クラゲ
これが最後のデートになると
心のどこかで分かっていた。
あなたが見ているものは、
これから先の未来で、
私が見ているのは、
目の前のクラゲと今までのこと。
あなたは、
半歩先へ。一歩先へ。
私は動くことも出来ず、眼前の青い光を見つめ
奥歯を噛みしめる。
泣くな。泣いたりするものか。
それでも青い、青い光とゆれるクラゲが目の奥に沁む。
横目でちらりとあなたを盗み見る。
あなたは、
遠くを、どこか遠くを見ている。
今晩、あなたは私を抱いたりしないだろう。
もう、二度と触れたりしないだろう。
悔しさだとか、悲しさだとか、
そんなものでは決してなく、
何かが終わる、という感情だけが
荒々しい風のように私の心に吹き荒れる。
吹き荒れる心の中の風を、
クラゲが漂い続ける、恋の終わり。