第203話 りんご園の巨大りんご
今回はりんご園の話です。
零夜達は空を飛びながら次の目的地に移動し、修吾達は車で移動していた。次の目的地の内容は阿東徳佐で、とあるりんご園へと向かっていたのだ。
「なんでりんご園に向かうのかしら?阿東徳佐と萩に関しては終わった筈なのに……」
ヒカリがりんご園に行く事に疑問に思い、他の皆も同様に頷く。萩と阿東徳佐に関しては刺客は倒し終えていて、松下村塾の観光でスタンプを手に入れた。後は山口だけなのに、何故行くのか気になるのも無理はない。
「実はりんご園で巨大りんごがあって、それがかなりデカいのですよ。そこの園長さんが困っているので、お父さん達に依頼していましたからね」
ミミは事の内容をヒカリ達に説明していて、彼女達は納得の表情をする。
普通りんごの大きさはだいたい掌に乗るぐらいのサイズだが、今回の大きさはだいたい二メートルぐらいの高さである。それによって園長が困るのも当然だが、どうやってその大きさになるのか疑問に感じるのだろう。
「まあ、これは困っているとなると、放っておける理由にはいかないからね」
「それにりんごが好きに食べられるのなら別に良いけどね」
「早く依頼を解決させましょう!」
ヒカリ達は困っている人は放っておけず、りんご園を助ける事を決断。それに大きいりんごは勿論、好きなだけりんごが食べれるのなら、一石二鳥と言えるだろう。
「俺もりんごは大好物だからな。早くりんご園に行こうぜ!」
零夜の合図に全員が笑顔で頷き、そのまま目的地となるりんご園へとスピードを上げ始めた。しかし、この時の彼等は気付いてなかった。大きいりんごは一つだけではない事を……
※
「……って、何よこれ!」
りんご園に着いた零夜達を待ち受けていたのは、普通の木のりんごだけでなく、二メートル程の大きなりんごがなっている木もあったのだ。しかもその大きさはとても重く、エヴァぐらいでないと持ち上げる事は不可能である。
おまけに木も大きい為、どうやって成長したのか気になるのも無理はない。ミミが叫んでしまうのも当然である。
「かなり大きいわね」
「どうやったら大きくなるのよ……」
ユナは興味深そうに見ていて、アミは真顔で大きな木をじっと見ていた。りんごも大きければ木も大きくなるのも当然の事である。
するとりんご園の園長である吹田豊作が姿を現し、この原因について説明を始めた。
「私としても驚きましたが、まさかここまで成長するとは思いませんでした」
「けど、一体何の肥料を使ったのですか?」
「こちらです」
零夜は気になる表情で質問する中、吹田はとある肥料を取り出す。それは「何でも成長!ジャイアント」という特殊肥料であり、何でも巨大化できる特殊肥料なのだ。
「「「ららーっ!」」」
文香、恵、ユナ以外は当然ずっこけてしまい、彼女達はあらあらとした表情をしていた。まさかこの肥料によって、巨大化したりんごが出てくるのは知らなかっただろう。
「こんな肥料を使うからですよ!」
「いやー……巨大作物に挑戦しようとしたら失敗でしたわ。お陰で巨大りんごが落ちる毎に地震が出るわ、収穫も難しく、お客もさっぱりで……」
吹田は退屈座りで落ち込んでしまい、どうすれば良いのか困ってしまう。このままにしては放っておけず、野放しにしたらまた被害が大きくなるだろう。
「こうなると木ごと移動した方が良いかも知れないわね……エヴァ、やれる?」
「任せて!こういうのは得意だから!」
コーネリアが真剣な表情で推測し、エヴァに声を掛ける。彼女はグッドサインで答えたと同時に、大きなりんごがなる木の方へと向かい出した。
エヴァはそのまま両手でリンゴの木を引き抜こうとしているが、いくら何でも無謀過ぎる。大きなりんごの木の幹も太い為、引き抜く事は難しいと言えるだろう。
「大丈夫なのか?」
「心配するなよ。エヴァはこう見えても怪力なんだし、何か策があるはずだ」
心配する修吾に零夜がフォローしたその直後、エヴァはりんごの木に手を当てて魔力を発動させる。するとりんごの木がゴゴゴと揺れ始めたと同時に、地面に罅が入り始めた。
「ん?地面が揺れている?」
「エヴァ……もしかして……」
マリーが地面の揺れを感じ取った直後、コーネリアはその揺れをすぐに察した。そのままエヴァに声を掛けようとした途端、大きなりんごの木が地面から引っこ抜かれたのだ。
りんごの木は宙に浮いたままふわふわ浮かんでいて、光のオーラが纏わっている。そのオーラはエヴァによる魔力によって、発動されているのだ。
「マリー、りんごの木の転移をお願い!」
「ええ、分かったわ!」
エヴァの合図でマリーは指を鳴らしたと同時に、大きなりんごの木を別の場所に転移させる。残ったのは大きな穴となったが、自動的に埋められて草むらになった。
「これでもう大丈夫!りんごの木はヒーローアイランドに転移させたから!」
「ありがとうございます!助かりました!」
エヴァの笑顔に吹田はペコペコ礼をしながら、感謝の言葉を述べていた。これでお客さんが安全に来るだけでなく、普通のりんご園の営業もできるので大助かりだ。
「エヴァ、今の魔術は何?力を使わずに何かしたけど……」
するとアミが今の魔術が気になり、エヴァに質問してきた。あんなに大きなりんごの木が簡単に抜けてしまう事はあり得ず、何か凄い魔術を使っていたのではないかと気になっているのだ。
エヴァは笑顔を見せつつ、今の魔術を説明する。
「この木に超能力で細工したからね。重力をゼロにしたと同時に、簡単に引き抜く様にしたから」
「なるほど……怪力とは聞いたけど、超能力まで使える様になるとは……見事としか言いようが無いわね」
エヴァの説明にアミは納得の表情をするが、コーネリア、ユナ、文香、恵以外の面々はポカンとするしかなかったのだ。
エヴァは怪力自慢のワーウルフだという事は知っているが、まさか超能力を使えるとは予想外と言えるだろう。
「エヴァ、数日前から超能力の修行をしたからね。格闘だけでなく、様々な能力を付けようと努力したの。その結果、クラスもサイキックファイターにクラスアップしたわ!」
「だから超能力が使えるのね。見事としか言えないわ」
コーネリアの説明にミミ達も納得の表情をしていて、エヴァは笑顔で応えていた。
エヴァは努力家の一面もある為、自身が強くなる為には何でもチャレンジする事が多い。料理などの家事ができる様になったのは、その精神があるからなのだ。
「まあ、取り敢えずは依頼も無事に終わったし、これでようやくりんごが食べられるな……」
零夜はすぐにりんごを取りに行こうとしたその時、吹田が大量のりんごを持ってきた。依頼を引き受けてくれたお礼として、こんなにも用意していたのだ。
「皆さんでどうぞお食べください。お代はタダで」
「どうもすみません。よし、家に帰ってから夕食後に食べよう!さあ、運ぶぞ!」
「やっぱりかー!」
修吾の宣言でりんごはお預けとなってしまい、零夜は前のめりに倒れながらずっこけてしまう。この様子にミミ達はため息をつくしかなく、同情するのも無理なかった……
りんごはお預け。駄目だこりゃ!
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