ブハギムノングの調査依頼は成功
「成る程のう……それなら、今後は鉱石の運搬が増えると考えて良さそうじゃの。こちらで選ぶ必要はあるじゃろうが、護衛にも冒険者が使えそうじゃ」
「まぁ、鉱夫達はこれからさらに忙しくなるだろうからな。今までとは違って別で手配する必要がある。外から来る商人達は別だが、王都に運ぶにはしっかりした護衛が必要だろう」
「この街でも、冒険者に多少は役割ができそうじゃの。――して、先程あぶり出しとも言っておったが?」
「今回の事が、モリーツさん達と何かの関係があるとしたら、調べる側になった時、怪しい動きをする可能性が高いと思います。なので、本当にかかわっていない冒険者なのかどうか、調べる事もできるかなーと……」
「そうじゃのう……魔物と戦う事も考えられるし、低ランクでは調査継続不可で失敗もあり得ると思うが、試す事はできるじゃろう。調べる目標がわかっているのじゃから、やりやすいだろうしの」
低ランクの冒険者だと、魔物と戦いながら線を追うというのは難しいかもしれない。
そうなった場合はまた別の方法を考えたり、他の冒険者にお願いする事になるだろうけど、現状でこの街にいる冒険者がモリーツさんとの関係があるかどうかというのを、調べる事はできる。
イオスはモリーツさんと自分以外はもういないと言っていたけど、監視する人物を残すくらいだから、報せてないだけで役割を持った人を紛れ込ませているかもしれないからね。
「できるか、ベルンタ爺さん?」
「やり方は少し考える必要がありそうじゃがの。要は、不審な行動をしているか、監視しておけば良いのじゃ。隠蔽したかどうかわかれば、冒険者カードを通じて資格剥奪の後、手配すればいいじゃろうしの。難しいのは、失敗に見せかけて何も情報を得られないよう仕向ける事じゃが……それくらいならなんとでもなる」
「何か、考えがあるんですか?」
フォルガットさんの問いに、考えながら答え、最後にニヤリと笑うベルンタさんに聞く。
「昔取った杵柄というものじゃ。この年になって、企みをするとは思わなんだがの。のんびりと、冒険者の少ないギルドマスターで過ごそうと思っておったのじゃが……」
ベルンタさんには、冒険者を監視する方法に何か考えがあるんだろう。
少し怪しい笑みを浮かべるお爺さんは、俺には計り知れない経験をしてきているようで、言いようのない迫力があった……どんな経験をしてきたんだろう?
ともあれ、何かしらの方法はあるみたいなので、こちらはベルンタさん達に任せておけば大丈夫そうだね。
依頼の内容や成功条件、報酬などを決めて手続きをし、フォルガットさんと一緒に冒険者ギルドを出て、再び鉱山へと向かった。
「しかし、本当に良かったんですか? 俺が勝手に考えてお願いした事なのに……」
「鉱山にかかわる事だからな。なに、心配するな。クォンツァイタの事での利益も見込めるし、何よりリクのおかげでエクスブロジオンオーガの脅威がなくなったからな。これくらいなんでもない」
鉱山への道すがら、依頼の手続きの事をフォルガットさんに聞く。
依頼をする事自体は俺が考えた事なんだけど、その報酬や依頼人はフォルガットさんとなったからだ。
鉱山に関係する事で、責任者としてと言われたけど……言い出したのは俺だから、報酬くらいは払っても良かったんだけど。
……依頼を受けるばかりじゃなく、依頼する側にもなってみたかったなぁ。
手続きをするうえで、依頼書へ色々書く作業は、ちょっと面倒そうだったけど……なんとなく役所の手続きと似ていた――。
「そうか、リクの方もエクスブロジオンオーガは発見できなかったか」
「うん。まぁ、一度合流した時に話したけど、不審な仕掛けを追いかけていたから、鉱山を探索する時間は減ったけどね。でも……」
「こちらが見て回った場所と照らし合わせれば、大まかには回っているか……もちろん、全てではないが大体は調べた事になるな」
