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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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鎧を持っていた理由



 男やツヴァイが、もしもの際にオーガに対処する方法を用意していたのには納得するが、それが人間に使われたとなると、無事かどうかはちゃんと確かめないといけない。

 捕まえた人間の多さや、地下から外への道の数もあって、全てくまなく調べているとは言い難いため、ヴェンツェルさんが改めて男を見張っていた兵士さんの一人へ伝達させる。

 暗がりに人が隠されているなんて、考えていなかったからなぁ……それに、一度通って調べるくらいはしても、くまなく詳細にとまで行っていないのは、その兵士さんがまだ見つかっていない事からもわかる。

 見つかっていたら、こちらも同じくどうやって紛れ込んだからわかっていたはずだからね。


「それで、我々の内部へ紛れ込んだ方法はわかった。だが、逃げた時にお前が来ていた鎧はどうしたのだ? まさか、着ていた兵士を殺すなり、眠らせるなりして奪ったか?」

「あの鎧か……バレないよう他の兵士からどういう鎧か聞き出したが、まさかワイバーンの素材を使った鎧とは思わなかった。いくつか持って逃げたかったが、余裕がなかったからな。夜明け前に鎧を身に着けていた者が眠っている場所から盗み出しただけだ。少々、眠りが深くなってもらったくらいだがな」

「また、ここでも眠らせる薬か……」

「殺したりして、騒ぎになるような事はバレてしまう可能性が高いからな。それに、ワイバーンの鎧を着ている相手に、無防備な時以外挑んでも勝てるとは思えん。あれだけ上等な鎧だ……来ている兵士達は熟練の兵士だと想像が付くからな。まぁ、それにしては少々無防備に感じたが……」


 ワイバーンの鎧は全身鎧だ。

 だから、新兵さんという事もあるけど、隠し通路の捜索ではなく建物を囲んで見張る役目にしたんだけど……建物からオーガが出て来ても、ワイバーンの鎧がある以上防御面は完璧とも言えるからね。

 通常のフルプレートよりも軽いと言っても、全身鎧なのは間違いないから、歩き回る必要がある捜索の方だと不便だというのもあった。

 新兵さんだから以外にも、それなりに考えた配置だったんだけど……どうやらこの男は、上等な鎧を着ているのはベテラン兵士だからと考えていたらしい。


 まぁ、新兵とはいっても一応訓練はしているので、鎧の硬さや騒ぎを起こすわけにはいかないというのもあって、襲い掛かるというわけにはいかなかったんだろうけど、通常はそう考えるんだろうか?

 俺の考えとしては、未熟な新兵さん達を頑丈な鎧で守って、ベテランの兵士さんやヴェンツェルさんとかは、動きやすい鎧で自由に動いてもらった方が全体的な戦力は上がるんじゃないかと思う。

 このあたりは、考え方の違いだったりもするから、絶対こっちの方が……というのはないんだろうけどね。


「ふむ……盗まれた者も、後で厳しい訓練が必要だな。――おい、今度は兵士の確認だ。マルクスに言って、全ての兵士を確認しろ。突入後は慌ただしかったから、一部を除いて確認を怠っている部分もある。寝ている者がいれば、叩き起こせ!」

「はっ! 了解しました!」


 今度は新兵さんに厳しい訓練が課される様子……災難だなぁと思う反面、せっかくの鎧を盗まれたのは、もう少ししっかり管理しておいて欲しかったとも思う。

 ……寝ている時に侵入されたんだから、仕方ないとも思うけどね。


「それと、リク殿もいて、建物の制圧も完了した事で緩んでいる者がいないかも確認しろ。そして引き締めさせろ! もし緩んでいる者がいたら、王都に戻った際に、私が直々に訓練をしてやるから、そのつもりでな? あと、代わりの者も呼んで来い」

「はっ! 直ちに!」


 作戦行動としては、突入して制圧した事で完了したから、気が緩んでも仕方ないのかもしれないけどね……実際、俺だけでなくモニカさんやソフィー、フィネさんなどの冒険者組はのんびりしているし……あれ、俺だけツヴァイや今目の前にいる男の取り調べとか、追いかけたりして緩む暇がないような……?

 ま、まぁ、気のせいだね……それ以外は建物内部を調べたりとか、拘束した人達の見張りとかは任せているから、十分緩められていると思う。

 とはいえ、大人数の軍隊には規律や気を引き締める事も必要だからなぁ……なんて考えながら、慌てて外へ向かう兵士さんを見送り、代わりの兵士さんが来るのを待つ。

 ほどなくして、今までとは別の三人の兵士さんが部屋へ入って来て、俺やヴェンツェルさんに挨拶をし、取り調べ再開となった。


「さて……次が本題だが……結局、この施設を作り、魔物の研究をするよう命じたのは誰だ? お前達の目的は?」

「俺は、目的までは知らされていない……元は冒険者をしていたんだが、この国に来てからは散々だ。冒険者としての心得だの、正し行いだの……元いた場所ではもっと自由に振る舞っても、何も文句は言われなかったんだがな……」

「冒険者?」

「あぁ。この国に来る前は、これでもBランクだったんだ。だが、もっと稼いでやろうとこの国に来たのが間違いだった。ある街に行けば素行が悪いとランクを落とされ、さらに他の場所へ行けば依頼の達成率が悪いと言われ……あれよと言ううちにDランクだ。そんな低いランクじゃ稼ぐどころじゃない。そのうえ、不満を冒険者ギルドでぶつけて、そこにいる他の冒険者達と争えば、最終的には資格剥奪だ……まったく、踏んだり蹴ったりだ」

「……それは、自業自得なのでは?」


 冒険者になったからって、なんでもしていいわけがないのは当然だ。

 この国の冒険者ギルドは、各地と連携を取って情報を共有したり、ギルド支部のある街の治安を国側と協力して維持したり、という役割もあったはず。

 まぁ、主な役割や稼げる依頼は、街や村の人に被害が出ないように魔物を討伐する事だけど、他にも必要な薬草だったり、商隊の護衛だったりもしている。

 そして依頼を託すために必要なのは、実力の他にも信用があってこそだ。


 依頼達成率が低かったり、素行の悪い冒険者に商隊護衛を任せたりはしないからね。

 この国に来る前がどうだったかはともかく、アテトリア王国で冒険者を続けてランクを上げようと思ったら、達成率を上げたりして信頼されるようにならないといけない……もちろん、実力も伴っていないといけないけど。

 以前は素行が悪くても問題視されなかったんだろうけど、ちゃんとした場所に来てランクが落とされて剥奪されて……と、その間に自分の行いを反省したり、悔い改めなかったこの男の自業自得だと言える。


「……元とはいえ、冒険者がなぜここで研究に加担していたのだ?」


 思わず漏らした俺の言葉は流して、話しの先を促すヴェンツェルさん。


「冒険者でなくなった後は、そこらを放浪するだけの生活だった。それなりに戦い慣れているから、野盗の真似事をしたりもしたが……腐っても俺には冒険者の矜持があるからな、野盗に加わったりはしなかったが……」


 真似事をしたって事は、旅行く人を襲って金品を奪ったとかだろう。

 相手の命まで取ったかはわからないけど、それはもう真似事ではなく完全な野盗だ……冒険者の矜持が聞いて飽きれるなぁ。

 ツヴァイは自分以外を見下していて、どうしようもない相手と思ったけど、この男も同じようなものだと話を聞いていて感じた――。




戦い慣れていたのは元冒険者で、ならず者まで落ちた人間だったようです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

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