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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

摩擦勇者は平穏を望む〜女神から魔王軍の足止めしてくれれば後は自由にしていいと言われたのに第二の人生波瀾万丈に〜

作者: 花河相

 

「勇者様方!人類を魔王から救ってください!」


 突然だが、俺は勇者召喚をされ、そう言われた。


「魔王…だと!」

「え?」

「何よこれ?」


 どうやら召喚されたのは俺だけではないらしい。

 俺の周囲には同じくらいの年齢の男女が三人。茶髪のさらさらヘアーのイケメン黒髪のメガネをかけた冷静沈着そう頭良さそうなガリ勉。そして最後に金髪を腰まで伸ばした美少女。それぞれがそのような反応をしていた。


「混乱させてしまい申し訳ありません。我が国は今一大事なのです。ある日突然魔族が人間に宣戦布告をしてきました。人類は抵抗を続けました。しかし、魔族と人間では戦力の差が開き過ぎていました。そのせいで、今この国……いや、人類は滅亡の危機を迎えています。どうにかできないかと思い、最終手段である禁忌魔法の勇者召喚を発動しました。異世界の素養のあるあなた方をお呼びしました」

「……そちらの事情で一方的に呼び出しておいて、戦えと?それは都合の良すぎる話では?」

「それは重々承知しております」


 現状を説明してくれた女性……いや、赤いドレスに着ている王女様の言葉に眼鏡の青年が正論をぶつける。

 確かにそうだ。勝手な事情で召喚され、世界を救ってくれ。そう言われたら普通の人ならばそういう反応をする。

 そう、普通なら。

 

「わかりました。お任せください!」

「おい!何を勝手に!」


 王女様のお願いに返答したのは茶髪のイケメン。冷静な対応をしているメガネの青年は抗議をした。だが、残念ながらこの後、メガネの青年の意見は通ることはない。理由は俺を含めた。召喚された三人が満場一致を示してしまうからだ。


「おい、お前達も黙ってないで、何か言ったらどうだ」


 メガネはイケメンの青年の返答に対して周りに意見を求める。

 何回も言うが、普通の人間ならば即座に否定する。……が、ここに召喚されたのは素養が高い人物。そして、癖が強すぎる人物と特別な事情がある俺。

 


「でも、困っている人を放っておくことはできません。私は引き受けても良いかも思いますが」


 慈愛に満ちた少女は優しすぎる故に困っている人がいたら放っておけない。まさに聖女のような人物。


「……お前も何か言ったらどうだ」


 メガネはため息をつきながら先ほどから何も発言しない俺に意見を求めてくる。

 本来の俺なら否定するのだが……残念ながらできない理由がある。

 そのため、メガネの青年には申し訳ないけど、前二人の意見に便乗する。


「とりあえず、状況を聞いてからでもいいと思うよ俺は。だって、こんなにも困ってるんだし」

「くそ!お前もか」


 本当にごめんて。だから、そんなに露骨に態度に出すなって。


「本当ですか!ありがとうございます」

「いえ、人として当然のことです」

「困っている人は放っておけませんから」


 王女はメガネくん以外の意見を聞き、安心したように言った。

 だが、残念ながら王女は今この国が最悪の状況であることは伝えていない。


「あのぉ」

「はい」


 俺がまず最初にやらなければいけないのはここに召喚された人たちに状況を把握してもらうこと。

 そのためには……。


「魔族から人類を救えばいいんですよね?最初に何をすればいいのでしょうか?」

「それは……」


 俺の質問に王女は少し困惑していた。

 それもそうだ。今、この国が置かれている状況は最悪なのだから。


「そんなの決まってるだろう?まずは修行だよ。そんな基本もわからないのか君は?」

「いや……そのですね」


 イケメンは黙ってろよ。

 話が進まない。王女様困ってんじゃん。

 メガネは王女様の反応を見逃すことはしない。


「先ほどからどうかしたのか?反応がおかしいぞ」

「……」


 メガネの指摘され、王女様の俯き黙ってしまう。

 だって今この国は……。


「……魔王は今この国の近くに迫っています。……時間にしておよそ……一週間ほど……」

「ふざけるな!」


 そう、今魔王直々にこの国に攻め込もうとしているのだ。

 メガネは驚き、その場で思考する。

 何か打開策のような物を考えているのだろう。メガネはぶっ飛んだ事情のせいで忘れてしまっている。癖のある二名のことを。


「つまりいきなり最終決戦か……」

「本当にお困りのようなんですね」


 この二人は本当に状況がわかっているのだろうか?

