その計画は俺得過ぎる
いかにも異世界だ!って感じの草原を
俺は歩いていた。俺の年齢は17歳のハズだが、今の俺を見た者は全員信じないだろう。何故なら、俺の体が大体7歳くらいの少年だからだ。いや、別に俺が小さい訳じゃないよ?元々、背丈は180超えてたし、
高校生の中でも、大きい方だよ?
でも何故こんなに小さいか。
それは、この世界に転移したとき、
アホ神の魔法が失敗したからだと俺は考えている。というか、それ以外あり得ない。
「マズい」
俺が7歳の少年という事は、つまり働けない可能性もあるという事だ。
15歳以下は働けないようなルールが有れば、俺は仕事がない。収入がないと生きていけない。一言で言うとマズい。
と、ここでついに村が見えてきた。
あれこれ動きまわって30分でようやく
村が見つかった。
村に着いたら、村の人に俺の年齢で働けるかと、とりあえずの食料を買おう。
料理する場所はないから、弁当とかが
売っていて欲しい。そんな呑気ない事を考えていた俺だったが、次の瞬間、
そんな弁当の話はどうでも良くなった。
何故なら、その時俺はとんでもないものを見たからだ。
「あれは……ゴブリンか?」
いや、にしては、デカすぎる!
慎重は170センチほどあるゴブリンなんているのか?そして何より驚かされたのは、
ゴブリンが銀でできた剣を持ち、鉄の盾を構え、さらには体が鋼の鎧に
包まれている事だ。
ゴブリンといえば、ほぼ裸で、こんぼうや
人盾を使ってくるイメージだった。
正直、平和な世界とは思えないんだけど
この世界。そりゃそうか超強そうなゴブリンが村のすぐそばにいる世界が平和な訳がない
だが村人達はゴブリンの事など得に気にしていない様子だ。危ないとは思わないのか?
まさか村人全員チート級?
とりあえず俺は近くにいる村人に
ゴブリンの動きを警戒しつつ、話しかけた。
「あの、村のすぐそばにゴブリンがいるんですけど、あれ危なくないんですか?」
っていうか、どう考えても危ないよな。
やっぱ、村人全員チート級とかそんな感じ?
しかし、村人は、何を言っているんだ?
とでも言うように、俺に衝撃な事を言う。
「何を言っているんですか?ゴブリンが
危ない訳ないじゃないですか?」
「ははっ、ですよね。まったく危なくないですよね〜………ほんとに?」
「あたり前ですよ。だってああのゴブリンは魔王様から頂いたこの村の兵士ですよ?」
「あ、なるほどそう言う感じ!わかってましたよ、もちろん。」
マジか。この村、魔王と手を組んでやがるのか。でも、アホ神の世界にいる冥王とは違う訳なんだから、もしかしたらいい魔王様なのかもしれないよな。いや、悪い奴かもしれんけど。
「あの、魔王様っていい方だと思います?」
「あたり前ですよ。我々人間をエルフ達から、守ってくれたのですから」
なるほど、この世界では、人々の敵は
魔王じゃなくて、エルフって感じか。
やっぱり魔王様いい人なのかな?
その後、その村人によって、俺は村を案内されることになった。
村には天使が祀られた教会や宿屋、ギルドまでもがあった。ギルドの中に入って依頼書をみたが、エルフの討伐依頼書ばかりで
少なくとも、魔物の討伐依頼は一つもなかった。村に住む村人にも聞いたが、魔物を恐れる者や、嫌う者は一人もいなかった。
俺は案内してくれた村人に礼を言った後、
案内された施設の中にあった防具屋に
向かった。
俺の予想が正しければ防具屋にはあれがないハズだ。
この村には防具屋と武器屋が一つずつある。品揃えは武器屋は基本、剣や槍
防具屋には盾や鎧。あと、共通してあるのが弓矢だ。エルフと戦うのに、欠かせないからだろう。近くで見ると、全ての矢に毒が塗ってあった。どの弓矢にも毒を塗ると対策されやすいと思うが、まぁそれはいい。それより俺には今一つ不可解なことがある。
「店員さん、この毒は何処から頂いたものですか?」
「え?ああ、それは魔王様が私たちのために無料で配布してくれた、対エルフ用の
毒だよ。今でも役所でもらえるよ。」
「あ、そうですか。魔王様いい人ですね。」
「本当に。彼のおかげですよ、村がここまで発展したのも。」
「そうなんですか?よければ詳しく話してくださいよ。」
武器屋の店長がこの村は昔、天使に統括されていたことと、エルフに村が襲われた時、魔王軍が助けてくれたことなど、
この村の出来事を教えてくれた。
俺が興味を持ったのは、エルフの中にも
魔王に協力的な者がいる事と、天使や女神は魔王と協力関係にあると言う事だ。あのアホ神の姉は魔王と協力関係にあり、
アホ神はまた別の世界の魔王と対立していると言うことだ。
店長の話を聞き終えた俺は宿屋へ向かった。確かここの店長はこの村の中にいる唯一魔族だったハズだ。俺は宿屋の扉を開ける。
「どうでしたか、この村は?」
入ってすぐ店員に話しかけられた
「すごく良かったです。魔王様に会ってみたい気になりました。」
店員と近くにいた店長はクスッと笑うと、
「それはできませんが、魔王様の片腕と呼ばれる方なら会えるかもしれませんよ?」
「えっ、マジですか!何処に行けば会えちゃえますかねー?」
「この村の役所です。明日、魔王様の片腕の一人がこの村にやってくるんです。運が良ければ会えるかもしれませんよ?」
「マジかよ。早く明日に向けて寝よ!」
「あ、部屋は2回ですので。あと明日6時に朝食をお持ちいたしますから、それまでは部屋にいてくださいね。」
その後俺は十分も立たない内に寝てしまっていたのだった。
役所にて、
「ユーニア、このところの村人の様子はどうなのかしら?怪しい奴はいない?」
「はい。おかしな行動をとる者は一人もいません。あ、将軍。明日将軍に会いたい
と言う者がいますがどうされますか?」
「あら?それはどんな人かしら?」
「旅人のようです。村の者が一通り村を案内しているのでもうすでに術にかかっていると思います。近くで確認していましたが、村の者を疑う様子もありませんでした。」
「そう。私一人なら、楽しくお話しするのだけれど、レーベルトもいるからねー。細かいし、雰囲気怖いし」
「ですがレーベルト将軍と言えば片腕の中でもトップの実力を持っているではありませんか」
「強さなんて関係ないの。性格が大切なのよ。あと、そろそろ次の実験に移行するようだから、あなたもそろそろ本部に戻りなさいね。」
「はい、わかりました。明日の事は?」
「朝8時に役所に来るように言っといて。」
「わかりました。」
店長が役所から出て行く。残ったユーニアは、独り言のように
「この計画が成功すれば私の地位もフッフ。にしても私ってほんと天才よね。」
ユーニアは役所の奥へと消えて行った。
これが朝4時の話である。
そして、同時刻。
俺は武器屋の屋根の上からこの村そして役所を見つめていた。