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俺、ちゃんと書き込んでるじゃん

 「「なり〜!」」

「けり〜!」

「ありがとうな!」

「なりちゃん達、けりちゃん、またね!」

「む〜!」

 「なあ、(あずま)、お寺では武術も教えてくれるのか?」

「学問や道徳が主ではあるけどね。私のところは教えてくれたんだ。鬼が来た時の護身用にって。和尚様、鬼が出たらお寺にはいられなかったから。」

「そっか、鬼を追い払いに行かないとだもんな。」

春の剣捌きは護身を越えている気がするが、才能なのかもしれない。

「村が見えてきたわ!」

 「お邪魔します。杜若(かきつばた) 太郎と申します。」

「春です。」

「こんにちは。お話は聞いています、助動詞使い様ですね。どうぞ、こちらへ。」

「あの、これ隣の村で長老さんに頼まれた種です。」

「まあ!ありがとうございます。この植物は発芽と成長で好む気候が違うから種や苗を行き来させているの。助かるわ。」

なんだか、お母さんって感じの人だな。

「確かに、お受け取りいたしました。」

村のお姉さんが巾着から中身を少し手に出した。

「それ、大豆ですか?」

「む!」

「じゃあ、この村のきび団子のきなこは隣の村の種からできているんですか?」

「きな粉って大豆なのか?!」

「え?」

「あ、いや、なんでもない。」

そういえば、あんこが小豆なのは知っていたけど、きな粉は知らなかった。

「春さん、そうなの。全部ってわけではないけれどね。」

まあ、きび団子自体、万能薬ってわけではなかったから前の世界とは多少違うだろうけど。

「鬼だー!!!」

「「えっ!」」

「む!」

こういう瞬発力は春が速い。俺は若干、春とむを追いかける形で走り出した。

 「お兄ちゃん!」

(さら)、大丈夫だから。静かにっ。」

そこには大木の陰に座り込んだ兄妹がいた。どうやら兄の方が妹を庇い、落ち着かせようとしている。

「京に()(たま)ひて、物語の多く(さぶら)ふなる、ある限り見せ(たま)へ。」

「春、子供たちを頼む!」

「任せて!」

「終止形接続、伝聞の助動詞「なり」の連体形!」

知っているぜ。同格の格助詞「の」だろう?

「なあぁあるっ!」

「もう大丈夫よ。さあ、速くこっちへ。」

「更、行くぞ。」

「うん。」

「未然形接続、尊敬の助動詞「す」の連用形!」

「す!」

狐?!鳴き声が終止形のままだ!

「疾く!物語!!!!」

「太郎くん!!」

「うわっ!っっ大丈夫だ!」

これで違うなら他にないよな。

「未然形接続、使役の助動詞「す」の連用形!!!」

「せ!!」

「見せ給h……!」

「せ・給ふ」って尊敬じゃなかったのかよ。文法書……これか!下に尊敬語を伴わない「せ」は100%使役だけど、下に尊敬語を伴う「せ」は尊敬とは限らないってやつだ!俺、ちゃんと書き込んでるじゃん。

「悪かったな、す、豚なり、大丈夫か?」

「す!」

「なりー。」

「なりっ!!」

やっぱり、(いの)なりも来ていたのか。こいつらが大丈夫そうなら

「春!子供たちは?」

「大丈夫よ。村の大人の所へ避難させて来たわ。でも太郎くんのことを守るって言ったのに間に合わなくてごめんなさい。」

「いや、あれは俺のミスだから。謝らないでくれ。あれ、むは?」

「ちょっと、お仕事中。」

「?」

まあ、無事なら良いか。春が悪戯っぽく微笑んだ。

「す、豚なり、猪なり、きび団子だ。来てくれてありがとうな。」

「す〜!」

「「なり〜!」」

あれっ?

「なり達は、今日、村の前で別れたやつか?」

どこを見てという確信は無いのだが、俺は助動詞の個体差を見分けられるのかもしれない。

「「なり!!」」

「そうか、1日で2回も、ありがとうな。」

呼んだときも、吹っ飛ばされようとすぐに立ち上がって突っ込んで行ってくれる2人だから、猪突猛進で駆けつけてくれたんだろうな。

出典 「あこがれ」 更級日記

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