増えるエルフへの頼み事
「まぁ、壊れてしまったものは仕方ありませんな。じっくり調べる事ができると考えましょう。効果を試す事はできませんが……」
「壊れていますけど、そんな事ができるんですか?」
割れてしまってすぐに色も白くなってしまった事から、魔力を蓄積させるクォンツァイタの特性もなくなったようだし、魔法具として調べられなくなったと思っていたんだけど……。
「使って試すという事はできませんが、どういう仕掛けが施されていたかは残っているはずです。私も含めて、素人が見てわかるものではありませんが、専門家なら魔法具となっていた残滓のようなものを見て、調べる事ができるかもしれません。もちろん、わからない可能性も高いでしょう」
「成る程、痕跡を調べるという事ですね」
「……それなら……ねぇリクさん? アルネとフィリーナに調べてらうのはどうかしら? あの二人なら、私やソフィーの武器を調べて改良もしてくれたから、何かわかるかもしれないわ」
魔法具となっていたのが間違いないなら、そこに施された何かが残っているはず……という事だろう。
フランクさんの言葉に納得して頷いていると、隣に座っているモニカさんから提案された。
専門家、と言われてモニカさんはピンと来たんだろうね。
けど……今でも俺が魔法を使う時の魔力操作から、一般の人が使う魔法の改良を研究しているし、クォンツァイタの事を調べてもらったうえ、さらに現物を持ち帰って調べてもらわないといけないから、手一杯な気がする。
フィリーナなんて、飽きたわけじゃないだろうけど、久しぶりに外に出たいような事を言って、ヴェンツェルさんと一緒に合流する予定だからね。
「うーん……頼めば確かに色々調べてくれるだろうけど、別の事を頼んでいるし、引き受けてくれるかどうか……。まぁ、あの二人だから頼めば引き受けてくれるんだろうけど、あまり無理させちゃうのもね……」
「お二人には、調べてもらえる方に心当たりが?」
「あぁ、はい。アルネとフィリーナと言って、兄妹のエルフが王都にいるんです。その二人なら、魔法具の事を調べてくれるし、知識もあって安心なんですけどね。ただ、ちょっと他の事もやっているので、手一杯かなぁと……」
「おぉ、あのお二人ですな。お名前は伺っていませんでしたが、王城にいる時に何度かお会いしました」
そういえば、研究がなくとも王城に出入りしていたし、何より勲章授与席にエルフ代表として並んでいたから、見た事は当然ある。
俺の部屋にフランクさんが訪ねてきた時に、アルネ達がいた事もあったはずだからね……直接話しをしたりは、してなかったんだったかな?
「ふむ、エルフであるなら、魔法具を専門としている者よりも適任でしょう。リク様の信頼している方々であれば、私共も信用できます。私の伝手を使って調べようと考えていましたが、エルフの方々に任せた方が安心ですな。……無理を承知でのお願いですが、なんとか頼めないでしょうか? 今は少しでも信用できる方にお任せしたいのです」
「うーん……確かにモリーツさんの事とか、誰がどこと繋がっているか……という話もあるので、アルネ達なら安心です。けどなぁ……」
アルネ達なら、モリーツさんやイオスのように怪しい組織との繋がりはないだろう。
エルフの集落に行く時に出会ったけど、一部を除けば積極的に人間と交流しようとしていたし、そんなエルフ達が魔物や人間を使った実験に手を貸すとは考えづらい……という理由付けだけでなく、一緒に行動して信頼できる友人と考えているからね。
「ねぇ、リクさん? とにかく二人に聞くだけ聞いてみたら? もし手が空かないようなら、その時は他の人に頼めばいいと思うわよ?」
「……うん、そうだね。――わかりました。ダメもとで調べられるか聞いてみます」
「おぉ、ありがとうございます! なに、駄目だった場合は私の方で手配するので、ご安心を。エルフの方々の方が知識がありますから、詳細がわかるかもと期待しての事ですからな。リク様がエルフの方々に聞いている間に、私の方も信頼できる人物を探しておきます」
「よろしくお願いします。えっと、これは預かっていても?」
「もちろんです」
モニカさんの提案で、とりあえず聞くだけ聞いてみる事に決めた。
お願いすると、二人が断れないんじゃないかと思うけど、とりあえず魔法具を調べる余裕があるかを聞いてから判断するのでもいいだろう。
フランクさんに許可をもらって、割れたクォンツァイタを布で包む。
でもそうか、クォンツァイタの事を見てもらわなきゃいけないから、ついでに頼む事もできるか……この魔法具もクォンツァイタなわけだし……とにかく、余裕があるかを聞いてからだね、ヴェンツェルさんと合流する時にフィリーナが来るはずだから、その時に聞けばいいか。
「とりあえず、魔法具の方はどうするか決まったようだな」
成り行きを見守っていたノイッシュさんが、布に包まれて安置されているクォンツァイタを見ながら発現。
どうやら、俺とフランクさんの話になったので、余計な事を言わないようにしてくれていたみたいだ。
「それでだな、リク。森へと伸びていた魔力の残滓は、今の魔法具に繋がっていた。それまではいいか?」
「はい。埋まっていた魔法具を見つけ出しただけでも、調査の成果が出ていると思います」
「まぁな。だが、それだけじゃなくてな……魔法具と繋がっているのとは別、そもそもその魔力はどこから来たのか、というのがまだわかっていない」
「そうなんですか?」
「あぁ。結構、離れた場所に繋がっているみたいでな。それに、そもそも魔力が残っていただけだからな……調べるのも一苦労だ。だが……一つ気付いた事があってな?」
「気付いた事ですか?」
今は新しく魔力が流されていないという事だから、確かに魔力を調べて道を辿るのにも苦労するのはわかる。
魔力は誰の意思も介在しない場合、基本的に自然へと溶け込んで霧散するものだから。
魔力溜まりになっていれば別だけど、そうなるくらい大量の魔力が流されたらむしろ調べやすいし、もっと早く気付いていただろうからね。
「魔力の通り道に、細い線が施されているのを発見したんだ。正確には地面に細い線、通り道を作ってから、魔力を流して繋げたのかもしれんがな」
「魔力を通す細い線……地面に……」
どこかで聞いた覚えが……なんて考えるまでもなく、それはつい昨日俺とフォルガットさんが調べていた事だ。
イオスの言っていた事を考えると、もしかして……。
「その細い線が、北に向かって伸びているんだ。さすがにまだその先まで調べていない。というより、そちらを調べるよりも先に森へ向かっているのを見て、優先したわけだがな」
「北へ……もしかしてブハギムノングの方面にですか?」
「まだはっきりとは言えねぇが、方向としてはそうだ。街道の横に沿うようにして伸びていた」
「やっぱり……」
「ん、リク様。何か思い当たる事でもあるのか?」
「いえ、つい昨日の事なんですけど、ブハギムノングの鉱山で気になる仕掛けを発見しまして……」
地面に走る線と通る魔力というのは、つい最近調べていたような……。
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