フィネさんによる愚痴大会
モニカさん達が頑張って作ってくれた料理は、お肉を香草で焼いて濃い目の味付けをした物をパンに挟んでいたり、モニカさん特製の暖かくて安心するスープ、デザートに焼きリンゴなんかもあった。
特に豪勢な料理というわけではないけど、味気ない食事をしていた兵士さん達にとっては、とんでもないご馳走に見えたのかもしれない……用意していた時から、美味しそうな匂いを周囲に漂わせていたからね。
匂いに関しては、肉を焼く匂いなどは魔物を引き寄せたりする事もあるため、探知魔法を使って周囲の警戒を担当していたけど、特に問題は何もなかった。
街道に近いために定期的に魔物の討伐を、冒険者によってされているのもあるけど、オーガ以外の魔物が少ないのが少し気になる。
その事でちょっとマルクスさんやフィネさんと話したけど、二人共偶然魔物が少ないのか、それともオーガに関して何かあるのかもしれないかも? くらいの反応だった。
そういう事もあるかなと思う半面、探知魔法の精度はともかく範囲が広がっている事を知らない二人だから、もしかすると目視できる範囲より少し広いくらいの認識だからかなとも思う。
遠いのと、近くに兵士さんが多くて情報量が多いために、はっきりとはわからないけど……今なら昼間に偵察した研究施設近くまでわかるんだよね……周囲数キロくらいかな? これくらいの範囲で何もないというのは、ちょっと奇妙かもしれない。
とはいえ、難しく考える必要はないかもと思い直して、俺も兵士さんに負けないようモニカさんの料理を頂く事にする。
もしかしなくても、街道にいたオーガと関係しているような気がするし、何かあれば明日突入した際にわかるだろうからね。
ちなみにこちらは、兵士さん達のように鍋へ群がる事はなく、落ち着いた雰囲気だ。
「……モニカの料理、皆に人気なようね」
「美味しいから、人気になるのも頷けるよ」
「難しい料理とか、手の込んだ物は作ってないんだけどね……まぁ、喜んでもらえたなら嬉しいわ」
「モニカ殿、部下達のためにありがたく。しかし、これだけの人数分を用意したのは大変だったろう?」
「まぁ、少しは……ですね。でも、父さんと母さんがお店をしているから、そこでの忙しさに比べればなんともありません。あれは、父さんが戦場と呼ぶくらいですからね……」
「マックスが言うのなら、相当なのだろうな……確か、踊る獅子亭と言ったか? 王都にいる事が多いため、マックス達の店には行けていないのだ。いずれ、行けるといいな」
「はい、父さんも母さんも喜ぶと思います」
騒動にまで発展している兵士さん達を見ながら、フィリーナと頷いていると、モニカさんが謙遜。
手が込んでいなくとも、美味しい料理ができるというのはそれだけで、料理上手と言えるんじゃないかと思う。
もちろん、手の込んだ料理や、手間がかかっている方が美味しいんだろうけど、サッと作った物でも美味しくできるというのは、基礎がしっかり身に付いているからだろうね。
ヴェンツェルさんが兵士の様子を見ながら、モニカさんに頭を下げ、マルクスさんも同じく頭を下げている。
マルクスさんは、肉の挟んだパンを口に含んでいたため、言葉を発せなかったみたいだけど。
そういえば、ヴェンツェルさんとマックスさんって親友とも呼べる間柄だったっけ……獅子亭の料理はマックスさんが心を込めて作った美味しい料理ばかりだから、いつかちゃんと味わって欲しい。
軍のトップで、将軍とか呼ばれているから、中々王都を離れてヘルサルに行くのは難しいだろうけど……。
「そういえば、フィネさんも料理が得意そうでしたね?」
「あぁ、そうそう。本当、フィネさんがいてくれて助かったわ。フィリーナも料理はできるけど、この人数でしょ? 凄く助かったわ!」
「いえ……私など……」
「謙遜なんてしなくていいのよ? ソフィーなんて……」
「んお?……んぐ……私は食べる専門だからな! 美味い物を食べて、体を動かす! これが冒険者にとって正しい姿だ! はぐ……」
「これだもの……でもソフィー? フィネさんはBランクなのだから、ソフィーの言い分は微妙だと思うわよ?」
まぁ、ソフィーとモニカさんはまだCランクだからね……。
二人共順調にいけばBランクの実力はあると思っているけど、それは俺の勝手な考えか……ランクの基準とかあまり深く考えていないしね。
それはともかく、Cランクのソフィーが冒険者の姿勢を訴えても、Bランクのフィネさんが実際に料理ができてしまうのだから、説得力はあまりない。
冒険者だとかに関係なく、料理ができるできない、したいしたくないは個人によって違うんだから、そもそも冒険者は……というくくりで話すべきじゃないんだろうけども。
「私は……その、コルネリウス様と行動をしていると、食事当番になる事が多かったので。それに、美味しくない物を作ると、コルネリウス様が怒りますからね。まぁ、失敗した料理を不満そうにされても、残すような事はさせませんが……」
「あー、あのお坊ちゃんね。フランク子爵がいたし、たしなめるどころか叱咤していたから、おとなしかったけど……初めて会った時の事を思い出すと、確かにわがままそうだったわよね……」
「ははは、でも結局、残させないようにするという事は、コルネリウスさんがわがままを言うだけじゃないみたいだね。ちょっと不思議な関係、かな?」
コルネリウスさんの性格を考えると、美味しくない料理を出されたら、食べずに残すなんて事も平気でやりそうだけど、その際には逆にフィネさんが怒って残させないようにするらしい。
初めて会った時、最終的にフィネさんが怒ってコルネリウスさんをおとなしくさせていたから、ただの主従という関係ではなく、傍から見ているだけではわからないような間柄なんだと思う。
「コルネリウス様とは、幼い頃から一緒に育ったので。あれでも、小さな頃は正義感が強く、我がままではなかったのですが……はぁ、いつからあぁなってしまったのか……リク様に突っかかるだけでなく、身の程をわきまえずにキマイラに挑もうなど、以前ならしなかったでしょうに……」
「あはは……まぁ、小さい頃と成長した後では、性格が変わる事はよくある事よね」
「そうは言いますが、あれは変わり過ぎですよ? 私なんて、将来この方にお仕えして、立派に領主としての務めを果たせるよう、お傍でお守りしよう……と考えていましたから。今のコルネリウス様は、そう思える要素がありません……父親のフランク様は、ご立派な方なのに……」
「小さい頃は、そんなに立派だったの?」
「もちろんです! 弱い者にも手を差し伸べ、分け隔てなく民と接し、誰からも好かれる……そんなお方でした……決して、貴族である事を盾にしたり、誇ったりせず、自分は民に寄り添う者だと仰っておりましたから」
それはなんとも……子供とは思えない立派な志だと思う。
今のコルネリウスさんだけを知っている俺達には、フィネさんの言う小さい頃の性格と一致せず、首を傾げるばかりだけどね。
人が変わったようにというか、本当に人が入れ替わってしまっているんじゃないかと思えるくらい……なのは少し失礼かもしれないけど、今のコルネリウスさんを見ているとそう思えてしまう。
まぁ、多少はフィネさんの中で記憶の美化がなされているんだろうけどね――。
フィネさんは、今までの事が随分と溜まってしまっているようです。
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