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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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生き残ることが一番大事



「そんな、私は……ただ、重量のある斧を使っているのは、力を補うためですし……もっと大きな剣や斧は扱えないですから。それに、投げられる重さでは今使っている斧が限界で……投げる事が多いのも、リーチの短さなど自分に足りない部分を補うためなのです。ですから、ソフィーさんの参考になる程までとは……邪道とも言われる事がある戦い方ですし……」


 フィネさんが使っている斧は、手斧とも呼ばれる部類で小さめだ。

 ただ、重量はそれなりにあるため、大きく振り下ろした際の威力は中々のものだし、鋭い刃で切り伏せると言うよりは、威力と重さで叩き斬ると言う方が近い。

 エアラハールさんの言う通り、速さや手数で翻弄するソフィーとは対極に近いかもしれない……速さがないわけじゃないし、複数の斧を使って投げたりも含めて手数を増やしているんだけど、どちらかというと相手の隙を作り出そう、誘い出そうとする動きが多いからね。


 全く正反対とまでは言えないんだけど、正面から真っ直ぐ戦おうとするソフィーと比べたら、変則的と言えるし、人によっては邪道と言う人もいるのかもしれない。

 やるかやられるかの戦闘において、俺はどちらかというと勝てばいいと考える方なので、フィネさんは邪道とは思わないし、そんな戦い方もあるんだ……くらいで見ているけど。

 あ、もちろん勝てばいいと言っても、人間相手に人質を使ったりとか、明らかに卑怯だと言われてしまうような事はしないけどね。


「戦い方なんぞ人それぞれじゃ。ルールの決まった戦いならともかく、魔物との戦いでは生きていた者が勝者じゃからの。正しいも間違いもないじゃろう。若い時はそうなりがちじゃが、常に危険と隣り合わせなんじゃ、生きるためにはどうしたらいいかを考えるべきじゃの」

「生きるためには……」

「これまでは、いかに相手を倒すかばかり考えていたが……自分の事も考えねばならないのですね」

「自分の事も含め、他の事もじゃな。仲間であったり、家族であったり。若いと魔物を倒す事にばかり気が向く事が多いのじゃが、時には逃げて機会を窺うという事も大事じゃよ」


 いつの間にか、技術的な指導から心構えの指導へと向かっていた。

 これまで、色々と危険な場面には遭遇してきたけど、ほとんどが魔物を倒す事ばかりを考えて、生き残るにはどうしたらいいかとかはあまり考えていなかった事に気付く。

 一番考えていたのが、ヘルサルでの防衛線の時くらいだったかな……あの時は必死で、とにかく生き残る事を考える方が多かったような気がする。

 逃げるが勝ち、という言葉があるように生きてさえいればなんとかなる事も多いので、エアラハールさんが言いたい事はよくわかった。


「今日見ただけじゃが……この中で一番その事がわかっているのが、フィネ嬢ちゃんじゃな。まぁ、これは経験によるところが多いとは思うが……」

「はい。私は冒険者ですが、子爵様付きの騎士でもありますので……生き残るための意識は教えられています」


 戦い方で、なんとなく俺達の考え方なんかを見ているのか、エアラハールさんがフィネさんを見ながら言う。

 フィネさんが冒険者でもあるのは、騎士になる前に修行するために近く、本来は騎士団所属だから冒険者しかやって来ていない俺やソフィー達とは、教えられている事や考えが少し違うんだろう。


「じゃが、それが逆に自分の戦い方が邪道じゃと思う事にも繋がっておるのじゃろ? 騎士団などでは、正道の戦い方を好まれるからの」

「……そう、ですね。子爵様はわかって下さっていますが、どうしても騎士の中にはそういった考えが根底に根付いている事は否定できません」


 騎士というイメージからは、正々堂々とかそういう想像ができる。

 ソフィーの戦い方も、それに近いため女騎士みたいな雰囲気に見えたりもするんだけどね。

 騎士道、という言葉がこの国にもあるのかは聞いていないけど、近い考えで統一されていたりするのかもしれない……と考えた辺りで気付いた。

 以前、クレメン子爵の所で騎士団の人達と模擬戦をした時には、トリッキーな動きをして翻弄して来る人がいたはず……。


「でも、フィネさんと同じというわけではないですけど、ちょっと変わった戦い方をする騎士さんなら、クレメン子爵の騎士団にいましたよ? 確か、副団長だったと思いますけど……」

「ほぉ……まぁ、騎士団によっても考え方、やり方が違うじゃろう。それこそ、上にいる貴族様の考え方でも変わる事だってあるからの」

「……シュタウヴィンヴァー子爵は、国内最大の騎士団をお持ちで、常に有事に備えています。なので、柔軟な考えをしないといけないのかもしれません。兵士の他に騎士団を持つ貴族はいくつかありますが、伝統を重んじる事が多いのが現状ですね」


 最前線、というわけではないけど……帝国に近く規模も大きいため、いつ戦争に駆り出されてもいいように変な戦い方にこだわらない、という事なのかもしれない。

 まぁ、古い考えであっても集団で一つの考えを持って統一されている強さ、というのもあるだろうし、柔軟な考えで各自が様々な事に対処できる強さ、というのもあるだろう。

 一概にどちらがいい、とは言い切れないね……人によって、その中でのやりやすさは変わるだろうけど……。


「なんにせよ、騎士には騎士の、冒険者には冒険者の考えがあるものじゃよ。ワシら冒険者は、魔物と戦う機会が多いのじゃ、生き残る術を考えるのは無駄ではないじゃろうからの。……無謀に挑んで帰ってこなかった者なぞ、いくらでも見て来たからの」

「……」


 時折女性に触ろうとしたりして、残念な雰囲気にするエアラハールさんだけど、元Aランク冒険者のこれまでの経験から言われる言葉には、説得力だけでなく、重くずっしりとした何かがあった。

 きっと、顔見知りや友人、他にも様々な人が魔物にやられた場面なんかに遭遇してきたんだろう。

 俺やモニカさんは、今までそこまでの事には遭遇していないけど、一つ間違えば誰かが失われていてもおかしくない状況なんて、いくらでもあったからね。

 エアラハールさんの言葉をしっかりと覚えて、もっと冒険者として頑張ろうと気を引き締めた……。


「……ほれ、帰って来んかったらこんな事もできないからの……ぶべっ!」

「真面目な雰囲気がぶち壊しなの!」

「ユノ……よく反応できたなぁ……」

「そろそろ来ると思っていたの。真面目にするのがそろそろ限界そうだったの」

「そ、そうか……」


 自分の言葉を誤魔化すようにか、真面目な雰囲気に耐えかねたのか、急に表情を変えたエアラハールさんが手をワキワキさせながら、モニカさん達の方へと飛びかかる。

 が、そこへ到達する直前に、再びユノが横から体当たりをしてエアラハールさんを弾き飛ばされた。

 急な動きだったので、モニカさん達ですら反応できなかったのに、ユノが動けたのにも驚いたけど……真剣な雰囲気が長続きしないと、予想していたみたいだ。

 俺達が指導を受けている間も、エルサとがま口リュックに関してキャイキャイ話していたのになぁ……ちなみにエルサは、なぜかユノのがま口リュックに収まって顔だけ出していた……荷物役かな?




エアラハールさんは真面目な雰囲気を長続きさせられない人のようです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

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