アメリさんお勧めの高級レストラン
アメリさんの話に、食いつくモニカさんやフィネさんとは違い、俺は男だから参加しない方が良さそうだ。
変な追及を受けそうだしなぁ……そもそも、そちら方面には疎くて参加できそうにない。
ユノは恋バナというよりも、モニカさんとフィネさんの勢いに驚いて楽しそうだが、エルサは昼食の方へ意識が行っているので興味はなさそうだった。
……もしかしなくても、アメリさんが案内してくれるお店に着くまで、愚痴というか恋バナというか、よくわからない話を聞いて行かなきゃいけないんだろうか?
道中は諦めるとしても、さすがに昼食中も続いていたら、肩身が狭いなぁ……エフライムを連れて来るべきだったか――。
「ん?」
「どうしたの、リクさん?」
「いや、誰か聞き覚えのある声でのクシャミが聞こえたような気がしたんだけど……気のせいだったみたいだ」
話に熱中するアメリさん、モニカさん、フィネさんの三人を眺めながら、ソフィーと苦笑し合って歩く事しばらく……美味しいと言われているお店に到着。
そのお店は、以前マックスさん達に紹介されたお店とは別で、雰囲気の良さそうな高級レストランと言った風情だった。
元冒険者で、大衆食堂をやっているマックスさん達とは、お店を選ぶ感覚や味方が違うんだろうな、と少し面白かった。
席に着いたくらいで、エフライムを無理矢理にでも連れ出すべきだったと、頭の端っこで考えていたせいか、なんとなくクシャミをしているような声が聞こえた気がしたけど、きっと気のせいだろう。
「ようこそお越し下さいました。……リク様、でしょうか?」
「あ、はい。そうですけど……」
テーブルについた俺達に、ウェイトレスさんがメニューを持ってきて挨拶。
俺がよく入るようなお店と違って、丁寧な挨拶でこのお店がかなりお高いレストランだというのがわかった。
アメリさん、一人でこういうところに来てたのか……まぁ、よくわからず入ったのかもしれないし、ハーロルトさんとかから教えられたのかもしれないな。
ともあれ、ウェイトレスさんが挨拶をして頭を上げた瞬間、俺を見て気付いた様子……パレードの影響で顔を知っている人が増えたからね。
「も、申し訳ありません。一旦、失礼します……」
「え? あ……はぁ……」
「どうしたのかしら? リクさんを見た時の反応が、ちょっと今までと違う気がするけど」
「そうだな。いつもなら大きく歓迎されたりするものだが……まぁ、とりあえず頼む料理でも決めておけばいいだろう」
ウェイトレスさんはメニューをそっとテーブルに置くと、なぜか謝った後ゆっくりと店の奥へとフェードアウトして行った……なんだったんだろう?
キョトンとしているアメリさんとフィネさんを置いて、俺とモニカさんとソフィーが顔を合わせる。
確かにいつもなら、異様に歓迎されたりお代はいりませんとか言われたりするんだけど……今回はちょっと違う反応だった。
ちなみに、お代はいりませんと言われても、ちゃんとお金は払う事にしている……商売している人に申し訳ないからね。
そんなウェイトレスさんの反応に首を傾げつつも、メニューは置いて行ってくれたので、とりあえずソフィーの言う通り料理を決めておこう。
テーブルに置かれたメニューを見ようと、手を伸ばした瞬間……。
「オーナー! 料理長! 大変、大変です!!」
「……こういう反応になったわけかぁ」
「さっきは、慌てないように我慢していたのね」
「客にその姿を見せないのは、凄いな。まぁ、声がここまで聞こえてきてしまっているが……」
「ふふふ、リク君と出会ったんだもの、こうなるのも無理はないのかもしれないわね?」
「私も、初めて会った時は、似たように慌てた記憶がありますね。もっとも、その際にはコルネリウス様が失礼な事をしてしまわないかと、そっちにばかり気を取られていたので、取り乱しはしませんでしたけど」
「大きな声だったのー」
「……うるさいのだわ。早く食べ物が欲しいのだわ」
ウェイトレスさんが去って行った店の奥から、大きな叫び声が漏れ聞こえた。
その声は店中に聞こえたようで、俺達がいるテーブル以外に座っていたお客さん達も、こちらをチラチラを見て注目を始めた。
アメリさんは楽しそうだけど、モニカさんとソフィーはやれやれと言った雰囲気で、ユノは大きな声に反応……エルサは、我関せずで早く食事がしたい様子だね。
うーん、どうしよう……結構注目され始めたから、このままここにいるのも微妙な気がするし……けど、せっかくアメリさんが紹介してくれたのに、何も食べずに出るのも悪い気がするなぁ。
「も、申し訳ございません! リク様に大変ご迷惑を……!」
「あー、えっと……」
どうしようかと考えていたら、奥から初老の執事風の男性が慌てて俺達のテーブルまで来て、深々と頭を下げられた。
謝られる程じゃないと思うんだけど……こういう高級レストラン的なお店は、店員の仕草なども教育されているから、さっきのウェイトレスさんが叫んだ事に対してなんだろう。
「わたくし、当店を経営させて頂いている者でございます」
「オーナーさん、って事ですか?」
「はい。先程は当店の者が大きな声を出してしまい、お客様方を驚かせてしまった事、誠に申し訳ありません。また、リク様におかれましては、大変なご迷惑をおかけした事、心よりお詫び申し上げます……」
「まぁ、そこまで謝らなくても大丈夫ですよ。その場でじゃないのはちょっと珍しかったですけど……でも、驚かれたりする反応にはもう慣れましたから」
再度頭を下げて謝るオーナーさんに、手を振って気にしていないと伝える。
本当に慣れた、と言うわけでもないんだけど……でも、過剰に反応されるのはもはやいつもの事になっているからね。
新しい反応でちょっと驚いたけど、その場で叫ばなかっただけ、よく教育されていると言えるのかもしれない……って、ある意味これも慣れてきているのかもしれないけど。
「お詫びと致しまして、本日の食事は全てサービスとさせて頂きたく思います」
「いえいえそんな、お詫びなんて。ちゃんと食べた分はお金を払いますよ。それに、お店としてもタダで食べられたら困りますよね?」
「いえ、リク様はそのような事をお気になさらず……」
「いやいや……」
「いえいえ……」
お店のためにならないと、お金を払いたい俺と、迷惑をかけたお詫びにお金はいらないと言うオーナさんとの間で、いやいやいえいえ合戦が続く。
「……どうでもいいから、早く食べ物を出すのだわ!」
そんな俺とオーナーさんとのやり取りは、エルサの一喝で収まる。
結局その後アメリさんが仲裁のように間に入って、割引してもらう事で妥協するとなった。
ちなみに、俺達以外のテーブルには別の店員さん達が行って謝罪をすると同時に、俺の事を気にし過ぎず食事に集中するよう促していたり、料理の話を振ったり、サービスを行ったりとさりげない気遣いをしていた……さすがは高級レストランだね。
一つのテーブルに、一人のウェイターかウェイトレスさんが付いているから、高級レストランという印象は間違っていなかった――。
アメリさんお勧めのお店は、格式の高そうなレストランだったようです。
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