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70/122

70・塔

 ステアの町からそのまま北上するとセナラナの塔がある。

 初めてステアの町に来た時だったか、レオナールとセーラの会話で話題に出ていた塔の名が、確かそんな名前だった気がする。

 解放が何とかと言ってたな。結構有名な塔だったらしい。


 俺達はピクラルを倒した後、そのセナラナの塔の解放があるまで、今度は大蠍、大蟹、大魚と模擬戦を繰り返していた。

 相変わらず半端無い強さだ、こいつ等。

 前回の大羊、大牛、大山羊の時程ではないが、戦闘で何度も死にそうになった。俺達のレベルもかなり上がったのにも関わらずだ。

 当のセーラは「万一、死んでも蘇生させてあげますよ~」などと抜かしているが、冗談では無い。蘇生魔法は成功率、百パーセントではないのだからな。

 初めての時の戦闘で運良く勝てたのは、あいつ等がたかが人間と油断して侮ってくれたからである。


 数か月経過して開幕最大魔法等の方法を使わず、やっとスコーズ達とまともに戦えるようになった頃、セナラナの塔の解放があるからステアの町に行きましょうとセーラから声がかかった。

 ステアの町にある北側の門を出ると、正面つまり北の方角に塔が見えていたのだ。

 まさか目視出来る程近くにあるとは思わなかったし、気づいてもいなかった。

 塔までの道はきちんと整備されていて、治安状態も良い。

 人間でも安全に通行できるが、近寄っても普通の者達は塔の敷地内に入る事はできない。

 なので一旦塔の近くに設けられた館やホールなどが設置されている施設に、俺達は集められた。

 そうこの塔を攻略する為に来た者達が、塔の解放に合わせてそこら中から集まってきたのだ。

 どちらを見ても人間ばっかりで、とてもここが魔族領だとは思えない。

 そして施設内のホールに集合がかかり、そこにこの塔の関係者らしき者が俺達の前に現れたのだった。

 そいつらは碌な挨拶も無しにいきなり喋り始めた。


「ここから魔王城までは約千キロあります。途中魔王軍に与して無い無法の集団やノラの魔物も居ます、何よりここから先は人間を敵視している魔族だらけです……セナです」

「そこで耳寄りな情報です。この塔の全八層の攻略次第で魔王城までの途中地域まで、テレポートで近道をさせてあげる事が出来ます……ラナです」


 俺達の目の前で双子の姉妹が塔の説明をしてくれていた。

 セナラナって双子の名前だったのか、何の捻りも無かったな。

 セナは青い服に黄色い三日月のマークの髪飾りで、ラナは赤い服に太陽のマークの髪飾りを付けている。俺から見て右側がセナ左側がラナだ。


「上層に行けば行くほど困難なものになります。実際に魔王城に近付くにつれ魔族や魔物が強くなっていきますから、この塔はそれを模して上層に行く程にモンスターが強くなります」

「つまり魔王城までの千キロを歩かなくても、その地域の強さを身に付けている者はテレポートで楽が出来るわけです」


 続けてセナとラナが解説を進めていた。


 ん、あれ? テレポートだって?

 今更だがセーラ達の決めたルールでは、魔王城から離れる方角なら初めての場所でも転移OKなルールだったよな?

 確かにここセナラナ塔のあるステアの町へは、拠点としているシーマの町から見て魔王城からは離れている場所への移動だが、塔を攻略すれば結果として魔王城が近くなるじゃないか。

 いいのかそれは?

 いい加減なルールだよな、とは思うが……実はもう理由は分かっている。

 セーラ、アニー、リリィの三人は育てている勇者がちゃんと強くなってから先へ進める様に、魔王城方面に向って初めての地域に行く時は、セーラ達は転移魔法の使用を禁止していたのだ。

 弱いまま先に進み過ぎて俺達が死なない様にとの配慮だろう。

 たまにズルをするのはお愛嬌だ。

 あいつ等は、たまに三人で集まってるみたいだしな、印の加護の時みたいに。


 さて、この場所にはセナラナの塔に挑む者が集結しているのだが、パーティ数は三十組以上にもおよび、その総人数は百人いや二百人はいるだろう。

 勇者のパーティだけじゃない、この世界の高レベルの冒険者パーティもかなりいるようだ。

 俺のパーティは相変わらずいつもと変わらず、クラリッサとリタそれにセーラを加えた四人だ。

 残念ながらお嬢達の前で言っていた、追加の二名の予定は無かった。どういう事だセーラ、クラリッサ?


