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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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導かれるリク達



「なんだか不思議なの。前夜に外に出た時は、いっぱいエルフがいたの」

「あの時は、魔物が来ていたからそれと戦うためだろうね」

「魔物がいつ来るかわからない状態では、さすがに集落全体が寝静まる事はないさ。それに前回は魔物が来たとの報せを受けてから外に出たからな。その時には寝ていたエルフ達も起き出していたはずだ」


 アルネが起きたからか、夜の散歩みないた状況が楽しいのか、上機嫌で言うユノ。

 前回は魔物が来ていて、多くのエルフが起きていて当然の状況だったからね……その時と比べると、今は耳が痛くなる暗いの静寂だけど、ユノにとってはそれも楽しい様子だ。

 確かに、ちょっとした冒険感というか、非日常的な気分で楽しいのかもなぁ……大分慣れたけど、俺にとってはこの世界での日常がこれまでの常識を覆すような、非日常を感じるけど。


「でもユノ、先頭を歩いているけどそのアルセイス……様? のいる所へは迷わず行けるのか?」


 エルフの集落は計画的に家々の建設をしなかったため、入り組んでいる……特に俺達が寝泊まりするよう、宛がわれている石造りの家周辺は特に入り組んでいる場所にある。

 何度かアルネやフィリーナも含めて道案内をされたけど、俺はいまだに覚えていないしなぁ。

 それなのにユノは、自信満々に俺達を先導するように先を歩いていて、上機嫌なのはいいけどもし適当に歩いているんだったら、迷子になりかねないからね。


「大丈夫なの。アルセイスが導いてくれているの」

「……俺には何もわからないけど、そうなのか」

「ふむ……何やら包まれるような気配? 魔力? よくわからないが、今まで感じた事のない何かを感じるが、それがもしかしてアルセイス様と関係しているのか? 確かに、ユノが進む方向に続いている気がするな……」

「アルネは感じられるの? 俺はさっぱりなんだけど……」

「アルネはエルフだからなの。エルフはアルセイスとまだ繋がっているの。だからほんの少し感じる事ができるの。ただ、小さな感覚だから、多分起きてアルセイスに意識が向いていないと感じられないくらいなはずなの」


 道案内は、ユノではなくアルセイス様がしてくれているようで、迷子になる心配はないそうだ。

 しかし、俺には感じられない気配を、ユノやエルサが感じられるのはともかく、アルネが感じられるとは……と思っていると、エルフだかららしい。

 人間より魔力とかに対して、鋭敏な感覚があるのかな? と思ったらアルセイス様とエルフの関係性によるものだったらしい、なるほどなー。


「そうなのか……だがユノ、いやユノ様と言った方がいいですか……」

「今まで通りでいいの。私はリクの妹なのー」

「……そ、そうか、わかった。それじゃユノ、エルフはアルセイス様が創り出したという伝承があるから、繋がっているというのはわかるが……まだ、というのは?」


 アルネはユノが元々神様だったと知って、今まで通り接していいのか、丁寧に接した方がいいのか戸惑っている様子だったけど、ユノは今まで通りを希望した。

 まぁ、敬ったり丁寧に接して欲しいなら、これまでの間に何か文句言っていただろうし、ユノはそういうのを気にする性格じゃないよね。

 ともかく、俺も気になったんけど「まだ」アルセイス様とエルフが繋がっている、というのはなんなんだろうか? いずれ時間が経てば、その繋がりが切れてしまうという事なのかな?


「エルフだって、人間と同じように男女で子を成すの。そうして段々と、子々孫々と繁栄して行けば、アルセイスとの繋がりはいずれ希薄になって、途切れるの。フィリーナのようなエルフは、多分特別で強く繋がるはずだけどなの」

「そうなのか……最初のエルフがアルセイス様に創り出されたとしても、そのエルフ同士で子を成していくごとに……か……」

「フィリーナの目は、確かアルセイス様の加護って言っていたよね? だから、他のエルフとは違って繋がりが濃いって事か」

「そうなの」


 例えばエルフの始祖……祖先がアルセイス様だとしても、その血は薄れていくとか、そんなイメージでいいんだろう。

 フィリーナのように特別な目を持っていたり、加護を受けたとされるエルフは、先祖返りとかそんな感じで特別に祖先の血が濃くなっているから、繋がりも濃くなっている、と考えるとわかりやすいかもね。


「という事は、いずれ我々はアルセイス様との繋がりを失ってしまうのか……」

「エルフは長寿だから、それこそ何百年とか何千年も後の事なの。今心配する必要はないの。それに、神が創り出したと言っても、いずれその手を離れて生きていくべきなの。アルセイスもそれは当然わかっているから、気にしないでいいの」


 神様が過保護に干渉するのではなく、いずれはその手を離れて自由に……と言う事かな?

 放任主義というか、若干無責任さも感じるけど、神様には神様なりの理や考えがあるんだろうね。

 ……目の前で楽しそうにキョロキョロしながら、俺達をアルセイス様の所へ案内しているユノからは、そんな深い考えとかは感じられないけど。

 というか、こんなに真っ暗で月明かりくらいしかないのに、キョロキョロして周辺が見えるのかな? 俺なんて、建物にぶつかったりしないようにするので精一杯なのに……。


「こっちなの!」

「森の中か……まぁ、森の神と言われているから、当然かな」

「アルセイス様は、全ての森を司ると言われている。森の外にいる事はないだろう」

「んー、アルセイス、結構森の外にも遊びに行ってるよ? 気配を出さないようにしているから、人間だけでなくエルフとか、それこそフィリーナのように特別な目を持っていても、わからないの」

「そ、そうなのか……」


 建物の間を抜けて、ユノに先導されて森の中へ入る。

 森の神なのだから、森にいるのも当然だろうとアルネと一緒に納得していたら、ユノから驚きの情報が……。

 ユノもそうだけど、神様達って暇なのかな? なんて考えるのは失礼だったり不敬だったりするのかもしれないけど。

 ともかく、俺の隣を歩くアルネの中で、アルセイス様に対する厳粛なイメージのようなものが崩れていっているような気がした。


「この先は……なるほど、そういう事か」

「アルネは、思い当たる事があるの?」


 なんとかイメージの再構築をしているアルネと共に、ユノの案内で森の中を進んでいる俺達。

 ツリーハウスの間を抜け、集落の範囲からも離れて今は、以前魔物が巣くっていた洞窟近くまで来ている。

 そんな中、何処へ向かうか見当が付いたらしいアルネが呟く。


「エルサ様が魔物を駆逐した洞窟があるだろう? その近く、集落とは反対側にアルセイス様を祀る祭壇があるんだ。そこで、エルフ達は定期的に祭祀を行ったりもしているぞ」

「へぇ~、そうなんだ。そう言えば前回は洞窟の向こう側に入っていないから、その祭壇も見ていなかったね……」

「……祭壇じゃないの。そこにはアルセイスはいないの」

「えぇ!?」


 洞窟の向こう側に、祭壇があって定期的にお祭りを催しているらしい……要は、神社的なものがあって、アルセイス様をお祀りしているって事か――。




エルフの作った祭壇なので、さすがに鳥居があったりはしないはず……?


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

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