第126話 予想外の緊急事態
最後の方で予想外の展開が起こります!
「そうか……その様な事があったとは……」
その日の夜、エルフの森の中にある展望台では、風子が零夜の話を聞いて納得の表情をしていた。彼自身の不安な事は前から察していたが、仲間達のお陰で吹っ切れた事に安堵していたのだ。
「ええ。そのお陰で前に進む事ができましたし、何よりも使命を果たすべきだと実感しました」
「その様子なら問題なさそうだな」
零夜の笑みに風子も笑顔で返し、彼女は用意されたワインを一口飲む。すると彼女は真剣な表情で今後の事を考え始める。それは、アルバータドラゴンとベルセルクをどう対処するかだ。
「私達は強大な敵と戦わなければならないが、どの様に対処するかがカギとなる。そこで……私はこう考えている」
風子は胸元から三枚の写真を取り出し、それを机に置き始める。それはアルバータドラゴン、ベルセルクだけでなく、エルフの森の写真まであるのだ。
「私としては三手に分かれて行動した方が良いと思う。だが、ライカが既にスパイ活動を行っていて、新たな事実が判明された」
「新たな事実ですか?」
零夜が新たな事実に疑問を感じたその時、ライカが姿を現して彼の隣に座ってきた。そのままカクテルであるファジーネーブルを注文し、そのまま受け取って一口飲んだ。
「そうだ。私はエルフの森に着いた後、零夜達とは別に行動していた。アルフェリアの基地に赴き、ヒューラー達の会話を聞いたからな」
「そうか……で、奴等は何の会話を……?」
ライカの説明に零夜は彼女がいない事に納得したが、ヒューラー達の会話が気になってしまう。恐らく奴等はエルフの森に自分達がいる事を把握していて、ベルセルクやアルバータドラゴンを早めに解き放とうとしているだろう。
ライカはそのまま零夜と風子に対し、盗み聞きした会話を話し始める。しかし、その内容は衝撃的な展開だった。
「ベルセルクとアルバータドラゴンを融合させ、最凶のモンスターを作ろうとしている!」
「!?」
ライカからの突然の報告に、零夜は驚きを隠せずにいた。あまりにも予想外の展開であり、思考回路が追いつけないのも無理はない。しかし、今話した事は事実である事は間違いないだろう。
「まさかヒューラーがその様な事を……いくらなんでも想定外過ぎるぜ……」
零夜は冷や汗を流しつつ、ヒューラーの策略にしてやられたの顔をしていた。こうなると最強の技を伝授しても、それが最凶モンスターに対して通じるかが問題と言える。
零夜達はヒューラーによって動きを読まれてしまい、心の中で悔しがってしまうのも無理なかった。
「それだけじゃないく、ヒューラーも自ら出動する。戦争となるのも時間の問題となるかもな……」
ライカは真剣な表情で今後の事を推測し、零夜と風子も危機感を感じる。全戦力で戦う事になると、ヒューラーだけでなく、大勢の敵を相手に立ち向かわなくてはならない。援軍を呼ぼうとしても時間が掛かるのは勿論、ヒューラー達が奇襲してくる可能性もあり得るのだ。
「攻めてくる前にアジトを襲撃する必要があるみたいだが、奴等は何時襲い掛かる?」
風子は真剣な表情で推測したと同時に、ライカに質問する。奴等の襲撃する日時が分かれば、伝授される最強技を取得する期間と予定を組む事ができるのだ。
「話によれば一週間ぐらいだ。それまで最強技を取得して強くなる必要がある。後は私もスパイ活動を続け、敵の情報を掴み取らないとな!」
ライカは説明した後に強くなる決意を固める。彼女は選ばれし戦士であるかどうかは分からないが、目標を達成するまで最後まで諦めない心を持っている。零夜と同じ性格を持っているが、お宝やお金に目が無いのが欠点である。
「そうだな……けど、あまり無理はしないでくれよ。俺は仲間を失うのは苦手だからな」
「心配するなって!私はこう見えても、選ばれし戦士の一人として活躍しているからな。けど、その先の仲間については、誰なのか分かってないからな……」
零夜からの忠告にライカは笑顔で応えるが、彼女は自身も選ばれし戦士だと明かした後、困り顔で仲間の行方を気になっていた。
それを聞いた零夜と風子は驚きを隠せず、彼は思わずライカに詰め寄ってきた。
「ライカも選ばれし戦士の一人だとは……なんで黙っていたんだよ!」
「いや……言いづらかったんだ……それに皆から馬鹿にされてしまうのも無理ないし……」
「複雑な事情があるという事だな」
零夜からの質問に、ライカはすまなさそうな表情で説明する。その説明に風子は納得し、ライカの右肩に自身の左手を置く。
「人は言いづらい事もあるから気にするな。仲間探しで困っているのなら、私達が手助けしよう」
「悪いな、風子……」
風子が笑みを浮かべながら、ライカを助ける事を宣言。ライカは横を向いていて、頬を掻きながらお礼を言った。その様子だと素直になれない部分があるので、ツンデレ属性があると予測されるだろう。
「俺も助太刀する。困っている人は放っておけないからな」
「ありがとな、零夜。さっ、早く料理を頼もうぜ!」
零夜もライカに対して協力する事を宣言し、彼女は笑みを浮かべた後に料理を頼む事を提案。それに零夜と風子も賛同し、彼等はバーでの一時を楽しんだのだった。
※
同時刻、アルフェリア支部基地内での研究室では、ヒューラーがモンスターの融合魔術を行おうとしていた。それはアルバータドラゴンとベルセルクの融合で、目の前にはベルセルクが入っている檻が置かれていた。
「これでよし。後はアルバータドラゴンを用意するだけだ」
ヒューラーは腕を鳴らしながら融合魔術の準備を行おうとするが、なかなかアルバータドラゴンが入っている檻が来ない。どうしたものかと心配し始めたその時、兵士達が慌てながら駆けつけてきた。しかも服はボロボロで、あちこちに傷が残っているのだ。
「どうした、その怪我は!?」
ヒューラーは驚きを隠せないまま兵士達の元に駆け付けるが、彼等は俯いたまま暗い顔をしていた。
「アルバータドラゴンが……脱走しました!しかも、兵士達を喰い殺して……!」
「なんだと!?」
兵士からの衝撃の告白に、ヒューラーは驚くのも無理なかった。
モンスターの管理が悪かったのかどうかは分からないが、まさか自力で脱走してしまったのは予想外と言える。しかも新たな最凶モンスターを融合して作ろうとしていたのに、今の脱走で全てが水の泡となってしまった。
「まさか脱走するとは想定外だ。奴の行方を見つけ次第、すぐに捕まえろ!邪魔する奴等は徹底的に殺せ!」
「「「はっ!」」」
ヒューラーが怒声を上げながら、兵士達に向けてアルバータドラゴンの捕獲命令を下した。兵士達は傷だらけの身体で敬礼した直後、そのままアルバータドラゴンを探しに向かったのだった。
アルバータドラゴンがまさかの脱走!果たしてどうなるのか!?
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