色んな効果のある商品
「……だそうだ、イルミナ」
「は、はぁ……つまり?」
「アルネはエルフとして魔法に詳しいのは当然だけど、この店の物に文句を言ったりはしないって事ですよ」
「そ、そうですか……良かった……はぁ……」
アルネの言葉を受けて、イルミナさんへ声をかけるソフィー。
イルミナさんの方はすぐに思考が追いつかなかったらしく、生返事をしながら首を傾げたので、改めて俺がアルネは文句を言わないと説明。
イルミナさんはホッと息を吐いて安心したようだ――。
「ふぅむ……成る程な……」
「どうアルネ、何か面白い物はあった?」
広めの店内に、所狭しと武具が並べられているけど、それなりにスペースはあるのでそれぞれで適当に見て回っている中、アルネが一つの盾を見て唸っているので声をかけてみた。
イルミナさんは、ソフィーと一緒に武器コーナーを見て説明しながら売り込んでいる。
アルネから何も言われないとわかって安心してすぐ、ユノが一緒に来ていないので残念がっていたけど、それを引きずらない商売人という事だろう。
まぁ、時折もう少し実用性のある武具を仕入れた方が……と首を傾げてしまう物もあるけど。
「面白い、と言えるかわからないが……興味深い物はあるな。これなんて、魔力を与えると盾の表面から水が出て濡れる仕様のようだ」
「盾から水……使いどころが難しいというか、意味がよくわからない……」
「そうか? おそらくだが、これは盾の表面を濡らす事で、滑らせて攻撃を逸らそうと考えたんだろう。盾で防御する際、受け止めるよりも受け流す事が多いようだからな。もしかすると、本来は水ではなく滑りやすい液体を作り出して……と考えて作られていたのかもな」
「……成る程……その過程での失敗作とか、試験的に作った物かもしれないってわけだね」
盾で攻撃を受ける場合、真正面から受け止めるだけだったら、相手の圧力に押されてしまう場合があると、マックスさんに聞いた事がある。
場合によっては力任せに押し返す事もできるけど、一番有効なのは受け流して相手の体勢を崩して、という使い方だ……曲面の盾が多い理由とも教えられた。
アルネが持っている盾も曲面だけど、さらに受けた時に滑らせるようにと考えて……というわけだろう。
滑りやすい液体とかではなく、水になってしまったのは研究が足りなかったとか、まだ発展途中で試験で作ったからとかなのかもしれない。
俺もそうだけど、ソフィーとか他の人は単純に実戦で使えるかという視点で見るので、アルネの観点はちょっと面白い。
実用できるかどうかはまた別だけどね……。
「それじゃ……これはどういう考えで作られたんだろう?」
「ふむ……?」
試しにと、近くにあった金属の籠手を持ち上げ、アルネに見せる。
一応、商品には説明書きが木板に書かれているんだけど、それによるとこの籠手は、魔力を込めて発動すると破裂音がするらしい……注意として、耳の近くで使わないように、とあった。
破裂音……防犯用とかかな? でも、防犯ブザー的な使い方をするなら、籠手にする必要はないし……。
「そこまで大きな音ではないな……まぁ、確かに耳の近くで聞くのは危険なくらいだが……」
「そうだね。これくらいなら、少し離せばそこまでうるさいとは思えない……かな?」
渡した籠手を持ったアルネが、魔力を込めて籠手に備わっている魔法を発動してみる。
パンッ! という破裂音がしたは説明通りだけど、耳元で聞かなければそこまでうるさいという程ではない……静まり返った深夜とかなら響くかもしれないけど、あまり周囲に知らせる感じの大きさじゃないね。
うーん、防犯ブザー的な用途としても使えそうにないかな……あれって、大きな音で相手を怯ませる目的もあったりするし。
「……まぁ、予想でしかないが……おそらくこれは、本来もっと大きな音を発し、さらに指向性を持たせる事で対峙した相手を怯ませよう、と考えられているんじゃないか? 効果が低くて、怯むほどの音ではないし、指向性もほぼないようだが……」
「あー、成る程……指向性を持たせる事ができて、もっと大きな音ならびっくりするかもしれないね」
アルネの予想は、防犯用じゃなくてもっと攻撃的な用途だった。
聴覚が敏感な魔物もいるし、人間も急に大きな音がしたら体が緊張したりして、動きが鈍る事だってあるわけだから、それを狙った物なんだろう、多分。
籠手にする事で、指向性を持たせた時に相手へと音が向かいやすくするとか、そんな感じで考えて作られた物か……実際には、あまり大きな音を全方位に慣らすだけになっているけど。
「発展前というか、研究途中というか……失敗作とか試験的に作ったような物が多いんだね」
「まぁ、完成した物だと魔法具店が仕入れる事もあるから、易々と武具店が仕入れるのは難しいだろうな。できないわけじゃないが、狙った効果があって有効な物ならもっと高価になるしな」
「そうだね。ここにある物って、結構安いから……時折、よくわからないけど高い物もあったりするけど」
魔法具は基本的に高い……それは、需要よりも大量生産できないから、という理由だ。
まぁ、人間が作るのは難易度が高いという理由もある。
だからこそ、数が少ないながらも実用性のある効果が望める魔法具の武具はそれなりの値段になるんだけど、イルミナさんの店にある、用途不明の魔法武具はあまり高くない。
安売りのセールというわけでもなく、単純に効果を無視した武具としての値段と同等だ……今の籠手なんて、銀貨三枚と俺達全員の一食分よりも安い。
籠手だけなら、そんなものかと言うくらいの値段だけど、魔法が仕込まれている物と考えると格安だ。
大体、魔法が使えるように施したら、数倍から高い物では十倍くらいの値段になるからね。
「これは……効果のわりに高いな。金貨三枚……か」
「そうだね。えっと……『火が出ます。これでアナタも魔法使い! 外で焚き火をする際に重宝される事でしょう!』って書いてあるけど……」
「まぁ、間違ってはいないな。火をつけるくらいしか用途はないだろうが……」
アルネが手に取ったのは金属でできた肘当てで、値段は金貨三枚と書かれており、説明書きは読んだ通り。
試しにとアルネが魔力を込めると、確かにライターと言うよりガスバーナーに近いくらいの炎が出たんだけど……ただそれだけ。
確かに焚き火をする際に、火をつける事くらいは簡単にできそうではある……だけど、それを何故肘当てでやろうとしたのか……。
「しかも金属だからな……少し使っただけで結構熱くなるもんだ」
「んー、確かにそうだね。これ、身に着けた状態で長時間使ったら、使用者の肘が危険なんじゃない?」
炎の勢いはそれなりだから、無理矢理使おうとしたら鍔迫り合いの時とかに発動すれば、相手を驚かせたり、場合によっては火傷を負わせる事もできるかもしれない。
けど、肘当てその物が金属であり、そこから炎が噴き出すのだから当然肘当ても熱される……革製や布製だと燃えたりするから、そもそも作る事もできなかったんだろうけど、熱された金属をずっと肘に着けたままというのは、相手と同様にこちらも火傷を負ってしまうと思う――。
金属製品から火がそのまま出れば、その物も暑くなるのは当然ですよね。
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