仲間たちの模擬戦
「他にもね……」
「ふむふむ……成る程……」
その後、しばらくの間時間を忘れて、ララさんによる魔物の皮や素材についての話を聞く。
一般的な事の他に、あまり知られていない魔物の素材の使い道なども聞いた。
知られていない理由は、その魔物が少ない、加工が難し過ぎる、別の物で代用できる、など色んな理由があるみたいだけど。
剣などの武器と、鎧などの防具では、素材も加工の仕方も違う……というのも聞いた。
魔法具にしやすい武器素材なんかもあるようだ。
防具に関しては、一部の魔法に対して一切受け付けない素材などもあるとか……例えば、ワイバーンの素材は火に強いけど、風を乱す性質を持っているため、風魔法をほとんど受け付けない物とか。
他にも、熱を持っているため氷の魔法が効きにくい物など……。
変わった物になると、水を弾いて川に全身が浸かった後でも濡れない物などもあるらしい……大体は、雨の日に服の上に着て濡れないようにとからしいけど、レインコートかな?
それは素材が希少で、特殊な加工が必要なため一般的な市場にはほぼ出て来ないとも言っていたから、この先見る事はなさそうだけど。
「ありがとうございました、ララさん。勉強になりました!」
「いいのよ、こういう話は楽しいからね。鞄を作るのに、何か良さそうな素材を見つけたら、持って来てくれれば鞄とかに加工するわよ。それに、鍛冶師とかも紹介できるからね」
「はい、その時はよろしくお願いします」
冒険者としての知識で言えば、ギルドからの依頼でこの素材を取って来てとかって言われるくらいで、得られる機会の少ない知識で面白かった。
まぁ、必要かどうかもよくわからないけど……知らない事を知れるのは面白い事でもあるからね。
鞄は今使っているのがあるから、特に必要ではないかもしれないけど、武具に関してはもしかしたらお世話になるかもしれないから、紹介してくれるとまで言ってくれるのはありがたい。
物によっては、ララさん自身が加工したりするのかもしれないけど。
ともあれ、暇つぶしのつもりだけだったけど、思いもよらぬ情報を得る事ができた。
ララさんにお礼を言って、お店を後にした頃には日が沈んで暗くなっていたけど、有意義な時間だったと思う。
「退屈だったのだわ……」
「まぁ、エルサは武具とか魔物の素材とか言われても、関係ないからね」
俺とは正反対の感想を漏らしたエルサに苦笑しながら、お腹が空いたと騒ぎださないうちに、王城へと戻った――。
――さらにそれから二日後、昼食後の訓練場にてモニカさん達の練習の成果を見る。
完成というわけではないけど、とりあえずの成果としてだね。
「すぅ……はぁ……ふっ!」
「そうなの、手から柄、柄から鍔、そして刃に魔力を這わしていくの!」
「ふむ、ソフィー嬢ちゃんは筋が良いのかの。魔力を這わせるのに少しかかってしまうが、十分な威力じゃ」
模擬戦の相手になってもらっている兵士さんに向かい、魔力を這わせた木剣を振るうソフィー。
指導官として、ユノからアドバイスというか檄が飛んでいるのを、エアラハールさんと眺める。
「そうみたいですね。魔法具を使っていたのも、慣れるのが早かったのかもしれません。とは言っても……」
「うむ、木剣やそこらの剣なら問題はなさそうじゃが……自分の剣でできないのではのう」
「魔法具に魔力を込めるのとは違うの! 剣の外側から魔力を這わせるの!」
「むぅ……」
ソフィーは、兵士さんも含めて魔法を使えない人達の中では、上達が早い方だ。
ただしそれは、日頃使っている氷の魔法を発動できる、魔法具でもある剣でなければ、という条件付きだ。
今も、木剣からいつもの剣に持ち替えた途端、次善の一手ができなくなり、代わりに氷の魔法が発動してしまっていた。
魔力を内部に込めれば魔法具が発動、外側に這わせれば次善の一手となるみたいだけど、その切り替えというか、放出先の選択が難しいみたい。
「次、モニカなの!」
「えぇ。すぅ……せい!」
「駄目なの、穂先に魔力が行き渡っていないの!」
ソフィーの模擬戦が終わり、次は刃引きした槍を持つモニカさんが、兵士さんへ向かって槍を繰り出す。
モニカさんは魔法が使えるため、魔力の操作はそれなりにできるようになったんだけど、長い槍の穂先まで魔力を這わせるのに苦労しているようだ。
「モニカ嬢ちゃんは、槍というのが問題じゃの」
「槍は剣より長いですからね。やっぱり、手元から遠くに魔力を這わせるのって、難しいんでしょう」
「そうじゃの。リクのように、無節操に魔力を放出させれば簡単なのじゃが、威力の調節だけでなく、自分の魔力が枯渇してしまわないように調整する必要があるからの。最小限の魔力を這わせるというのは、神経も使って難しいのじゃろう」
一応、時間をかければ穂先まで魔力を這わせられるんだけど、戦闘中に悠長にそんな事をしている時間があるかどうかわからない。
ソフィー程とは言わないけど、それに近い……数秒で穂先まで魔力を這わせるのを目指しているため、模擬戦で体を動かしながら時間の短縮を主に練習している。
モニカさんも自前の槍は魔法具だけど、自分で魔法を使える感覚があるおかげなのか、ソフィーのように間違って魔法を発動をさせたりという事はない。
まぁ、次善の一手、魔法具発動、自分での魔法発動……それに加えて槍のリーチを生かす戦いと、考える事ややる事は多いみたいで大変そうだけど。
「それじゃ最後に、フィネ!」
「はっ! すぅ……はぁ……ふん!」
「そうなの、フィネは魔力を這わせる速度も、威力の調整も上手いの!」
ある程度兵士さんと打ち合い、モニカさんの模擬戦が終わる。
次はフィネさんが斧を持ち、次善の一手を使って兵士さんへ向かって振るう。
「フィネさんは、やっぱり一番上手くできているみたいですね」
「まぁ、ユノ嬢ちゃんと一緒に、次善の一手を考えだしたからのう。それに、それなりに戦いの勘も良さそうじゃ。斧という、槍どころか剣よりも短い武器なのも利点なのじゃろう」
「そうですね。一番練習もしているので、感覚も掴んでいるんだと思います」
フィネさんは魔力を這わせるのも早く、最小限の威力から最大限の威力の切り替えなどもこなしていて、次善の一手を練習している人達の中で一番使いこなしている様子。
技を編み出す時に一緒に考えたという事以外にも、騎士としての訓練などもしていて戦闘経験が豊富だからなのもありそうだ。
あと、そもそもいつも使っている武器が、魔法具ではないうえに投げられる斧という、短めの武器なのもやりやすくしている部分かな。
ただまぁ、手から離れたら魔力が離れてしまうため、投げずに振る時にしか使えないみたいで、今は投げても少しだけ維持できて、敵に当たるまでは威力を保つようにできないかと、試行錯誤中らしいけど。
「追加で、エアラハールお爺ちゃん!」
「ひょ!? ワシか、ユノ嬢ちゃん!?」
「もちろんなの。手本を見せるつもりでやるの!」
「むぅ……傍観しているつもりじゃったが、ユノ嬢ちゃんから言われたら断れんわい。まだまだ未完成な兵士もおるからのう……仕方ないの」
エアラハールさんは皆の見本として、模擬戦に参加させられるようです。
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