魔力を蓄積させる鉱石
アルネやフィリーナと話し終わって、今日はもう遅いし、王城で休む事にするかな……と考えていたら、部屋から出る前にアルネが思い出したと、鉱石の話を始めた。
魔力を蓄えられる鉱石……つまり、結界を維持する魔力を保持できる、ヘルサルのガラスに代わる鉱石の事だね。
「何か、わかったの?」
「あぁ。クォンツァイタという鉱石だ。苦労したぞ……名前自体は、鉱石が記されている書物に載ってはいたのだが、ほとんどが役立たずの鉱石って扱いだったからな」
「役立たず?」
大量の魔力を蓄えていられるという性質があるのなら、魔法具にも使えるだろうし、有用な鉱石と言われ散手もおかしくない気がするんだけど……。
「クォンツァイタは、多くの魔力を蓄積できるという性質があまり知られていないようだ。まぁ、これはリク程の魔力を持ち、それを利用する方法を考えていないからだろうな。鉱石として何かに使える物であれば、いずれ誰かが気付いたのかもしれんが……どうやらクォンツァイタは、武具に加工できない鉱石なんだが、崩れやすく宝石にもできないらしい」
「魔力を蓄積する以外では、使う事がないから見向きもされていなかったって事だね?」
「そのようだ。だから、発見され産出されてもクズ鉱石として扱われ、捨てられているようだな。使用法がないのだから、仕方ない事だが……」
どう扱っていいかもわからず、鉱物としての資源にならないのであれば、クズ鉱石として扱われるのも仕方ないのかもしれない。
鉱山の人達は、わざわざ使い道のない物を掘り出す余裕はないだろうし、なんの利益にもならないのなら、商人達も扱わないだろうからね。
必然、クズ鉱石として扱われて、魔力を大量に蓄積できる性質を発見されずに捨てられていたってわけだ。
「それ、ブハギムノングにもあるかな?」
「クォンツァイタ自体はあるだろう、多くの鉱山で発見されているようだからな。だがまぁ、扱いが扱いなので、発見されても喜ばれたりする物じゃないから……」
「捨てられているか、掘り出されてすらいないか……だね?」
「あぁ」
「ブハギムノングに戻ったら、鉱夫さんに聞いてみるよ。あちらの鉱夫組合長さんとも知り合いになれたし、クズ鉱石だとしても知っているだろうからね」
「そうだな。他にも使えない鉱石はあるだろうから、特徴を教えておく……」
アルネから、クォンツァイタの特徴を聞いて覚える。
名前を言っても、フォルガットさんが知らなかった場合、特徴を伝えれば思い出してくれるだろうからね。
クォンツァイタの特徴は、薄っすら白く見えて、ガラスに近い光沢と透明感があり、ほとんどがひび割れている状態らしい……だから、宝石には加工できないって事だ。
あとは、魔力を蓄積する段階によって、色が変わるらしく、魔力を少しでも蓄積している状態であれば、紫に近いピンクになっていて、満タンまで魔力蓄積された状態だと、綺麗な黄色になっているらしい。
多くの場合は、ピンクの状態で発見される事が多く、なんらかの影響で既に多少なりとも魔力を蓄積している事が多いからとの事だ。
薄い白色の、魔力を一切蓄積していない状態で発見される事は珍しく、それが魔力蓄積できる鉱石だと考えられていなかった原因の一つでもあるんだろう。
とりあえず、どんな色でも性質が損なわれる事はないので、クォンツァイタであるなら問題ないみたいだ。
ひび割れがあるのは元々の状態だから気にしなくていいし、乱雑に扱われたらガラスのように割れてしまう事も多々あるので、できれば大きな塊で有った方が望ましいと……大きければ大きい程、蓄積できる魔力量も上がるかららしい。
あと、不純物が混じっている事があるらしく、中に別の色の鉱物と思われる塊があるような物は、魔力蓄積に向かないどころか、魔力を消費してしまうらしいので、完全にクズ鉱石と見て問題ないそうだ。
