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80.七階層

 七階層のモンスターはゴーレムの団体さんだった。

 ゴーレムと言えば強い部類のモンスターに区分されるが、その強さは一定ではなく体を構成する素材によってピンキリだ。

 だがそもそも、塔の管理者であるセナとラナの匙加減でモンスターレベルを操作出来るので、素材で強さをはかるのは意味のない事かもしれないが。


「クソッ、ダメージが通らん、これではいずれこちらの方が先に……」

「諦めるな、もっと攻撃の手数を増やすんだ! 俺達が敵を抑えている間に!」


 アタッカーの泣きごとに、エリート君が喝を入れる。だがアタッカーの言い分が正しいと思うぞ。


「ねぇ、陸君達にアタッカーに回ってもらいましょう、彼等は私達より強いわ」

「何を言ってるんだ咲、柏木が攻撃に回っても意味が無いだろう? それより彼がミスリルゴーレムを抑えている間に、出来るだけストーンゴーレムの数を減らすんだ!」

「その通りだ咲、柏木の事を過大に評価する必要はない。このまま当初の作戦で行くぞ」


 俺達を攻撃手に押すお嬢の意見をエリート君とがり勉君が却下した。

 ふん、そうかい。俺の事は自分達の負担を減らせる、消耗品みたいな扱いと言うことだな。

 はっきり言ってお嬢の指摘は正しい。

 俺とクラリッサの魔法でゴーレム達はほぼ殲滅出来るだろう。嘘や誇張では無く本当に。

 そうしないのはいつでも出来るのと、エリート君達が決めた作戦に従っているからである。俺達をどのように使うか興味があったからだ。

 お嬢は俺達の事を明確に自分達より強いと明言しているが、エリート君は自分達とはそう変わらない位に考えている様だし、がり勉君に至っては完全に格下だと思っている様だ。

 恐らく聖女として超有名なセーラが弱い俺達を支え、ここまで連れてきたと考えているのだろう。

 まぁ、あながち間違いでも無い。セーラの口車と強引なレベリングで育てられたのは確かだし、現状でも俺達の中で一番強いのはセーラだ。


「クソオオオッ、堅ぇアニーもっと強化だ、力が足りねぇ!」

「はいはい」

「おのれ、ゴーレム如きが、むっ、いかんリリィ、皆を回復させてくれ」

「やってるわよ!」


空も海もアイアンゴーレム相手に苦戦している様だ。それでもアイアンゴーレムはそれなりにダメージを負っている様で、所々ボロボロになっていた。

 こいつ等は放っておいても大丈夫だろう。


 いかん、状況がおかしい事になってきた……。

 最初は数の多いストーンゴーレムがそれぞれの勇者に数体づつばらけていたのだが、今はエリート君達勇者三人がそれぞれ一体ずつのストーンゴーレムの相手しかできなくなっていたのだ。

 原因は言うまでもなく、力不足である。

 よって俺はミスリルゴーレムの他に七体のストーンゴーレム都合八体の攻撃を受けなくてはならなくなった。

 ……もういいや、反撃して殲滅してしまおう。さばき切るのも限度がある。いくらゴーレムとレベル差があるといってもな。


「クラリッサ、リタ、もう奴等に付き合わなくていい、やってしまうぞ」


 倒してしまっても構わんのだろう? と言うやつだ。


「分かりました、陸さん」

「じゃ遠慮なくいくぜ、陸様!」

「じゃあ、私もお手伝いしますね~」


 俺の台詞に目を剥いて驚くエリート君と、不快そうに顔を歪めるがり勉君。

 彼らが何か言おうとする前に俺は、目の前のストーンゴーレムの腕を切り落とし、返す刀で胴を薙ぎ身体を真っ二つにした。

 まだ動こうとしたので頭も二つに斬ると、中に球状の水晶体があり一瞬光った後に黒く変色してバラバラと崩れ落ちた。

 そうするとゴーレムは動きを完全に停止させた。どうやらアレが核つまりコアというものなんだろう。

 しかしそれなりに堅かったな、刃こぼれくらいはしたかもしれない。まぁいいか、セーラからの借り物だ。


「【氷槍】!」


 クラリッサの魔法がストーンゴーレムを襲う。

 巨大な先の尖った氷の柱がストーンゴーレムを貫く。うん、最早槍じゃないよね、あれ。

 俺の攻撃を見ていたのだろう、コアを破壊する為に頭部を標的にしたようだが、氷柱が大きかったためゴーレムの上半身がバラバラに吹っ飛んだ。


「さぁリタちゃん、特別の二倍増しの強化魔法よ~」

「サンキュ、セーラ姉」


 リタが光る魔法の矢を構え、それにセーラが攻撃力アップの魔法をかける。

 ……おいおい、二倍ってマジか?

