないな。我々はお前達の活躍を信じている。必ずアークスレイヤーを倒し、全ての世界を守り通せ!」
「「「はい(おう)!」」」
修吾からのエールに対し、零夜達は真剣な表情で応える。選ばれし戦士としての役目を果たすだけでなく、アークスレイヤーの好き勝手にはさせない決意も心の中に込められているのだ。
更に零夜とミミの家族からエールを受けた以上、責任感がますます強まっていくだろう。
「さてと、訓練に向かうか!」
零夜がすぐに訓練場へ向かおうとしたその時、栞が彼の肩をガシッと掴んだ。彼は恐る恐る彼女の方を振り向くと、その表情は笑顔で何か嫌な予感しかしないと悟ってしまう。
「訓練ならいい方法があるけどな……」
「おい、まさか……」
零夜は冷や汗を流しながら、栞の笑みに恐怖を感じ取ってしまう。それにミミ、倫子、ヒカリ、美津代は同情しながらため息をつき、エヴァ達は首を傾げながら疑問に感じていた。
※
「うおっ、危なっ!いきなり剣道だなんておかしいだろ!」
その後、訓練場にあるバトルスペースでは、零夜と栞の剣道による練習試合が行われていた。彼女も又之助と同じく、剣道の免許皆伝の実力を持つ。零夜も剣道では六段だが、まだまだ栞には届かないのが現状だ。
しかも防具を着けずにそのままの衣装で行われている為、当たったら激痛は確定だろう。
「良いじゃないの。更に油断禁物!」
「いだっ!」
栞の横払いが零夜の胴部分に当たり、彼は激痛で叫んでしまう。栞の腕前を見ていたエヴァ達はポカンとしていて、ミミ達は苦笑いをしていた。
「まあ、こうなると思ったけどね……」
「私もこの件に関しては仕方がないと思うけど……」
ミミと倫子は苦笑いしながらも呟いている中、杏は真剣な表情でこの戦いを見ていた。栞の剣道の腕前は見事としか言えず、彼女の動きなどをしっかりと学んでいるのだ。
(まさか零夜の姉ちゃんも、剣道の免許皆伝とは驚いたな。アタシも負けずに頑張らないとな!)
杏は決意を固めたと同時に、再び零夜と栞の剣道の試合に視線を移した。自身が強くなる為だけでなく、仲間達と共にレベルアップする事を心の中で秘めながら。
「そこ!」
「いでーっ!」
その直後に栞の一撃が零夜の脳天に当たり、彼の叫びが響き渡る。それにミミ達が苦笑いしたのは言うまでも無かったが、零夜の苦労が止まるのは何時になるのやら。
零夜の苦労は止まらない……
次回から新章に入ります!
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