第131話 辛い過去を乗り越えて
今回はソニアと杏の過去がメインです!
それは今から七年前。ソニアは当時中学三年ぐらいの年齢で、普通の学生として活動していた。髪もロングヘアとなっていて、口調も普通だった。因みに杏も同じ学校に通っているので、この頃から友人関係を築いているのだ。
その日は学園の卒業式であり、ソニアは首席として卒業証書を受け取ろうとしていた。
「卒業証書、ソニア」
「はい」
ソニアが立ち上がって校長先生の前に移動し始めたその時、先生の一人が危機感を感じ取って彼の元に駆け寄ってきた。その様子に皆が疑問に感じる中、先生はすぐに校長先生に報告し始める。
「む?どうかしたのかね?」
「校長先生、大変です!近くにあるオーガ族の村、竜人族の村が滅ぼされました!その原因は最凶最悪のドラゴン「アルバータドラゴン」です!」
「なんじゃと!?アルバータドラゴンが動いておったのか!?」
「「「!?」」」
先生からの報告に校長先生だけでなく、誰もが驚きを隠せずにいた。特にオーガ族の村出身の杏、竜人族の村出身のソニアにとっては固まってしまい、そのまま呆然と立ち尽くしていたのだ。
「そんな……父さんと母さん、兄弟達まで巻き込まれていたんじゃ……」
「卒業式には来ていないし、村にいるという事は……まさか……」
「急がないと!嫌な予感しかしないわ!」
「ええ!私も急がないと!」
ソニアと杏は嫌な予感がすると顔面蒼白になっていて、我慢できずに卒業式会場から飛び出してしまう。その様子に誰もが驚きを隠せない中、校長先生は報告をした先生に視線を移す。
「グライア。二人を頼むぞ。これは予測だが、彼女達の家族は既に殺されている可能性が高い。何としてでも、彼女達を非行に走らせない様にしてくれ」
「はっ、お任せ下さい!必ずや任務を果たしてみせましょう!」
グライアと呼ばれた人間の男性は敬礼をしたと同時に、故郷へと向かったソニアと杏の後を追いかけ始めた。故郷を滅ぼされた二人が非行に走ってしまう可能性がある為、それだけは阻止しなければならないと決意したのだった。
※
「父さん!母さん!ムーラ!メルガ!ユンミン!アビラン!ヨンスン!何処にいるの!?返事をして!」
ソニアは故郷である滅ぼされた村に辿り着き、走りながら両親と兄弟達を探していた。村は家が多く燃えていて、中には破壊されている物まであるのだ。
ソニアは大家族でありながら、一番上のお姉さん。よく弟や妹達の面倒を見ていたのだ。しかし、中等部の学園に入ったからには寮生活をしなければいけなくなり、家族とは離れなければならなかった。
「あった!私の家だ!」
ソニアはようやく自身の家の前に辿り着くと、そこは既に崩壊していて、瓦礫の山となっていたのだ。
「家がこんなになるなんて……いや、もしかすると家族もこの中にいるかも……」
ソニアは自らの力で瓦礫をひょいひょいと投げ飛ばしながら、この中にいる家族を探し始めた。しかし、家族の姿は何処にもなく、ソニアは再び探し始めた。
「家にはいない……確か避難所があった筈……あっ!」
ソニアが目の前の光景に驚きを隠せず、思わず呆然としてしまう。なんと多くの焼け焦げた死体や、瓦礫によって埋められた死体、更にはバラバラになっている死体まで転がっていた。
その中にはソニアの家族も含まれていて、彼女はショックのあまりヘナヘナと座り込んでしまう。まさに地獄絵図と言ってもいいだろう。
「そんな……皆が……こんな姿になるなんて……父さんや母さん……弟や妹達まで……」
ソニアの目に涙が浮かび上がったその時、杏がフラフラと歩きながら姿を現す。その様子だと彼女も故郷を滅ぼされ、家族まで失っていたに違いない。
「杏……その様子だと、あなたもなの……?」