 現在高価な銀の軽鎧を身に纏った女性にがっしりと右腕を組まれ、高級な純白のローブに身を包んだ女性に両手で左手を絡まれている。

 少なくともこの二名の女性が俺のパーティに参加することは無い筈だ……おれの希望としては。


「前回この塔が解放されたのは三ヶ月前です。その時はあそこにいる我がアルメリアが推薦した三名の率いる勇者達が参加したのですが……」

「クインズやキングスが支援したあの勇者達のパーティでさえ、三層までしかクリアできなかったのです。しかも今回は勇者パーティが一つ減り二組になってしまいましたが……」


 俺の左右にはエリザベートとヴィクトリアが脇を固めていた。

 勇者一行は魔族領に入り魔王城を目指すなら、ここセナラナの塔に来ることになる。何故ならここを一度でも通過しなければ魔王城に行くことはとても困難になるからだ。

  本来の魔王城に向かう為の大陸を横断するルートから見ると、遠回りの位置にあるセナラナの塔だが、近道が出来るテレポートがある為に勇者や冒険者はここに集うのだそうだ。

 まぁ、俺がそれを知ったのは、ついさっきの事なんだが……。


 そして俺は、手ぐすねを引いて待っていた彼女等に、まんまと捕まってしまったという訳だ。

 助けてくれとクラリッサの方を見るが目を逸らされた。

 クッ、流石にクラリッサより位の高い王族貴族ではクラリッサはあてにはならないか。クソ役に立たない奴め。

 ならばセーラは……何故か「英雄色を好むね~まぁ今回だけは大目に見ましょう」と訳の分からない事を呟きながら、腕を組みウンウンと一人で納得していた。

 やはりセーラでは駄目だ、うん分かってた。

 リタは最初から当てにならない。エリザベートとヴィクトリアから高級そうな菓子を貰って上機嫌である。食べ物につられやがって……。

 まぁ暫くの辛抱だ、何故ならこの二人は塔には入れないからだ。

 流石にそんなにホイホイと王族貴族をパーティメンバーには出来る筈はないし、彼女等の護衛の騎士達がそれを許さない。

 俺と再開した当初は仲間にしろと二人揃って食い下がっていたが、護衛の騎士達に諫められ流石に自分達の立場を思い出したらしく、共に塔を攻略する為の仲間になる事を諦めた様だ。

 ふぅ、一安心だな。

 しかしこの二人が左右に居ると目立つんだがどうしたものか、周りの視線が痛いんだが……。

 周りの男共から妬みの言葉が駄々漏れで聞こえてくるのだが、そんな良いものでは無いぞ。

 正直言ってこの二人は美人である。

 ちょいと目付きがきついが、ソレが好きな者には堪らないだろう。

 主にご褒美的なもので……だがそんな美人が勇者とは言え、俺の様な見た目もパッとしない凡人に言い寄って来るかという話だ。

 無いな、断じて無い。

 勇者は俺の他にも何人もいるのだ。ではなぜ俺なのか?

