第208話 十二年越しの因縁再来
因縁の敵、集結です!
零夜達は殿町達と対峙していて、緊迫した空気が漂っていた。まさに一触即発は当然の如くであり、バチバチの展開となっていた。
「この場で会うとは想定外だが、十二年ぶりだな……」
「ああ。ところでなんでお前は女性と抱き合っているんだ?」
殿町からの指摘に零夜は自身の状況をよく見ると、なんと彼はエヴァをムギュッと抱き締めていたのだ。危機的状況に彼女を守ろうとしていたが、人から見ればカップルに見えるとしか言いようがないだろう。
「危機感を感じていたからな。じゃあ、離れるから……」
零夜がエヴァから離れようとするが、彼女は彼の身体にしがみついて離れない。まだ甘えたい一面があるみたいだが、今は戦闘中なのでそれどころではないだろう。
「エヴァ……恥ずかしいから止めてくれないかな?敵から見れば馬鹿にされているし……」
「じゃあ、ムギュッとしてからね」
エヴァは零夜をムギュッと抱き締めた後、彼から離れて戦闘態勢に入ろうとする。敵が目の前にいる以上、戦う覚悟を示さないといけないのだ。
「さて、十分堪能した事で……アンタ達は零夜に対して恨みがあると聞いているわ。元はと言えば、あなた達が零夜を倒そうとしていたのが悪いんじゃないの?」
「「「う……」」」
エヴァからの真剣な指摘を受けた殿町達は、言い返す事ができなくなってしまう。確かにグループ抗争をした挙げ句、神室を倒した零夜を倒そうとして返り討ちに。これまでの事を考えれば悪い事をしていたので、自業自得と言えるだろう。
それに殿町達は黙り込んでしまうが、ラスプーチンが前に出て真剣な表情で視線を移す。
「確かにこの件については彼等に非があるでしょうな」
「おい!お前はどっちの味方だ!」
ラスプーチンの真剣な話に、殿町達は思わずツッコミを入れる。自分達の味方なのにここまで言われるとは、逆にキツ過ぎるのも無理ないだろう。自業自得がここまで浸透しているのも予想外だと言えるが。
「しかし彼等は君達に倒されてしまい、悲惨な運命を辿りました。それに関しては君達にも責任があるのではないでしょうか?」
「「「……!」」」
ラスプーチンからの指摘を受けた零夜達は、戸惑いを隠せずに俯いてしまった。
確かに零夜はいじめっ子達を次々と倒しまくり、抗争を終わらせた。それによって彼等は様々な罪により、この学校から転校する事を余儀なくされていた。その結果、彼等の大半は不幸のどん底に陥ってしまい、死亡者まで出てしまったのだ。
これに関しては零夜達の責任もあるかも知れないが、それを聞いたエヴァは真剣な表情でラスプーチンを睨みつけていた。
「零夜達に責任はないわ!全ては彼等の自業自得よ!」
「エヴァ……!」
エヴァの真剣な表情に、零夜達は彼女に視線を移していく。彼女の強気な発言で場の空気が変わってしまい、逆にラスプーチンは驚きを隠せずにいたのだ。
「元はと言えば彼等とその親にも原因があり、この様な事件が起きたわ!それを認めないのなら……私達があなた達を倒すわ!」
エヴァの正々堂々の宣言に、ラスプーチンは何も言えなくなってしまう。更に殿町達も悔しさを隠せず、ギリギリと歯を食いしばっていた。まさかド正論を叩き付けられてしまうとは想定外で、ただ悔しがるしかなかったのだ。
それに哲郎達は感心な表情をするが、彼にとっては複雑な表情をしていた。エヴァが零夜の事を好きになっているので、もし彼女の事を好きになったら許婚の件は無しになってしまうのだ。
「エヴァという女性は頼りになる存在だが……零夜君、ミミという許婚がいる事を忘れない様に……もし、そうでなかったら……分かってるよね!」
「がはっ!」
「「「げぼら!」」」
