第168話 マギアスの真実
今回はマギアス討伐へのプロローグです!
「全員揃ったな。では、マギアスについて説明しよう」
ブティックでの騒動から二十分後、零夜達は玉座でボリスからマギアスについて話を聞く事になった。そこには彼等やアメリア、レジーだけでなく、兵士達、シナモン、ジャミラ、シオン、ゲルダもいる。シナモン達もマギアスについて交戦した身であるので、彼女達も玉座に呼ばれていたのだ。
「ヴァルムント王国が栄える前、かつて存在していた魔獣こそマギアスだ。奴によって多くの国が滅ぼされ、残ったのは我々ヴァルムントを含めた数カ国だ」
ボリスからの真剣な説明に零夜達は冷や汗を流し、ピリピリとした緊迫の空気が流れていく。
遠い昔、マギアスは多くの国を滅ぼした実力があり、魔獣としては手強い最凶クラス。それによって、ベルセルクやアルバータドラゴンと同レベルであるのだ。
「更に奴は戦車を元にした魔獣であり、四足歩行で歩く危険な奴だ」
「なるほど。どんなのだろう……」
ボリスの話を聞いたルリカは、マギアスの姿がどんなのかますます気になり、他の皆も同様に考え始める。その様子を見ていたトラマツは、すぐにバングルを起動させてウインドウを召喚する。事前に調べていた以上、できる限りの情報は伝えないといけないからだ。
「そうなると思って、情報収集しておいた。これがマギアスだ」
トラマツはウインドウの画面を変えた途端、マギアスの姿に零夜達は驚きを隠せずにいた。
マギアスはケンタウロスの体型となる機械の身体をしていて、剛力の機械の腕が四本生えていた。四本の足は戦車のキャタピラとなっていて、タンクモードにも変形できる。
「全身が機械か……厄介な相手だな……」
零夜は真剣な表情をしているが、冷や汗を少し流している。それ程迫力あって緊張しているのだろう。
「それだけじゃない。馬の部分の背中には大きな砲台が設置され、ミサイルポッドも兼ね揃えている。しかも腕にはレーザーガンまである為、バーサークよりは危険と言えるだろう」
「マジかよ!こんな奴がいるとは……!」
「とんでもない化物もいるんだね……」
トラマツの説明に杏とマーリンはマ冷や汗を流していて、倫子達もマギアスの姿に怯えていた。
マギアスの様なこんな化物はゲームの中にしかいないのに、現実に出ているなんておかしいと感じている。しかし、ファンタジー世界は何でもありなので、こんな化け物が出るのも無理ないのだ。
「更に胴体の鬼の形相の仮面があるが、その部分は胴体を守る前面装甲となっている。同時に放熱機関の役目を持っている為、我々はそれを知って集中攻撃を開始した。その結果……無事に倒す事に成功したのだ」
ボリスからの説明に誰もが納得し、どうやって倒したのかも判明された。今回の件も弱点さえ分かれば倒せるかと思ったが、ボリスはまだ真剣な表情をしていた。
「ところが、今回はそうはいかない。シオン」
「はっ!」
ボリスの合図でシオンが前に出たと同時に、真剣な表情をしながら零夜達に説明する。マギアスと戦った経験者として、伝えるべき事は伝えようとしているのだ。
「我々が戦ったマギアスに関してだが、奴は前面装甲を強化しているだけでなく、砲台も二台、ミサイルポッドも二倍に増えている。更に小型サテライトレーザーまで装備されていて、完全に強化されていた。我々としてはある程度ダメージを与えたが、負けてしまった……」
シオンは俯きながらマギアスの恐ろしさを説明し、零夜達は絶句しながら冷や汗を流してしまう。以前にもベルセルクが強化した様に、マギアスも強化している事が判明。どうやら一筋縄では勝たせてはくれないだろう。
「わしは強化したという事に関してだが、恐らく黒幕がいるという事だ。シオンからの話を元に調べてみた結果、意外な事実が判明された」
「黒幕?」
零夜達は気になる表情をしながら、ボリスに視線を移す。そのまま彼は真剣な表情をしながら、黒幕の名前を伝え始める。
「アークスレイヤートップエイト所属の一人、ベクトルだ」
「「「!?」」」
ボリスからの衝撃的な事実に、ミミ達は驚きを隠せなかった。マギアス復活の黒幕がアークスレイヤーとは分かっていても、その復活した張本人がベクトルだという事実は衝撃的だ。
ベクトルは後楽園の戦いで零夜によってやられてしまい、戦線離脱という結果になってしまった。その屈辱は未だに忘れてはなく、リハビリを通して戦線復帰。更には任務の為にマギアスを強化復活していたのだ。
(まさか奴が仕組んでいたとは……こうなった以上はやるしかない……!)