 例えるなら初期装備のレベル1の段階でラスボスに挑む。そんな状況だ。

 

「先ほどからいい加減にしろ!お前らはこと重要さをわかっているのか!僕は嫌だね。最低限経験を積めるのならまだいい。だが、召喚されていきなり魔王倒せ?死にに行くようなもんじゃないか!」


 ああ、本当に女神様が言った通りになったよ。

 本当に俺は変な役回りを任されてしまったな。まぁ、いい。俺の役割は決まっているし、役割を全うすれば後は自由にして良いと約束したんだ。

 

「あの!」


 俺は大声でこの場にいる全員の視線が向くようにそう言う。

 

「とりあえず、一旦落ち着いて話しませんか?魔王が近くに迫っているということは時間がないのでは?なら、一旦別の場所へと移動して、事の詳細を話してください。今後の方針はその時決めましょう。今は時間が惜しい」


 俺は話し合いをするために意見を示す。

 メガネは深呼吸をし、王女様はどこか安心した表情をした。

 まぁ、これでいいのか?俺は自分のしなければいけない行動をする。


 では、何故俺がこのような行動をするのか。……それは俺は本来召喚されるはずのない元死人なのだから。

 そして、女神から人類滅亡を避けるためだけに呼ばれた存在だからだ。














 


 


 





 死というのは唐突にくる。

 いつもと同じ生活をしている中でも、唐突にくる物だ。


 その日、俺はいつも通りの高校から下校していた。

 いつもと変わらぬ時間に、通学路を歩いていた。帰った後、課題を終わらせなきゃ。今日の夕食はなんだろうか。

 そんなことを考えながら下校をしていた。

 たがら俺は考えもしなかった。

 今日が命日になるなんて。


「おい!くるんじゃねぇ!」

「きゃー!誰か!」


 いつもの通学路、その道中で突然助けを求める声。その周囲は騒ついていた。

 俺は気になり声のした方へ向く。

 

 そこには黒装束に身を包んだ男が女を人質に取りナイフを首元に向けていた。

 女は恐怖のあまり震え何もできないでいた。そして、男は目の焦点は合っておらず、何故か何かから追われているに見える。

 ナイフを持つ右手からは針を何回も刺したような注射痕が。


「薬中かよ」


 大方麻薬を使って幻覚でも見てるんだろうか?


「おい、お前何見てんだよ!」

「……は?」


 薬物中毒の男が急に声が聞こえた。

 もしかして俺?

 いや、そんなにじっとは見ていないはずだ。


「見てんじゃねーよ!お前も俺を見下すのかよ!」

「いや、別に」

  

 男は俺に逆情しているようだった。

 今思えばここで逃げ出していれば俺は助かっていたのかもしれない。変な正義感がなければ死ぬことはなかったのかもしれない。


「落ち着け……この場には誰もいません「うるせぇ!」……」


 俺は男の説得を試みてしまった。どうしてもこの場で見捨てることができなかったんだ。


「ふざけんなー!」

「……え?」


 男は突然女を投げ飛ばし持っていたナイフをもち、俺に突っ込んできた。

 俺はそれに反応できず……そして。


「……なんでだよ」


 俺は自分の腹から赤く生暖かい液体がポタポタと垂れていることを確認。

 俺はそのナイフを避けることができず、刺されてしまった、


「ふざ……け…んな」


俺はその場で倒れてしまう。


「ち……違う!俺は悪くない。俺は悪くない!」


 男はその場でナイフを捨てて逃走してしまった。

 こんな死……望んでねーよ。

 なんで平和に暮らしたいだけの俺がこんな目に遭わなきゃいけねーんだよ。

 あ、だめだ。これ……死ぬわ。

 俺は意識が徐々に遠くなっていく。

 

 ……来世は……絶対平和に暮らしたい。



『その願い!叶えてあげましょうか?』

「……は?」


 幻聴か?

