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83・加護

 お互いを抱き合いながら涙目の双子をそのまま放置して、出口であろう扉を潜る。

 すぐに外に出るのか、それとも一階層のホールに出るのか……俺が足を踏み入れた場所はそのどちらでも無かった。


「……何だここは?」


 呟いてから後ろを振り向くと、後について来た筈のクラリッサ達三人の姿も無い。

 ……隔離された? 勿論犯人は彼女達しかいない。


「「お待ちになってください」」


 誰も居なかった筈の前方からハモった声がかけられた。

 あーびっくりした、脅かすのは止めて欲しい……。


「まだ、何か用があるのかい?」


 当然の俺の問いかけだ。

 双子はお互いの顔を見合わせた後、俺に向き直りまた声を揃えて答えた。


「「大ありです」」


 ふむ、出来ればさっさとここから出たいんだがな。

 セーラが目の敵にしている魔王の娘のリーナって奴が来たら、面倒臭い事になりそうだし……いやなる、絶対になる。

 はっ、まさかそのリーナって奴に俺を引き渡すつもりではないだろうな?


「もしやリーナって奴の指示なのか?」

「? リーナ様は関係ないですよ」

「? 勇者陸はリーナ様に会わない方がいいと思いますよ」


 ふむ、どうやら俺の思い過ごしの様だ。

 では、わざわざセーラ達と引き離してまで、俺に何の用だったのだろうか?


「悪いが手短に頼む、あいつ等が心配するからな、特にセーラが」

「承知しました、私も怖いですから」

「了承しました、私も恐ろしいですから」


 本気で怖い様だ。少し目が泳いでいる、二人共。

 だが何の目的か分からない双子と、隔離された場所に居るのはどうにも落ち着かない。

 どうせセーラが俺を奪還しようと動いているだろうから、何かあった時の為に時間稼ぎした方が良かったかな。

 セーラが必ず動くと思うのは、玩具である俺をそうそう手放すとは思えないからだ。


「すぐ終わるのです、この塔を攻略した報酬を渡してないですから」

「要らないなら別にいいですが、良い物なので貰っておいて損は無いと思うのです」

「いいのか、貰えるものなら貰っておくが」


 一番最初に攻略しただけでは良い物は貰えないと言っていた気がするが、どうやら俺は報酬を受け取る資格を知らず知らずのうちに得ていた様である。

 その資格ってのが何だったのかは知らないが……。

 まぁ、くれるというなら貰っておくことにする。この双子がくれる物だから一抹の不安があるが、もし本当に良い物なら是非頂きたい。


「「テッテテテテ~」」


 何処かのアニメで聞いた様なリズムと声を出しながら、二人して胸元から鞘付きの剣を取り出した。

 ……この双子、セーラと同じ出し方をしやがる。しかも絶対中に入らないだろうって大きさと長さの剣だ。

 今なら収納魔法で出してるって知っているから驚きはしないが、この出し方はセンスを疑う。ひょっとして魔族の流行りなのだろうか?

 双子が俺の両脇に回り、がっしりと俺の両腕をセナとラナがそれぞれ組んだ。

 う、動けん。華奢に見えても流石は十二将。


「すぐに終わるから力を抜いて下さい」

「直ぐに目を覚ましますから心配いらないのですよ」

「は?」


 次の瞬間意識が遠のいた。


<>


 真っ白な世界から目が覚めると、俺の両手には先程セナとラナが胸元から取り出した剣が握られていた。


「「御馳走さまでした」」

「何をしやがった!」


 いかん、つい地で突っ込んでしまった。

 セナとラナは揃って顔を赤らめながら唇を舌で舐め、少し乱れた服を直していた。

 ……聞くのは止めよう、聞いたらきっと後悔する。

 双子は何食わぬ顔で俺の前に立つと、俺の手にした剣を指差した。


「ライトハンドソードです」


 先程ラナが持っていた赤い両刃の直剣は俺の右手に握られていて、柄の部分が右手にぴったりフィットする様に作られている変わった剣だった。


「レフトハンドブレードです」


 一方セナが持っていた青い片刃の曲刀は俺の左手に握られていて、柄の部分が左手にフィットする造りになっていた。

 これはアレか? 二本で一つの二刀流用の武器なのか?


「本当はどちらか一本なのですが、気分がいいので両方あげちゃう、大サービスです」

「気に入らない人物なら、攻略してもどちらもあげなかったので、大ラッキーです」


 どういう訳か彼女等は機嫌が良い様だ。


「本当は私達が開発したゲート型転移魔法の魔道書もオマケであげようと思ったのですが……」

「残念ながら私達が開発したゲート型転移魔法の魔法を既に習得していたのですね……」

「ああ、それはアリアスに譲ってもらったんだ、とても便利で助かっている」

「ふふふ、魔法の開発は専門分野なのです」

「ふふふ、中でも転移魔法は得意な方なのです」


 ああ、そういえばアリアスからゲート型転移魔法の魔導書を貰った時、魔法を作ったのは天才の双子の魔族だって言っていた気がするな。

 この双子が作ったのか。そういえばこのセナラナの塔も転移装置が豊富に使用されているよな。

 しかし、よく俺がゲート型転移魔法を習得しているって分かったんだ? ああ、鑑定魔法か、魔法が得意なんだから鑑定魔法ぐらいは当然、習得しているか。


 さて、この形の違う二本の剣だが……どうやら当りみたいだ。

 鑑定の魔法ではとんでもない性能の数値が出ていた。

 いや、しかし……こんなに都合よく最高級の武器が手に入るなんて、騙されている気がするなぁ。

 そんな都合の良い話があるかって話だ。


「セナさんラナさん、こんなに良い武器をくれるなんて、俺に何をさせるつもりですか?」

「「……?」」


 双子は揃って首を傾げる。タイミングを合わせた訳でも無いのに、息がピッタリである。


「攻略の報酬と言った筈ですが……でも下心が無かったと言うと嘘になりますね」

「私達の加護を授けたのです、その剣も加護の一つなのです」

「……加護?」


 加護ってあの印ってやつじゃ無いのか?

