第143話 零夜と神室
今回は零夜と神室が再会!果たしてどうなるのか!?
神室が零夜に対して傷の宣言をした直後、周囲が突如ざわつき始める。二人の関係がこの様な展開になるとは思えず、気になった風子が零夜に近付き始める。
「零夜、何かあったのか教えてくれないか?」
「ええ。あれは小学生の頃でした……当時の俺は苛められっ子だった……」
零夜はそのまま当時の頃を、この場にいる全員に語り始める。神室との因縁の始まり、そして現在に至るまでの事を。
※
当時、小学五年生の零夜は、学校に来る度に毎日の様に机に落書きをされていた。彼は呆れながら落書きを消した途端、神室と取り巻き二人が駆け寄ってきた。
「東。今日もまた落書きを消していたな。何もできないお前が俺達に抵抗しても無駄なんだよ」
神室が嘲笑うかの様にからかうが、零夜はジト目で彼を睨みつけている。
「その割にはいつもテストで0点取っているじゃないか」
「口答えするな!」
「がはっ!」
零夜は神室達に口答えや反論した途端に殴られてしまい、酷い時には急所への蹴りなどの暴行もあった。けど、零夜は何度でも立ち上がり、虐めに耐え続けていた。
※
そんな日々が続いたある日、ミミが零夜にある提案をしてくれた。
「格闘技?」
ミミからのアドバイスに零夜はキョトンとするが、彼女はアドバイスを続ける。
「うん。それを習えば神室達にも勝てるし、あいつ等は集団で行動しているからそれほど強くないわ」
「だったら受けるよ。もう虐められるのは終わらせたいしな」
ミミからの提案に零夜は勿論受ける事を選び、全ての格闘技を学ぶ極道場へと入門した。
そこは地獄と呼ばれる道場であり、百人組手、バンジージャンプなどの厳しい訓練を諦めずに乗り越え、見事強くなる事に成功したのだ。
※
それから数日後、放課後の学校で零夜は神室達と相対する。零夜は格闘技の構えをしているが、神室達は嘲笑いながら彼を見ていた。
「ほう。俺達を倒す為に戦いを学んだか。だが、勝てるのか?」
「やってみなければ分からないぜ」
「お前等、やれ!」
取り巻きの二人が零夜に襲い掛かるが、素早く回避したと同時に一人の頬を殴り飛ばす。あまりのパンチの威力で取り巻きの一人は吹っ飛んでしまい、地面に激突して倒れてしまった。
更に左ストレートでもう一人も吹っ飛ばし、ノックアウト。残るは神室となり、彼は冷や汗を流してしまう。
「こ、こいつ!」
神室が零夜に襲い掛かった途端、逆に手刀を喰らって顔面を切り裂かれた。それと同時に血を吹き出してしまい、今の様な傷ができたのだ。
手刀は空手の基本だが、普通は打撃で気絶や失神などの効果を与える。しかし、零夜の手刀は殺人手刀と言われていて、今の様な傷は勿論、下手したら死んでしまう恐れもある技なのだ。
「ぐああああ!」
「終わりだ!」
零夜は強烈な左アッパーを駆使し、神室の顎を打ち捉えて殴り飛ばす。最後は右フックで神室の頬を捉え、拳で地面に叩きつけた。
同時に神室は戦闘不能になり、戦いに終止符が打たれた。
「これに凝りて虐めは止めなよ」
零夜は神室達にそう言い放ち、その場から立ち去る。残された神室達が起きたのはそれから数分後の事であり、翌日には何も言わずに転校した事が判明されたのだった。
※
「そして神室は高校生の頃に事故で死んでしまったが……まさかここで転生していたとはな!」
零夜が話を終えたと同時に、神室を鋭い眼差しで睨みつける。あの時の因縁が再び蘇る展開となり、両者は火花を散らしながら睨み合っていた。
「あの二人は俺と共に転生したが、途中で山賊に殺されてしまった。ピンチになったその時にザルバッグ様と出会い、山賊達を殺して助けてくれた」
「彼がいるからこそ、今のアンタがいる訳ね……」
「グルル……!」
神室の説明にミミは納得しつつ、零夜と同じく鋭い眼差しを向ける。神室が何をしてくるか分からないので、警戒してしまうのも無理ない。
更にルリカもガルルと威嚇しながら神室を睨み付ける。大切な人を殺した恨みはとても強く、倒さないと気が済まないからだ。
「今すぐでも東と戦いたいが、ザルバッグ様の命令で戦う事はできない。トーナメントの結果がどうなるかだが、それが終わり次第に決着を着けようぜ。じゃあな!」
神室は零夜に伝言をした後、その場から転移して姿を消した。今回は顔合わせで済んだが、何れにしても戦う事は避けられないだろう。
その様子を見たエムールは零夜に近付き、彼に声をかけ始める。
「大丈夫かのう?」
「はい。なんとか……」
エムールからの心配の声に、零夜は笑顔で応える。その様子にエムールは頷いたと同時に零夜達に視線を移す。
「もしかするとお主達ならこの世界……いや、全ての世界を救う事ができるじゃろう。特に零夜という青年はまだ見ぬ力を持っておる」
「「「えっ!?零夜(君、様)が!?」」」
エムールの推測にトラマツ達は驚きを隠せず、全員が零夜に注目する。当の本人も驚いてしまい、キョロキョロ辺りを見回しながら動揺していた。いきなりまだ見ぬ素質があると言われても、動揺してしまうのも無理はない。
「うむ。零夜は忍者としては少しずつ成長しているが、その才能を開花するには様々な経験が必須となる。もしかすると……今いる多くの勇者達を超える大物になるかも知れんぞ」
エムールの説明に全員が再びざわつき、零夜に至っては心臓に手を当てながら真剣に考える。自身にまだ見ぬ力があるのなら、それに辿り着く必要があると感じていたのであろう。
零夜はそのまま決意したと同時にエミールに視線を移す。
「どんな経験でも乗り越えるのは勿論、必ず強くなってアークスレイヤーを終わらせてみせます!」
「うむ。期待しているぞ!」
「はい!」
零夜の決意の宣言に、エムールは頷きながら彼にエールを送る。そのまま零夜達は一斉に集まったと同時に、元の世界へ帰ろうとしているのだ。
(東零夜……もしかすると俺達は、物凄い奴を手に入れたかもな)
(あいつこそがアークスレイヤーを倒す真の勇者なら、ミミ達と共に徹底的に強くさせないとな!)
トラマツとノースマンは心から思いながら強い決意を固めた途端、彼等の足元に魔法陣が展開。そしてそのまま転移魔術が発動される。
「アミリス!我等エルフの代表として、アークスレイヤーを滅ぼしてくれ!」
「分かったわ!必ず約束は果たすから!」
エムールからのエールにアミリスは笑顔で応えた直後、彼女達は転移してその場から姿を消した。
(アミリス、ブレイブペガサスの戦士達よ、アークスレイヤーの野望を終わらせる事を信じておるぞ!)
エムールは心の中で零夜達にエールを送った途端、穏やかな風がエルフの森に吹き始めたのだった。
顔合わせだけで済ましたが、戦いは避けられないですね。
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