とりあえず、クズ鉱石と呼ばれていて、ひび割れのある加工ができない鉱石で、黄色や紫っぽいピンク、薄い白の色が付いている物と聞けば、フォルガットさんに伝わるだろう。
「とりあえず、俺が確かめるために少しでも持ち帰って欲しい。できれば、大量に欲しいとも思うが……」
「そこは、向こうで見てからだね。まぁ、姉さん辺りが大量に欲しがりそうだけど……」
「魔力蓄積は、陛下が考えている事と、リクが協力するために必要な事だからな。そちらは、俺から説明しておこう」
「うん、お願い」
ハウス栽培のための結界を維持する、そのために必要な鉱石だから、姉さんに話したらすぐに飛びつきそうだ。
先にアルネ達にはこれまでの事を話したけど、姉さんから改めて話があるだろうし、フィリーナがヴェンツェルさんに同行するという話もあるから、その時に話してもらえばいいかな。
アルネとフィリーナを見送り、数日ぶりに王城でのお風呂を堪能してエルサもしっかり洗ってやり、ヒルダさんにお礼を言って下がってもらってから、床に就く。
「あれ、そういえば……」
「だわぁ……だわぁ……」
寝ているエルサの寝言のような寝息を聞きながら、ふと思い出した。
ハウス栽培って、農地を覆うだけで完成するんだっけ? 何か重要な事が抜けているような気がするけど……それが何かわからなかった。
「まぁ、なんとかなるか。一度、ヘルサルに行ってどうなっているのか確認したら、わかるかもしれないし……」
エルサを起こさないよう、小さく独り言を呟きながら、モフモフを堪能して目を閉じた。
考えてもわからないし、思い出せないのなら俺が知らない事だろうから、今は考えても無駄なんだろうな――。
―――――――――――――――
「ちょっとだけ遅れ気味だから、少しだけ速めで飛んでくれー!」
「わかったのだわー」
翌朝、出発までに少し時間を取られてしまい、遅れ気味の予定を取り戻すように、王城から飛び立ったエルサの背中で移動を早めてもらうようお願いする。
遅くなった原因は、主にヴェンツェルさんと姉さん。
朝食を食べ終わったあたりで、ハーロルトさんから話を聞いたヴェンツェルさんが部屋に来たんだけど、その時にエアラハールさんとの訓練の成果を見せて欲しいとお願いされた。
なんでも、久々に歯ごたえのありそうな実戦に備えるため、俺と模擬戦をして鍛えておきたいらしい。
実戦というのは、アメリさんが見つけた研究所らしき家に行く事だろう、オーガが待ち受けている可能性を考えて、いつもより生き生きしていた……横でハーロルトさんが、書類仕事もそれだけ意気込んでやって欲しいと溜め息を吐いていたけど。
とはいえ、俺の訓練の成果と言っても、エアラハールさんから教えられ始めてまだ短いし、不十分だからと断り、ハーロルトさんに引きずられて連れていかれた。
ようやく出発できると思っていたら、その直後に姉さんまで来て、昨夜アルネと話した魔力を蓄積させる鉱石の事を聞いたらしく、興奮した様子で詰め寄られた。
多分、アルネが研究に集中するため、早朝から書庫にこもる前に姉さんへと話を通したんだろう。
国に住む人達のためになるから、協力は惜しまないつもりだし、必死でお願いされなくても……という感じだった……こちらはヒルダさんにお任せだ。
その後は、改めて助けたお礼を言いにアメリさんが来たりという事もありつつ、遅れを取り戻すためにさっさとエルサに乗って、王城を出発した。
昼までには、中継地としてルジナウムに着いておきたいから、ちょっと急がないとね――。
のんびり飛んで移動するつもりが、思わぬロスをして少しだけ急ぐ必要があるようです。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。