 聞いてみると加護には何種類かあって、印の加護は一番下の加護なんだそうだ。

 次に高いのは証の加護、双子のくれた剣や、何とレオナールがくれた黒と白に変化する、今俺が身に着けている鎧もそうなんだそうだ。

 レオナールは印の加護だけでなく、証の加護も俺にくれていた様だった。

 そしてこの双子だがそれだけでは無く、最高位の加護である真名の加護も俺にくれたらしい。


「ちなみにセーラ様は印の加護だけでした。真名の加護を与えるのは後に取っておくつもりだったようですが……ウフフフ」

「出し惜しみしてるセーラ様が悪いのです。つまり私達が勇者陸の初めてという事になります、ウフフフ」

「意味深な言葉で惑わすの止めろよな……」


 つまりセーラを出し抜いたって事だよな。

 絶対セーラが怒るやつだろソレ。


「私達は勇者陸に強く深い力を授けたという事です、その代わりに勇者陸が強くなればなる程、私達も同様に力を得ます」

「一蓮托生です、但し戦闘等で勇者陸が大怪我をしたり亡くなった場合、かなり大きいデメリットを私達が受けます」


 成程、加護を与える者をよく選ばないと大変な事になるという訳だな。


「ちなみにそのデメリットって、どんなのなんだ?」

「運が悪いと死にます」

「でも安心して下さい、私達の場合どちらかで済むので」

「安心じゃねぇ!」

「「冗談です」」

「……」


 俺が予想通りの反応をしたのが嬉しかったのか二人共笑っていた。

 よく見ないと分からない程の無表情さだが。


「大体はステータスが少し減少したり、少々力が低下する程度です」

「ただ力関係のある十二将である私達には、能力の低下は大問題ですが」


 そうか、弱くなり過ぎると十二将から降格なんてことがあるのかもしれない。そうじゃ無くても十二将同士の力関係が変わってしまう可能性があるのか。

 俺が大怪我をしたり亡くなった場合にセナとラナがデメリットを受けるのは、俺の戦闘時だけの話なのか? 病気や老衰などは関係ないのかな?


「セナ~ラナ~? 人のモノに手を出すとはどういう了見かしら~?」

「「ひっセーラ様!」」


 不意にこの空間にセーラの声が響く。刹那空間が歪みよく知った白いローブを纏った巨乳の女性が姿を現した。


「な~んであなた達が先に、陸さんに真名の加護を与えているのですかぁ~?」

「セ、セーラ様が勿体ぶって、何時までも勇者陸に真名の加護を与えないのがいけないのですよ」

「こういうのは早い者勝ちです、セーラ様もさっさと真名の加護を与えればよかったのですよ」

「何ですってぇ!」

「「ヒャッア!」」


セナとラナが叫び声を上げセーラは笑いながら双子に近付く。但し目は笑ってないし、こめかみに青筋が浮かんでいた。


「またお会いしましょう勇者陸!」

「再会を楽しみにしてます勇者陸!」


 二人は手を取り合い姿を消した。転移魔法か?

 双子が姿を消すと扉が現れ、そこから外に出られる様だ。

 ちなみに塔の中は俺達は転移魔法が使えない。使えるのは塔の管理者関係の者だけらしい、当然セナとラナは自由に使える様だ。

 セーラは俺の手にある剣を見てニッコリ微笑んだ。


「陸さん~どういう事かじっくり説明してもらいますよ~」


 先程セナとラナに目を向けた時と同じく目が笑っていない。

 ……俺は無実なのだが、信じて貰えそうにないな……。


 ともかくセナとラナから武器をゲットした。

 今までの武器はセーラから借りたもので、良い武器ではあるがエリート君達が持っていた様な国宝級の武器では無かった。

 セーラも自分のアジトである迷宮の宝物庫に、伝説級の武器を所持しているらしいが、それを他者に譲渡する事は出来ないらしい。

 そのクラスの武具はその武具自身が主を選ぶ為だ。

 よって俺は今まで質は良く高価ではあるが、一般に売買されている武器を手に戦いを続けていたのである。

 しかも最近刃こぼれも多く、武器を替える事を考えていたので、セナとラナのくれた報酬はありがたかった。


 俺の周りを見てみると勇者の皆は性能の差はあるものの、聖剣魔剣クラスの武器を持っていた。

 あの黒歴史君でさえ名前は忘れたが、何とかと言う魔剣を所持していたのだ。性能は今一だった様だが。

 ライトハンドソードとレフトハンドブレードは魔剣の部類である、しかもかなり上位の武器だ。

 鑑定の説明を見ると二本揃って使う事により、相乗効果で聖剣を上回る能力を出す事ができるらしい。

 本当だろうか? 俺、騙されてない?

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