零夜は真剣な表情をしながら、ウインドウに映っているマギアスに視線を移す。奴の顔は怖い骸骨となっていて、見ただけでも危険な雰囲気を漂わせているのだ。しかし、零夜はここで諦める男ではない。どんな困難があろうとも、最後まで諦めない執念を持つ不屈の魂を持っているのだ。
「ボリス陛下。確かにベクトルによってマギアスは復活され、手強くなっているのは確実です。更に紅蓮丸もいるとなると戦いは厳しくなりますが、俺はここで諦める理由にはいきません!アメリア姫を王にさせる為にも、奴等を必ず倒してみせます!」
「零夜!?」
「「「!?」」」
零夜は真剣な表情でボリスに対して宣言し、それにミミだけでなく、全員が驚きを隠せずにいた。いくらなんでも最凶の強敵二人に立ち向かうのは、あまりにも自殺行為と言えるだろう。
しかし、この二つの戦いは零夜達にとっても最大の試練。アメリアを王にし、課題をクリアする為にも避ける理由にはいかないのだ。
「勝算はあるのかね?」
「ええ。奴の弱点についてはアミリスが察する事が出来ます。アミリス、頼む!」
「分かったわ。零夜は最後まで諦めない心の持ち主だからね……そうなると私達も負けられないんだから!」
ボリスからの質問に零夜は冷静に応え、アミリスに千里眼で敵の弱点を察して欲しいと頼み込む。それを聞いたアミリスは苦笑いしつつも、自らやる気を上げながら零夜の頼みを受け入れる。
アミリスは自らウインドウを召喚させ、現在のマギアスの状態を画面に映す。そのまま千里眼を発動させて弱点を確認し始めると、弱点が彼女の脳内に流れ込んできたのだ。
「分かったわ!マギアスの弱点は砲台とミサイルポッド!それを破壊すれば機動力が弱くなるだけでなく、力も落ちていくわ!」
アミリスの正確な説明に、その場にいる全員が驚きを隠せずにいた。シルバーファング、ロイヤルグリズリーズ、アメリア率いる討伐隊はマギアスの弱点は前面装甲だと思っていた為、惨敗を喫してしまっていた。しかし、砲台が弱点だと明らかになった以上、マギアスを倒せる事は可能であり、一致団結すれば倒せる事だって出来る筈だ。
「弱点も判明した以上、何も怖くない。二日後に出発する予定となりますので、その期間内にできる限り強くなります!マギアスと紅蓮丸を倒し、ヴァルムントの平和を守る為にも!」
アメリアの真剣な決意に零夜達も頷き、彼女達は二日後に討伐しに向かう事を決断。その意志はとても固く、誰が何度言おうとも立ち向かう覚悟だ。
「よし!我々もできる限り援助しよう!頼んだぞ、アメリア!」
「はい!」
ボリスからマギアスと紅蓮丸の討伐を託されたアメリアは、真剣な表情で力強く応えた。それと同時に彼女の王位継承の試練、零夜達のマギアス討伐の課題も、本格的に幕を開けたのだった。
マギアスと紅蓮丸討伐に向け、本格的になりました!果たしてどうなるのか?
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