 俺は見知らぬ女の声が聞こえた。

 

「んなわけねーか」

『いえ、幻聴ではありません。先ほどのあなたの願い、私ならば叶えられます。ただ、一つ願いを聞いてもらいますがよろしいですか?」

「……ああ」


 俺はまだ死にたくない。その一心で返答した。

 もうなんでも構わない。生きながらえるなら。


『契約成立です!あなたの魂、利用させていただきます』

 

 最後にその言葉が聞こえ、それを境に俺は意識を失った。















 突然の召喚から一時間ほど経過した。今、王女から詳細を聞き、話し合いをしている。

 それでいくつかわかったことがある。


 召喚された素質を持つ勇者たちはそれぞれ強力な固有魔法が使えるらしい。

 もちろん俺は素質なんか持ち合わせていないが、あくまで時間稼ぎが目的、それに特化した能力を持っていた。

 

 固有魔法を見るためのスクロールを使い調べたらみんな以下のような固有魔法を備えていた。

 イケメンは悪の存在を断ち切る「聖剣召喚」、メガネはあらゆる魔法を使える「マジカルマスター」、金髪少女はあらゆる怪我も病気、欠損すらも全て治癒できる「パーフェクトヒール」


 それぞれ勇者、賢者、聖女と呼ぶにふさわしい能力を持っていた。

 この能力を使えば必ず魔王も倒せるだろう。

 しっかりと段階を踏めばという条件がつくが。


 本来の時間軸でいけば今のまま魔王に挑み3人は死ぬ。

 それで世界が滅ぶなのだろう。


 だから、レベル1でも足止めだけに特化した俺を呼ばれた。

 

「……俺から一つ提案がある」


 だから、俺は女神との契約を守るため、みんなが納得する提案をする。


「みんなの能力は訓練が必要だろう。今焦って戦うよりも時間をかけて経験を積んで魔王に挑んだ方が確実だ。……ここは俺一人で時間を稼ごう。王国は滅びるかもしれないが、避難は確実にできる。……国は国民がいれば滅びない」


 お前も逃げるべきだと言われた。

 だが、ここで引き受け、時間を稼ぎ、魔王に備える時間を稼ぐ。それが女神との契約内容。それさえ達成できれば俺ははれて自由の身。


 俺は意志を曲げることなくみんなを説得し続けた。メガネはすぐ納得したが、最終的にみんなが折れる形で了承したのだった。


 俺の提案が現実的だったからだ。


 なんせ俺の能力はこの状況で最も優れた魔法を持っている。


 「摩擦係数操作」それが俺の固有魔法。

 まさに魔王軍の侵攻を止めるのに特化している能力。


 その後、残った国民の避難を開始した。

 

 その中俺は魔王軍と戦うため一人戦場に赴いた。





 


 









 

「さぁ、始めようか」


 目の前にいるの魔王軍、魔王は魔物大群の中心に布陣を構えていた。

 俺は離れた位置で様子を伺う。

 だが、自然と恐怖はない。俺は安全圏内で魔法を使うだけだ。


「範囲選択」


 魔法を使い、まずは摩擦係数を操作する範囲を選択。範囲は魔王を中心に半径百メートルほど。

 すると魔王軍の動きが停止した。異変を感じ取ったらしい。

 

「摩擦係数……0%」


 そんなの気にすることなく俺は魔法を発動させる。

 

「本当にチートだな。殺傷能力ないけど使い方次第で無敵かも」


 双眼鏡から見える戦場に呆れてしまう。

 例えるなら生まれたての子鹿のように立ち上がることができない。


 何が起こっているのか分からず軍の統率が乱れ進行が止まる。


「さて、俺はトンズラするか」


 俺の役割はこれで終わった。

 女神から事前にこの世界についての情報と指示をもらっていた。

 

 これから近くの街に入り、冒険者として過ごす予定だ。

 

「これから……始まるんだ。俺の第二の人生が」


 だが、そんな考えはすぐに吹き飛ぶ。

 それは俺が移動を始め数分経過した時のこと。 

 突然背後から辺り一面に揺れが発生するほどの爆発が起こる。


「え?なんだよ」


 俺はやばいと思い退散した。この時の俺はこの後何が起こったか知ることになる。


 ヤケになった魔王は「メテオプロミネンス」という隕石を落とし爆発させる大魔法を使った。

 そのせいで魔王は死んでしまい、魔王軍は半壊した。


 その時間は後ほどこう語られるようになる。


「一人の勇敢な勇者が命を張って魔王軍侵攻を阻止した」……と。

 

 魔王の冷静さを欠かした行動により、俺の第二の人生計画が崩れることになる。

 

 魔王軍四天王の活発化、軍団長クラスが暴走を開始し、俺はそれを阻止するため奮闘することになるのだった。


「どうしてこうなった?」

 


最後まで読んでくださりありがとうございます。


次の連載をどうしようか考えてます。

この物語の連載版が読んでみたいと少しでも思って頂けましたら差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


ポイントはモチベーションになります。


よろしくお願いいたします。




https://ncode.syosetu.com/n9392hy/

他にも短編投稿してます。

こちらよろしければ。

タイトルは「甘い話には罠がある」です。

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