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宿の説明と部屋への案内



「それでは、お荷物は我々がお持ちいたします…」

「えっと……」


 あっけに取られている俺達に、執事さんだけでなくメイドさん達も進み出て、持っていた荷物を持ってくれる。

 王城でもこんな歓迎されないんだけど……と思ったけど、初めて行った時は勲章授与前だし、今はもう慣れているからか。

 専属のお世話役として、ヒルダさんもいるから大差はないのかもしれない。


「リク様、私達も含めこの宿と、ルーゼンライハ侯爵様がいらっしゃる宿周辺の警備はお任せください。何人たりとも、不届きな者を近付ける事はございません」

「ございません~」

「は、はい。お願いします……?」

「警備までしてくれるのだな」

「まぁ、貴族様が泊まると考えると、周辺警護は重要かしらね?」

「では、お部屋をご案内いたします」


 アマリーラさんとリネルトさんから、警護をすると言われ、あまりの歓迎っぷりに思考が上手く働かないままお願いする。

 ソフィーとモニカさんが話しているのを聞きながら、メイドさんや執事さんに案内されて部屋へと向かう。

 部屋までの間、簡単に宿内の説明も受けた。


 一階部分は、お客さんを迎え入れる場所であり、厨房があったり使用人さん達が待機しているらしい。

 洗濯場などもあって、洗ってもらいたい服などがあれば、言えば洗ってくれるのだとか……通常の宿では自分で洗うのになぁ。

 二階と三階は客室。

 二階は主に、宿に泊まる人が連れてきた使用人さん達……今回は侯爵家の執事さんとかアマリーラさんとかが泊まる場所で、少し狭めの部屋が幾つかあるらしい。


 狭めと言っても、浸かれるお風呂はないけど、湯あみ場があったりはするらしく、そこらの高級宿くらいの部屋だとか。

 三階はお客様専用の階になり、大きな部屋が複数。

 個室ではあるけど、要望で複数が同じ部屋に泊まれるようにもなっているらしい……ベッドが複数あったりとかだね。

 あと、浴室も脱衣場と洗い場、それに浴槽も完備しており、お湯を溜めるよう頼めば浸かれるとか。


 今回はそれぞれ一室が用意されているようだけど、ユノあたりは誰かの部屋で一緒に寝ると思われる。

 四階は貴族などが泊まった際に、執務ができるように広い執務室や会議室。

 他にも大浴場や談話室、宿泊客が集まる食堂などが備えられているとか。

 大浴場はさすがに、王城程の広さはないし男女別にもなってないけど、お湯を管理している人がいるらしく、いつでも入れるらしい……至れり尽くせりだ。


「大浴場を上の階にすると、大変じゃないですか?」

「それをしてこそ、贅を尽くしていると言う方もいらっしゃいますので。それに、大浴場では窓が付いており、センテの街を見渡せるのです」

「成る程……」


 案内してくれる執事さんに、宿内の説明を聞きながらこちらからも質問する。

 お湯は水を溜めた物に薪などで温める以外に、お湯を運んだり魔法具で温めて溜めておくんだけど(王城では魔法具らしい)、高い階にあればあるほど、管理が大変になる……排水とかもあるし。

 それでも、泊まる人を満足させるために、四階に作っているのは窓から街を見渡すためだとか。

 日本の高層ビルを知っていると、四階ではあまり高さを感じられないんだけど、大体二階建てが精々の建物が多い街では、四階まで行けば邪魔になる物が少なくて、広く見渡せるんだろう。