 リタの放った矢はストーンゴーレムの頭部を簡単に貫通し、ゴーレムは動きを止め、その場で後ろに倒れた。


「な、何なんだ……アレは?」

「い、一体どうなっているんだ?」

「だから言ったのに……」


 おいおい、そこの勇者三組、よそ見をしていて目の前のゴーレムに殴り倒されても知らないぞ。

 俺は剣を振るい、クラリッサは魔法を放ち、リタは弓を射る。ちなみにセーラは応援をしていた。

 そうやってあっという間にストーンゴーレムは駆逐され、俺の前にはミスリルゴーレムのみが残った。


「【猛氷】」


 クラリッサがミスリルゴーレムに氷系の魔法を放つ、魔法抵抗力の高いゴーレムには決定的なダメージにはならないが、体を凍らせる事により動きを緩慢にさせる事は出来る。その間に俺が魔法を唱える事が出来たのであった。


「【猛炎】」


 クラリッサと同クラスの魔法だが、レベルの高い俺が使うとそれなりのダメージを与える事が出来る。いわゆるレベル補正というやつである。

 凍らせた後の高熱だ、流石に効いている。だが致命傷には程遠い。

 でもまあこれでいい、俺に向かって腕を振り攻撃を仕掛けてくるゴーレムを避け、頭部に出来ていた大き目の傷に目がけて渾身の剣撃を加えた。

 パキーン、といい音でミスリルゴーレムの頭部が割れ、その巨体は動きを止めた。

 ふぅ、これで俺のノルマは終わりだな。


 ミスリルゴーレムを倒しても、部屋の奥に上の階に続く階段は現れなかった。

 どうやらゴーレムを全て倒さないと駄目なのかもしれないな。

 仕方がない、他のメンバーが倒すのを待っているか。


「柏木、手伝ってくれ!」

「お、おい、何を休んでいる、まだ戦いは終わっていないんだぞ」

「……」


 まだ一体のストーンゴーレムも倒せてない、エリート君とがり勉君が何か言っている様だ。

 お嬢は困った顔をしていても、助けて欲しいとは言いずらそうだった。

 はぁ、仕方がないな。

 お嬢の方に歩いて行き、魔法を唱える


「【雷矢】」


 ズガンと轟音を上げ、ストーンゴーレムに砲撃の様な雷が撃ち込まれた。

 おお、本来は雷の矢が飛んでいく魔法なのだが、俺のレベルで本気で放つと雷の大砲みたいになるんだな。

 お嬢と対峙してたゴーレムの頭が吹っ飛ぶと、動きを止めそのまま後ろに倒れた。

 終了。


「あ、ありがとう陸君」

「どういたしまして。別に気にしなくていいよ、仲間だろ?」


 嬉しそうに、はにかむお嬢。

 さぁ、階段が現れるまで休憩しよう、十分働いたからな。


「待ってくれ、何で咲だけなんだ」

「後、この二体だけだぞ、さっさと倒せよ」


 ん? 後二体? 後ろを見ると空と海はそれぞれ戦っていたアイアンゴーレムを見事倒していた。おお、頑張ったな。


「あ、あの陸君、あのままじゃ二人共やられちゃうから……気が進まないと思うけど、助けてくれないかしら」


 手を合わせ頭を下げるお嬢。

 ふむ、彼氏のエリート君や友達のがり勉君がやられるのを黙って見ているのも辛いだろうな。

 お嬢の顔を立ててやるとするか。


「クラリッサ、リタ頼む」


 俺が動く必要も無いし、クラリッサとリタも手持ち無沙汰だ。


「はい」

「分かったぜ、陸様」


 返事と共にクラリッサは魔法を、リタは矢を放つ。

 二人の的確な攻撃に頭部を失ったストーンゴーレムは動きを止めた。

 それと同時に部屋の奥に階段が現れる。やはり殲滅が攻略の条件だったか。


「ウオオオーーーー! 俺が一番だぁあああ!」


 空が全速力で階段を駆け上がって行った。


「クソッ出遅れた!」


 続いて海が階段を駆け上がる、イケメンズもそれの後を追いかける。

 取り残されたアニーとリリィが呆れ顔でそれを眺めていた。苦労してんなぁ、あいつ等も。


「わ、悪い……でも、もう少し早く手を貸してくれたら助かったんだが……」


 疲れた顔でエリート君が俺に告げる。

 それより君、ゴーレム一体も倒してないよね?


「さっさと助けろ、ノロマめ!」


 何でそんなに偉そうなんだよ、がり勉君は? クソ、助けなきゃよかった。

 全く、お前等を助けてくれと言ってくれたお嬢に感謝しろよな。


 階段を上がった先にはセナとラナが待っていた。


「ようこそセナラナの塔の最後の階層です、皆さんを歓迎します」

「前回は三階層が最高だったのに、今回はここまで来れたとは驚きです」


 七階層で脱落者が出なかったので二十四人全員が八階層にてセナとラナの出迎えを受けた。


「ここは扉を潜ると全員同じ部屋に入ります。ただし……」

「……ただし二択です、各自好きな方を選んで下さい」


 つまりユニット、パーティ関係無く、二択で最終攻略を目指すわけだな。


「力の試練は私、ラナの方の扉へ」

「知恵の試練は私、セナの方の扉へ」

「「来てください」」


 最終階層となる八階層は、これまでの階層とは違い二つの扉が用意されていたのだった。

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