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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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物理法則の説明は難しい



「収拾がつきそうにないわね……。どうするの、リクさん? もう、放っておいて私達だけで先に帰るって方法もあると思うけど?」

「あはは、それも手ではあるね。でも、これだけ皆乗りたがっているからなぁ……それじゃこうしよう!――ヴェンツェルさん……」


 言い合う兵士さん達に、ちょっと呆れた様子を見せるモニカさんに苦笑する。

 確かにモニカさんの言う通り、さっさと俺達だけエルサに乗って帰る事もできるだろうけど、これだけ皆が希望しているんだから無視するのもね。

 それに、なんだかエルサがうずうずしている雰囲気もあるし、乗せる事はともかく、空を飛ぶ楽しさを伝えたいとか考えていそうだ。

 自分の好きな事を、他の誰かに教えたい……とかそういう気持ちなんだろうと思う。


 なので、とりあえずの折衷案を考え、皆が妥協してくれそうな方法をヴェンツェルさん達に伝えた。

 その方法として、まずはヴェンツェルさんだけエルサに乗せて戻る。

 これは、誰も乗らない馬を増やすと移動速度に影響が出るため、最低限で済ますためだね……早く戻らないとマルクスさんに悪いから。

 その後、野営地に戻った後で、兵士さんの中から信頼できる人を選別して、離れた場所で少しだけエルサに乗って周囲を飛ぶ体験会を開催する事。


 信頼できる人というのは、もちろん紛れ込んでいるとか怪しい人物をエルサに乗せないためで、ここに連れて来ている人達はヴェンツェルさんの信頼している人たちだから、全員大丈夫そうだ。

 あと、選別から外れた人から文句が出ないように、別の用があるとして隊を離れ、見えないところでエルサに内緒で乗ってもらうとした。

 これには、エルサの事をしらない研究者達を驚かせないという理由も含まれる……拘束しているから大丈夫だろうけど、変に騒がれるのも面倒だからね。

 結局、後で乗る事ができるならと、兵士さん達が引き下がって、ウキウキ状態のヴェンツェルさんをエルサに乗せて、上空から男達を連行するのを見守りながら帰る事に決まる。

 大柄なオジサンが、ウキウキしながらエルサに乗り込む姿はなんというか……面白いんだけど、あまり人には見せない方がいいんだろうなぁ、としみじみ感じてしまった。



「おぉ~、空から見下ろすというのは、こういう気分なのか……前回乗った時は、初めてで楽しむ余裕がなかったからな。この年で貴重な経験をさせてもらっている。だが……」

「ん、どうかしましたか?」


 ヴェンツェルさんを乗せてエルサに飛んでもらい、上空から地面を走る騎馬の一団を見守りながらゆっくり移動。

 さっさと飛んで戻っても良かったんだけど、一応男達を連行する兵士さん達を見ておくために、いつもよりかなり低空を飛んでいる……結界がなかったら、叫び声くらいは届くくらい近い。

 いつもより遅くとも走る馬と同じ速度が出ているはずだけど、低空とはいえ空を飛んでいるのでなんとなくスピード感が足りない。

 それでも、エルサから落ちないように気を付けながら、地上の様子を見て感心しているヴェンツェルさん。


 前回ルジナウムに食材を求めて移動した時は、モニカさん達が夕食の支度をする時間を十分に取るために、少し急いでもらったから、初めてというのもあって楽しむ事ができなかったんだろう。

 慣れない人が乗るとなると、速度を出して飛んだり高度を高くすると地面がいく見えなくなるから、今の飛び方の方がいいのかもね。

 でも、感心していたヴェンツェルさんは、何かあるのか少し訝し気な声を漏らした。


「いや、飛ぶという事で、もっと他にも何かあるんじゃないかと身構えていたのだがな? それこそ、後ろに引っ張られるような感覚だったり、押さえ付けられる感覚があってもおかしくないと。馬を全力で走らせるとそんな感覚に襲われる事があるのだ。いや……前回乗った時もそんな感覚はなかったのだが、考える余裕が出るとそこが不思議でなぁ」

「あー……」


 多分、重力がかかるという感覚を、ヴェンツェルさんはそう捉えているんだろう。

 車で急加速したり、ジェットコースターに乗った時に全身に押さえつけられような、体が引っ張られるような圧がかかる現象だね。

 馬もそれなりに速度が出るから、それなりの感覚を体験する事はできるんだろうけど、車やジェットコースターのような感覚程じゃないし、物理……でいいのかな?……の法則だとかの知識がないと、あれがどういう現象かはわからないんだろう。

 モニカさんも今更ながらに、ヴェンツェルさんと同じ事を考えたのか、似たような表情で首を傾げている。


 うーん……どう説明したものか……曖昧な説明だと、下手をしたらエルサに乗っている時にジャンプすると、自分だけ置いて行かれるとか考えてしまいそうだし……。

 物理的な事が得意だったりするわけでもないから、どう説明したらいいのか悩むね……まぁ、得意だからって詳しく説明しても、学問として確立されていない話をしても、理解できそうにないけど。

 物理って、深くまで勉強しようと思うと、かなり難しいからね。


「えーと……今、エルサが結界を張ってくれているんですけど、このおかげで飛んでいても風を防ぐ事ができます」

「ふむ……結界とはそこまでできる魔法なのか。確かに、馬で走っている時には感じられる風が、全く感じられないな。おかげで快適だが」

「まぁ、不可視の壁を作るわけですからね。見えなくてもそこに存在する物を作る以上、風は通しません。結界はエルサの周囲を覆うように張ってあるので、要は現在エルサを中心にこの場所は結界の外と内側で隔絶されているんです」

「……ふむ」

「そして、エルサの移動に合わせて結界も動かしているので、空間ごと移動しているという事になります。なので、外からの影響は受けずに、圧……えっと、引っ張られるような感覚だったり、押さえ付けられるような感覚はないんです」

「……つまり……どういう事だ?」

「簡単に言うと、部屋ごと移動しているので、その中にいる人間に影響が少ない……と考えておいて下さい」

「うむ……そうなのか……」


 色々な説明を省いた事はわかっているし、本当にその説明が正しいとは言えないんだろうけど……仕方ないじゃないか、こういうのは得意じゃないんだから。

 なんとなくで、こういうものか……という理解くらいしかしていなかったから、ちゃんとした説明をする事ができない……こんな事なら、もう少し真面目に学校で勉強していた方が良かったかなぁ?

 誰か、俺の代わりに解説して欲しい、なんて考えるけど……それはそれで現象に関して数式がどうの……という説明でちんぷんかんぷんな事を言われそうだ、なんて考えるのは、俺の勝手なイメージか。

 姉さんなら、俺より少しは詳しいかなぁ? 記憶している限りだと、成績は良かったはずだし……覚えているかわからないけど。


「まぁ、難しい事はともかく、エルサ様は特別という事だな。結界が便利な魔法だという事もわかった」

「うん、それでいいです……」

「疲れている様子ね、リクさん?」

「いや、大丈夫だよ。ちょっと難しく考えていた事を後悔しているだけだから……」



リクはあまり学校の成績が良くなかったのかもしれません。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

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