 しかも、一階一階の天井が高いから、一般的な家を四階建てにするより、高い位置になりそうだからね。

 そこまで高ければ、窓の外からこちらを覗く事も難しいだろうし……とにかく宿は働く人も含めて、宿泊客に満足してもらえるよう、全力なんだと思っておけば良さそうだ。


「リク様のお部屋は、こちらになります。狭くて申し訳ありませんが……」

「いえいえ、狭いなんてそんな!」

「へぇ~、結構な部屋なのだわ」

「これくらいなら走れるの!」


 案内された部屋に入ると、王城に用意された部屋より少し小さいくらいで、十分過ぎる程の広さがある部屋だった。

 部屋の中には、大人が二、三人は余裕で寝られる程の大きなベッド、ソファーにテーブル、収納の他に机と椅子もある。

 頭にくっ付いているエルサはともかく、ユノは自分の部屋を宛がわれているのに、こちらについて来ているのか……広くとも、走り回るのは行儀が悪いから、部屋の中では控えような?


「もし何かございましたら、こちらを。それではリク様、ごゆるりとお過ごしくださいませ」

「はい、ありがとうございます」

「ありがとうなのー」


 収納に荷物をしまい、机にベルを置いて退室する執事さん。

 ベルで呼ぶのは、クレメン子爵邸に行った時と同じだね……王城にもあるけど、常にヒルダさんがいてくれるし夜は隣の部屋にいるから、呼びかけるだけでいいし、使っていない。


「はぁ~、まさか用意された宿がこんなに大きいとは……」


 執事さんを見送って、ベッドにドサッと腰かけて息を吐く。

 シュットラウルさんが用意してくれると言ったから、厚意に甘えて任せたけど……ヘルサルとかでよく泊まる、冒険者御用達とかそういう宿を想像していた。

 やっぱり、権力者というか貴族の威光ってすごいんだなぁ、財力かもしれないけど。


「リクはもう慣れているのだわ。王城でも似たようなものなのだわ」

「そうだけど……初めて来る場所だし、さすがにまだ慣れているとは言えないよ。まぁ、王城で過ごしているのとあまり変わらない気分でいれば、いいのかも?」

「リクー、鬼ごっこするのー。ここなら人が少なくて、邪魔にならないの」

「こらこら、さすがにそんな事したら怒られるから」


 ユノが手を挙げて遊びの提案をするけど、さすがに鬼ごっこなんて走り回る前提の遊びは、怒られてしまいそうだ。

 人が少ないというのは、王城みたいに兵士さん達が行き交っていないため、走ってもだれかとぶつかる心配がないからだろう。

 だからといって、高級宿……豪奢な屋敷で走り回って鬼ごっことか、怒られるだろうし呆れられそうだ。


「そんな事より、お腹が空いたのだわ!」

「あ、私もお腹空いたー」

「そういえば、そろそろ夕食の時間か。ユノは、遊びに食事にと忙しいなぁ。でも、食事はどうするんだろう?」


 宿に入る頃には、ほとんど日も沈んでいた。

 エルサのお腹時計は夕食の時間らしいけど、どうしたらいいのかわからず首を傾げる。

 さすがに、ここまで来て食事は自由に外へ出て食べて下さい……というわけもないと思う。


「さっき案内してもらったばかりだけど、呼んで聞いてみようか」

「私が鳴らすのー」

「はいはい、じゃあ頼んだよ」


 ここまで案内してもらったばかりで、執事さんを呼ぶのは申し訳ないけど、わからない事があるのだから聞いておいた方がいい。

 意外と、待っていたら呼びに来るとかかもしれないけど。

 ともかく、執事さんなりメイドさんなりを呼ぼうと思い、机に置かれたベルを使おうとしたら、ユノがやると主張したので任せる事にした。


「……ってユノ、鳴らし過ぎだから!」

「うるさいのだわー!」

「あはははは!」


 ベルは手で振るハンドベルだから、軽く振って鳴らせばいいのに、ユノは振りあげて思いっきりブンブン振って鳴らす。

 大きな音が鳴り響き、さすがにうるさくてエルサが止めるように叫ぶ……ユノは楽しそうに笑っているだけだけど――。




人を呼ぶハンドベルを思いっきり振り回して鳴らすのは迷惑なので、やめましょう。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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