全員への指導終了
「詳しい戦い方の助言はしないんですか、エアラハールさん?」
「ワシは斧は専門外じゃ。槍も本来はそうじゃが、知り合いが使っているのを何度も見ていたからの。それに、斧はその重さすら利点にするための武器でもある。ワシの剣とは対極的じゃ」
「それは確かに、そうですね」
剣は物にもよるけど、ショートソードのような小さめの剣の場合は、その鋭さで相手を斬る事を目的とした武器なのに対し、斧は重さで押し斬る武器。
それぞれ形や大きさによって、細かく違う事もあるだろうけど大まかにはそんな感じだ。
無駄な動きを削ぎ落し、速さも加えて最善の一手のような技を繰り出す剣とは扱い方が違うからね。
「ワシは正式にフィネ嬢ちゃんに技術の指導を請け負っていないしのう……小手先の技術なら多少は教えられるじゃろうが、今のフィネ嬢ちゃんには不要じゃろう?」
「はい。まずは言われた事をじっくりと考え、一度自分の戦闘方法を見直してみたいと思います」
おそらくフィネさんは、今の戦い方でほぼ完成されてしまった気がして、これ以上の向上が見込めないと考えていたのかもしれない。
もしかすると、俺に模擬戦をしたのも壁に当たっている状態だったからとか、一緒に行動していれば何かヒントを得られるかもという考えだったりしてね。
「うむ。ちょっとした技術程度なら、後で覚えてもいいじゃろう」
「ありがとうございます。……正直に話しますと、自分の限界を感じていたのです。おかげで、光明が見えました」
「ワシはもっともらしい事を言っただけじゃよ。それに、実際に自分を鍛えてどういう戦い方をするようになるかは、嬢ちゃん自身が決める事じゃ。殻を破るのは、容易な事ではないぞ? 同様な事は、モニカ嬢ちゃんやソフィー嬢ちゃんにも言える」
「「「はい!」」」
一度固まった戦い方を変えるのは、簡単な事じゃない……というのは、力任せに戦っていた俺が言う事じゃないかもしれないけど。
ともかく、さらに上の段階へと成長するためには、今まで以上に頑張って行かないといけないという事だろうね……俺も置いて行かれないように頑張らないと。
正面から戦った時の勝敗とかではなくて、技術という面では俺が一番未熟だろうから。
フィネさんだけでなく、モニカさん達にも忠告をするように締めくくって、頷いて応える皆と同様、俺も頷いてこれからの訓練への意気込みを新たにした。
「ともあれ、根を詰め過ぎても逆効果じゃ。そろそろ腹が減ったのう……」
というエアラハールさんの提案で、腹ごしらえに昼食を取る事にする。
ひとまず訓練場を後にして、部屋へと戻ろうと移動を始める直前、エアラハールさんが呟いた。
「ソフィー嬢ちゃんとフィネ嬢ちゃん、足して割るくらいがちょうどいいのにのう……まぁ、お互いの戦い方を見て、それぞれに感じて自分なりに考えるのが良かいかの……」
「「……」」
エアラハールさんは女性に対してトラブルを起こす事もあるけど、ちゃんと考えてくれているんだろうね。
その呟きが聞こえたのだろう、二人がお互いに顔を見合わせていたのが印象的だった。
あまり真面目な雰囲気を続けるのが苦手なのか、エアラハールさんからは照れくさそうな雰囲気が感じられたけど……だから直接言うんじゃなくて、独り言のように呟いたのかもしれない。
そう考えると、もしかしたら真面目な雰囲気にならないよう、照れ隠しに女性へ触ろうとしていたり……ユノに殴り飛ばされるのも織り込み済みとか?
……いや、やっぱり半分以上は趣味もあると思う――。
「あ、そうだりっくん。クォンツァイタは無事到着したわ」
「ちゃんと届けられたんだね、良かった」
「まぁ、途中に魔物と遭遇して、少し時間がかかったみたいだけどね。しっかり届いたわ」
エアラハールさんとの鍛錬も終わり、夕食を頂いている際にふと思い出したように言って来る姉さん。
ちょっとしたトラブルはあったみたいだけど、何事もなく輸送が完了したみたいで良かった……さすが兵士さんの護衛付きだね。
ちなみに、モニカさん達は昼食前にエアラハールさんからの指導を受けた事もあり、夕食前まで訓練に打ち込んでいたんだけど、いつも以上に熱が入っていたのもあってか、疲れ果ててしまったようなので今日のところは早めに宿へと帰っていた。
今この部屋には、俺とユノとエルサ以外に、姉さんとエフライムとヒルダさんくらいしかいない。
というか、姉さんはよく俺の部屋で食事をするけど、女王様としての仕事とかは大丈夫なのだろうか?
貴族の人とかとの付き合いとか……いや、現在王城にいる唯一の貴族であるエフライムがここにいるんだけど。
まぁ、俺が考える事じゃないし、姉さんもリラックスしているようだからいいんだろう。
「クォンツァイタが来たって事は、アルネの研究が捗るだろうね」
「そうねぇ。現状ではアルネに頼んで調べてもらうしかないのよね。まぁ、王城にいる研究者もアルネに師事するように言って、研究に参加させているんだけど」
「そうなんだ?」
「アルネとフィリーナ……いえ、エルフだけが扱えるのなら、広く利用するのは難しいからね。やっぱり、一般にも扱える技術というか、役立てる方法は考えないと」
「それもそうだね」
クォンツァイタの研究は、アルネが乗り気だからいいんだけど、エルフだけの技術としてしまうと一般の人が扱える鉱石じゃなくなってしまう。
ある程度魔法具屋とかで、何かしらの扱いができるようになったとしても、広く普及はしないだろうし、ブハギムノングの鉱山で産出されるクォンツァイタを活用する事には繋がりづらい。
せっかく、大量に産出される物で量の心配はしなくてよくなるんだから、広く多く使った方が国のためにも皆のためにもなってくれるはずだ。
「でもねぇ……」
「ん、どうしたの? クォンツァイタに何か問題が?」
悩むように眉を顰める姉さん。
アルネが主導して研究しているのなら、問題は起こりそうにないけど……まさか、クォンツァイタその物に何かあったのだろうか? 少し心配になる。
まだ研究の始まったばかりの鉱石だから、知らない事で問題がおかしくないから。
「リク、陛下はクォンツァイタの脆さを問題視しているようだ。私が見る分には、あのくらいは想定していたのだが……どうにも納得がいかないようでな」
「そうなの?」
悩む姉さんの代わりに、エフライムが教えてくれた。
エフライムの方は姉さんと違って悩む様子は見られないから、大きな問題ではないんだろう……想定していたとも言っているからね。
「まぁ、エフライムの言う通りなんだけどね。いえ、私も脆いとは聞いていたのよ。けど、運び出し始めた時の数量と、実際に運び込まれた時の数量を確認したら、結構多くが使い物にならなくなっていたのよねぇ……」
「魔物の遭遇が原因とか?」
「兵士達が護衛に付いていたんだから、運んでいた荷馬車には何も影響がないそうよ。そう報告されたわ。実際、馬車の方は傷付いた様子はなかったようだし、収めていた木箱にも損傷はなかったみたいだから、虚偽ではないわね」
輸送する際に、想像以上のクォンツァイタが割れてしまっていたようです。
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