ソニアは目に涙を浮かべながら杏に質問すると、彼女はポロポロと涙を流しながら座り込んでしまった。村の皆を失ってしまった事はとても大きく、我慢できなくなるのは同情せざるを得ない。
「うん……私のところも……皆いなくなった……どうして……卒業式なのに……こんな事に……うわああああ!!」
「うう……私だって辛いよ……アルバータドラゴンによって……全てを奪われるなんて……うああああ!!」
杏は大声で泣き叫んでしまい、釣られてソニアも大泣きしてしまった。家族や村の皆は皆死んでしまい、彼女達はアルバータドラゴンによって全てを失ってしまったのだ。その悲しみはとても大きく、泣き止むまでには時間が掛かりそうだ。
「遅かったか……私が早く気付いていればこんな事にはならなかった……くっ……!」
グライアは泣き叫ぶ二人を見ながら、悔しそうな表情をしていた。自身がもう少し予感を察知したら、村が全滅してしまう事は防いでいただろう。しかし、後悔先には役立たずであり、現実は非情なのだ。
「だが、今からでも遅くはない。二人の為に私がどうにかせねば……これ以上、彼女達を悲しませたりはさせない為にも……!」
グライアは自ら決心をしたと同時に、泣いている二人の元に移動し始める。彼女達を立ち直らせる為だけでなく、今後のサポートを念入りにする事を伝えに向かったのだった。
※
その後、中等部を卒業したソニアと杏は、グライアのアドバイスで義賊集団「エルバラード」に入る事に。そこで盗賊としてのスキルは勿論、貧しい人達に分け与える優しさなどを学び通す事が出来た。
数ヶ月前にアークスレイヤーによってエルバラードは滅んでしまったが、彼等から教えられていた経験によって、今のソニアと杏がいるのであった。
※
そして現在、杏とソニアは前を向きながらアルバータドラゴンに立ち向かい、次々と攻撃を当てていた。カタールと妖刀の斬撃が次々と炸裂し、敵にダメージを当てていく。このまま行けば倒れるのも時間の問題だ。
「おのれ!このわしを倒そうなど調子に乗るな!まとめて全員殺してくれる!」
「!攻撃が来るぞ!」
アルバータドラゴンはジャンプしたと同時に、着地して衝撃波を発動させる。零夜達はジャンプして回避したが、アークスレイヤーの兵士達は直撃して次々と倒れてしまう。そのまま彼等は金貨となってしまい、ライカが全て回収した。
「やれやれ……金貨は回収したが、奴はまだまだ本気じゃないって事だな。こいつはドラゴンにならないと無理かもな……」
ライカが冷や汗を流しながら呟いたその時、ソニアが彼女の呟きにある閃きを思い付いた。ドラゴンにはドラゴンで対抗するしかないと聞いた以上、竜族の血が騒ぎ出さずにいられなくなったのだ。
「こうなったら奥の手を使うしかないな。ドラゴンにはドラゴンで対抗するのなら……アタイはその姿になるしかないな!」
「そうするしかない以上、アルバータドラゴンを倒さないとな!やってやれ、ソニア!」
「おうよ!」
ソニアは自らドラゴンになる事を宣言し、杏はグッドサインを出しながらソニアにエールを送る。
ソニアはカタールを鞘に収めた直後、自身の周りに緑色のオーラを纏わせ始める。すると彼女の身体は姿を変え始め、あっという間に人間からドラゴンの姿になってしまった。
ドラゴンの姿となったソニアは身体は緑となっていて、普通のドラゴンと同じ大きさである。背中には翼も生えているだけでなく、赤い角も生えているのだ。
「これがアタイのもう一つの姿だ。アタイは過去を乗り越え、アンタを倒す!此処から先は……マジで行くぜ!」
ソニアが力強く宣言をしたと同時に、アルバータドラゴンとの戦いはラストラウンドに突入したのだった。
アルバータドラゴンとの戦いはラストラウンドに入ります!
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