他国の人間とエルフの関係
人間やエルフなどの存在と、魔物との関係を知って納得していると、アルネが苦しそうな声を漏らした。
その事から、そろそろ魔力の限界でアルセイス様が顕現できる限界が近いのだろう。
ユノが無茶を言っているけど、アルセイス様がやんわりと注意したように、魔力量をその場その場で増やしたりなんてできない。
アルセイス様はエルフの魔力で顕現するから、俺の魔力は使えないだろうしなぁ……。
「とにかくー、私が調べた情報などをかいつまんで教えるわねー。わからない部分は、後でユノ様に聞いてちょうだいー」
「わかりました」
細かく説明する時間もないため、かいつまんで説明すると俺やアルネが理解できない事もあるかもしれないけど、それはユノから後でゆっくり解説してもらうとして、話の先を急ぐ。
一応破壊神の事とかは聞いたから、ある程度は理解できると思っていたけど、ユノとアルセイス様の間で展開される話はほとんどわからなかった……。
だって、途中で理解できない言語が飛び交っていたしなぁ……まぁ、ユノは理解できているようだから、後でじっくり解説してもらおう――。
「はぁ……ふぅ……」
「大丈夫、アルネ?」
「なんとかな……しかし、その話は本当なのです……いや、本当なのか?」
「アルセイスがそう言っていたの」
情報をユノへと伝え終え、アルネに無理をさせ過ぎないように体を霧散させるように消えたアルセイス様。
それと同時に、広場になっていた場所が一瞬で元の木々が生い茂る森に戻ったので、やっぱりあの場所は特別な空間になっていたんだろう。
ちなみに、干渉力を使うらしいのでエルフの魔力があったとしても、次に顕現できるのは相当先になるだろうとの事だ。
エルフを集めて魔力を補充しても、易々と顕現できないという事だろう。
ともあれ、息を切らしながらゆっくり集落へと向かいながら、ユノから話を聞く。
それによると、アルセイス様は俺達がエルフの集落を訪れている時、別のエルフがいる場所を見ていたらしい……一度にすべてを見れるわけじゃないのは、これも干渉力が関係しているとかなんとか。
そこでは、アテトリア王国と違って人間と協力するエルフが見れたらしいんだけど、どうも何か様子がおかしいと感じたアルセイス様は、じっくり観察する事にしたそうだ。
観察を続けているうちに、エルフが創ったはずの神であるアルセイス様と繋がっていない事に気付く。
どうしてかと調べているうちに、破壊神が動き出している事や干渉している痕跡を発見したのだとか……破壊神が、アルセイス様と観察していたエルフ達との繋がりを破壊したらしい。
あれよあれよといううちに、繋がりが絶たれたエルフ達はこれまでの考えを変えていき、人間と交わった挙句に、様々な知識を授けていた。
人間との共存は問題ではないけど、蓄積されていた知識が悪用され始めたらしい。
そしてそのエルフの知識と人間の知恵が交わり、一部の者達が他者を利用し始め、それが拡大している様子が見られたとの事。
人間とエルフの方向性にも、破壊神がなんらかの干渉をしていると思われるらしいけど、そこは詳しくわからないらしい。
さらに、悪用を始めた者達は範囲を広げ、自分達が済んでいる場所以外にも手を伸ばし始めた……実はアルセイス様がみていない間に、アテトリア王国にあるエルフの集落、つまりここが魔物に襲われたのもそのためだとか。
悪用し始めた技術を試していたとかなんとか……いくつかの試験を行い、いくつかの方向性から絞っている段階のように見えたようだ。
「つまり、技術の悪用を始めた人間とエルフは、その方向性を破壊神に操られている可能性があるってわけか」
「そうなの。破壊神は姑息だから、自由に動けたらそれくらいの扇動はするの。本当は、私が抑えておかなきゃいけなかったんだけど……」
「ここにいて、ほとんど人間になっているからできない……と」
「うん。でも、私がここにいなくても、定期的に力が強まるから、どのみち押さえ続ける事はできないの」
破壊神に直接対抗できるのは創造神であるユノだけ。
だから本来は、余計な干渉をしないようユノが抑えているらしいけど、今は神様の力をほとんど失って人間としてここにいるから、それができなくなっていると。
とはいえ、押さえていてもいつかは動き始めるもので、ある程度干渉力を使った後はまたユノに抑えられる……という繰り返しだったらしい。
……この世界で、大きな戦争とか魔物の氾濫だとか、歴史が変わる大きな出来事が発生した際は、破壊神が干渉している事が多いのだそうだ。
うーん、そういった考えや性質の神だからだろうけど、平穏に過ごしたい人間からすると迷惑な神様だなぁ。
「しかし、リク、ユノ。そのエルフと人間が協力というのは……」
「うん、俺も考えていたけど、最近の出来事や推測に当てはまる事が多いよね。それこそ、この国で試験をしているとことか」
「神の干渉力は、どう使うかは神次第だけど、使い方によっては広範囲にも影響させられるの。つまり……」
「アルセイス様の言っていた場所は、帝国かもしれないって事か……」
「リクが持ち帰ってきた、魔物に関する研究資料は間違いなくエルフの知識が入っていた。他の国でという可能性も捨てきれないが、近くでエルフと人間が協力を始めたと考えると、それしか考えられなくなる」
「そうだね」
アルセイス様は、どこのエルフがとは言わなかった。
それは神様達にとって国の垣根とかは関係なく、特に興味を引かない事柄だかららしいけど、今いるアテトリア王国にあるエルフの集落から、そこまで離れていないという事は考えられるのは帝国になる……らしい。
付近の国々には他にもエルフがいてもおかしくないだろうけど、これまでの事を総合して考えると、帝国しか考えられない。
モリーツさんの研究資料を見たアルネは、エルフの関与を確信しているし、ツヴァイとかの関係などを考えると帝国方面なのは間違いない……国が関与している証拠はないけど、少なくとも帝国に組織があるはずだ。
「広い影響を与えるためには、人を集めて組織を作るより最初から人が多くいる国を利用した方が、手っ取り早いよね?」
「そうだな。確定的な証拠とは言えないが、帝国そのものが関係していると断言できるだろう」
「干渉力に限りがある以上、少ない干渉で大きな成果を求めるの。だから国そのものを巻き込むように仕組んでいると思うの」
新しい組織を作るよう働きかけるよりは、既にある組織……国を利用した方が広く影響を及ぼせるという考えだ。
「エルフの技術かぁ……」
「おそらく、破壊神からの入れ知恵もあると思うの。だから、単純にエルフの技術だけと考えない方がいいの」
「エルフの技術に人間の応用力、それに神による知恵か……厄介だな」
こちらでは、ようやくエルフと人間が共同で研究を始めたくらいだし、まだクォンツァイタの事くらいしか取り組んでいないから、先んじて研究している帝国の技術が上をいっているのは間違いない。
さらに、破壊神の知恵も混ざっているというのなら、研究開発の速度も早いんだろう。
単一種族での研究よりも、他種族の知識や知恵が入った方が研究の速度は早そうです。
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