 簡単な事だ。

 こいつ等の魂胆は分かっている。

 ウノーの村の野盗の件やキングス城門での大羊アリアスの件で、多少名声が上がった俺を取り込もうという魂胆だ。

 アルメリアが選別した三人の勇者に何かあった場合の予備に、とでも考えているのだろう。

 彼女等は国の命令でイヤイヤ俺に付き纏っているのに違いないのだ。

 そうでも無ければ身分も高く、しかもこんな美人が二人も揃って俺に言い寄る筈が無い。

 はっきり言おう、俺以外の頭のおめでたい奴等なら、この状況に浮かれるだろうが俺は騙されない。

 俺は愚か者にはなるつもりは無いのだ。

 さっきも言ったが二人の本命は国が最初に選別し、既に支援しているエリート君やがり勉君達なのだ。

 お嬢は今、エリート君と同じパーティに加入しているが、彼女も本命の一人なのは間違いない。


 そんな事を考えているとお嬢と目が合った。

 彼女は俺に気付くと軽く手を振ってきた。

 何だかこの世界に来てお嬢と初めて会った時より、態度が柔らかくなった気がするな。

 あっそうか、最初に会った時は俺は黒い鎧を着ていて魔族のフリをしていたからか。

 元々はこういう気さくな性格だったのかもしれないな。

 そのお嬢の様子にエリート君が気付き、彼も同様に俺に手を振った。

 ふむ、エリート君にしてみれば自分の彼女であるお嬢を助けた俺に感謝をしているのだろう。

 そして相変わらず、がり勉君は俺を見て不機嫌そうにフンと目を逸らした。

 まぁ、選ばれた勇者としての自負もあるだろからな。なんちゃって勇者である俺のことが気に食わないのかもしれないな。


 見渡してみれば、エリート君達や実力者揃いの冒険者達だけでは無い、俺の見知った勇者パーティが揃いに揃っていた。

 相変わらずパーティメンバーが女だらけで、五人の女冒険者を連れたリーダー君。

 城で最初に絡んできた彼のパーティメンバーは、あの頃と変わらない様だ。女好きの癖にメンバーを代えないとは、意外と義理堅いのかもしれん。

 ……あっ、よく考えれば俺もパーティメンバーが女ばかりだった、人の事は言えないな……反省。


 その近くにあの黒歴史君が居た。

 あいつはリタだけではなく、リタの姉と他の奴隷達を取っ替え引っ替えしていた様だ。

 現に今も奴のパーティメンバーは奴隷だ。

 但し、同じ少女の奴隷だが見た感じ戦闘に特化した奴隷の様だ。

 奴隷が入っているパーティは他にもいるが、黒歴史君のパーティは何か他とは違う雰囲気を醸し出していた。

 その奴隷達の中心で、にやけた顔をした黒歴史君が満足そうにふんぞり返っていた。

 何かムカつくな……あいつは。


 おや、あそこに見えるのはイケメン君じゃないか。

 彼のパーティも奴隷だが、黒歴史君と違い妙に暖かい雰囲気がする。

 あの時居た少年少女の獣人奴隷はそのままに、新たに屈強な男の獣人奴隷が加わっていた。彼とイケメン君との仲も良さそうだ。

 黒歴史君と同じ奴隷パーティだが対照的だった。


 その横に委員長がいた。裏切られた男獣人からは立ち直ったのかな、と思ったら少年の獣人奴隷を五人も連れていた。

 お前も凝りもせずまた奴隷かよ……しかもショタじゃないか。

 まぁ、関係は良さそうだからいいけどさ。

 今度は迂闊に奴隷解放しないでくれよ。

 どうでもいいが、あの時貸した金貨は返してくれないのだろうか? 今は俺の近くにエリザベートとヴィクトリアがいるし、単に俺に近寄り難いだけと思いたい。


 ホールの隅に居て腕を組んでいるのは中二病君じゃないか。

 相変わらず女だらけのパーティだな。

 あの時の迷宮で生き残ったメンバーでは無く、全く見たことのないメンバーだった。

 何があったのか聞きたくもないし、会ったところでまたランドとか痛いニックネームで呼ばれるのは勘弁してほしいので、気付かないふりをしておこうと思う。


 セナとラナの前でデカい態度で仁王立ちしてるのは空だ。

 相変わらずのボッチだった。

 いや、アニーが居るから一人では無いが、何だか哀れに思えてくる。

 パーティメンバーが要らないんじゃ無くて、仲間が欲しくても誰も仲間になってくれないのが見え見えだから、余計に哀れだった。


 その横で海とイケメンズが場所を取っていた。

 相変わらずリリィを中心に、海とイケメンズが取り囲むフォーメーションだった。このロリコン共め。

 普通ならこういう言葉は暴言になるが、こいつ等にはむしろ褒め言葉にしか聞こえないのだろう。真性の変態集団である。


 おや、そういえばナンパ君は居ないな……プロポーズした相手の前でセーラに求婚してたアイツはどうなったんだろうな?

 そういえば勇者を辞めるとかも言ってたし……あの看板娘に息の根を止められてないことを祈ろう。


 改めて見渡してみると他の冒険者パーティがまともに見えてきた。

 いや、きっとまともだし真面目なんだろう。

 それよりいつになったらエリザベートとヴィクトリアは、俺を解放してくれるのだろうか?

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