零夜は哲郎に勢いよく蹴り飛ばされ、そのまま殿町達に激突する。その勢いはとても強く、彼等は耐え切れずに次々と背中を強打して倒れてしまった。
哲郎としては零夜が他の女と結婚してしまう事を防ぐ為、忠告と牽制の意味で蹴り飛ばしたのだ。こうでもしなければ、何をするか分からないからだ。
「いつつ……そこまでしなくても……」
「俺達まで巻き込むなよ……まあ、気持ちは分からないでもないが」
零夜はすぐに起き上がって背中を押さえる中、殿町達も自力で起き上がり始める。選ばれし戦士とアークスレイヤーの戦士は、この程度で倒れる事はあり得ないのだ。いきなりの展開は予想外と言えるが。
「まあ、それは良いとして……まさかアンタ達がアークスレイヤーによって闇堕ちしたみたいだけど、どういうつもりなのかしら?」
ミミからの真剣な質問に対し、殿町も真剣な表情をしながら説明を始める。彼女は零夜と共に行動しているだけでなく、学校を取り戻す為にいじめっ子を次々と倒しまくってたのだ。当然殿町が彼女の事を知らない筈は無いだろう。
「そうだ。俺達は突然の異世界転生や転移という経験をした後、神室さんと出会って強くなった!そこでは辛くて厳しい訓練だったが、それを乗り越えて強くなったからな!」
「それで今があるという事ね。納得がいくわ」
殿町の説明にミミが納得した直後、羽田、坂巻、沼田、花山、乗川兄弟の六人も前に出る。彼等は真剣な表情をしながら戦闘態勢に入っていて、背中には闘志のオーラが漂い始める。
彼等もまた零夜にやられた事を恨んでいて、ここでやられっぱなしではいられないのだ。
「俺達も東にやられてから不幸な目に遭っていたからな。この戦いで因縁を終わらせるのみだ!」
「その通り!ここはバトルオブスレイヤーで決着を着けるぞ!」
坂巻はバングルを起動させ、バトルオブスレイヤーのステージを選択し始める。彼が選んだのは瑠璃光寺の五重塔がある場所で、当時の時代を再現したステージだ。
「坂巻、ステージは本当にこれで良いのか?」
「ああ。この方が俺のやる気も高まるし、故郷で戦った方が俺達らしくていいだろ?」
沼田は気になる表情で坂巻に質問するが、彼はウインクしながら質問に答えていた。自身や沼田達が最後の戦いになるかも知れないので、どうせなら生まれ故郷で戦った方がいい思い出になるだろうと考えているのだ。
「そうだな……その意見に賛同する!」
「まあ、俺としてはどうでもいいけどな」
「俺も構わないぜ!」
「兄ちゃんと同じ意見だ。殿町もそれで良いか?」
次郎が殿町に対してステージに関しての質問をすると、彼は問題なくコクリと頷いていた。
「構わない。戦える場所なら何処でも良いからな」
「そう来ないとな!」
殿町からの解答に坂巻はグッドサインで応え、そのままステージを選択する。するとステージへと繋がる箱が姿を現し、零夜達は箱の周りに集まり始めた。
「零夜、この戦いはあなた達の日々の成果が試される時。けど、私達はあなた達が勝つ事を信じているわ。頑張って!」
文香が代表して零夜達にエールを送り、修吾達も笑みを浮かべながら見守っている。今までどんな困難でも乗り越えられた彼等だからこそ、絶対に負ける事はないと信じているのだ。
一方で零夜達は家族からエールを受けただけでなく、トーナメントに進出できる課題にも絡んでいる。ここまで来た以上は歩みを止めず、更に突き進む覚悟で挑んでいくだろう。
「任せてくれ!必ず勝利を掴み取るのみだ!行くぞ!」
「「「おう!」」」
零夜達は箱に手を直接触れた途端、全員の足元に魔法陣が展開。同時に彼等は箱の中のステージへと転移し、運命を決める戦いが始まりを告げられたのだった。
因縁の戦いが次回からスタート!果たしてどうなるのか!?
感想、評価、ブックマークを貰えると励みになります!宜しくお願いします!