しばらく後、完全に日が落ちて夜になったくらいに、鉱夫組合に戻ってソフィーと話す。
俺とフォルガットさんは、線を追っていたり冒険者ギルドへ行っていたために、少々探索時間が減ってしまったけど、地図を見ながらお互いが回った箇所の確認をすると、大まかに鉱山内を見回る事はできたようだ。
まだ細かい道や、地図に描かれていない道なんかもあったりで、全てとは言い難いけど、鉱山の中にエクスブロジオンオーガが残っている可能性はだいぶ減らせたと思う。
「ふむ……よし、ここらで一旦調査は終わったとしよう。リク、ソフィー、ありがとう、助かった」
「いえ、依頼でしたし、お役に立てて良かったです」
「リクに同じくです」
「あぁ。鉱山の調査に関する依頼は、成功として冒険者ギルドに報告させてもらう。まぁ、モリーツ達を見つけた時点で、成功だったんだがな」
「まぁ、本来はエクスブロジオンオーガの発生原因があるかどうか、を調べる依頼でしたからね……」
いつの間に……というより、俺が買って出た部分が大きいけど、結局鉱山にいるエクスブロジオンオーガをほぼ殲滅してしまった。
そもそもエクスブロジオンオーガのうち、赤い肌をした奴が問答無用で爆発するからなんだけどね……結界を張らないと衝撃が鉱山に伝わるのをどうにもできなかったから。
ルジナウムの事があって、さらにアメリさんを助けたりと、忙しくなってしまったけど、なんとかやらなきゃいけないうちの一つが終わってくれた。
まだ、完全にエクスブロジオンオーガがいなくなったとは保証できないけど、残っていても数体程度だろうし、緑の奴であれば鉱夫さん達でも対処できる事がわかったからね。
とりあえずは片付いたと、一安心だ。
「リクが考えたギルドへの依頼もあるから……明日にでも俺が報告しておこう。リクは後で報酬を受け取るといい」
「はい、ありがとうございます」
報酬はパーティに分配されるから、モニカさんには後で渡すとしよう。
ルジナウムでの報酬もあるはずだから、そちらはソフィーにもだね……役割とかは分けたけど、パーティなんだから平等に、だ。
それに、ソフィーがこちらにいてくれたから、気兼ねなくルジナウムに行って襲って来る魔物と戦えたし、モニカさんが向こうにいてくれるから、こちらでモリーツさん達の目論見を阻止できたからね。
エアラハールさんも協力してくれたし、ユノも頑張ってたから、そちらにも報酬から分け前と、フランクさんからの報奨金からも分配しないとなぁ……このあたりの計算は、モニカさんに任せた方がいいかもしれない。
俺自身が計算できないわけじゃないんだけど、獅子亭で慣れたモニカさんの方が適任だろう……きっと。
「それで、確か王都との作戦に合流するのは明後日だったな? 明日はどうするんだ?」
「ん~、ルジナウムの様子を見に行っておこうかな。数日空いたし、向こうで何か新しい発見があるかもしれないから。ソフィーも行く?」
「そうだな……モニカやユノとしばらく顔を合わせていないし、エアラハールさんに訓練を見てもらいたいが……念のため私はここにいる事にしよう。もし、エクスブロジオンオーガが残っていたら、すぐに対処できるようにな。……エルサがいないから、赤いやつは少し難しいが」
鉱夫組合での話を終え、夕食も食べ終わって宿でゆっくりしていると、部屋を訪ねてきたソフィーに明日の予定を聞かれる。
俺は、フランクさんやモニカさん達が調査をしている進捗が気になるから、ルジナウムに行こうと思うけど、ソフィーは念のためここに残るようだ。
もしもに備えてという事で、ありがたいね――。
もしものことが起こった時のために、ソフィーは残ってくれるようです。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。






