エクスブロジオンオーガ全滅
目には見えないが、今俺の体は透明な結界で全身を覆われている。
結界と体の間に少しだけ隙間を空けて、空気の入る余地を残しているし、穴も開けてあるので呼吸ができなくなる事もない……多分。
長時間このままだと、ちょっと不安なのでさっさと決着を付けよう。
まずは、一番俺に近く腕を振り下ろしたけど、結界に阻まれて俺まで届かず、疑問の声を上げているエクスブロジオンオーガからだ!
「せい!」
「ギィ!?」
拳で、エクスブロジオンオーガの顔面をぶん殴る。
正確には、体を覆っている結界でぶん殴ったんだけどね。
力を入れ過ぎたのか、右手でフックをするように殴ったんだけど……エクスブロジオンオーガの首だけが真後ろにグルンと曲がって、次の瞬間爆発。
爆発威力の低い方だったけど、思った通り衝撃は一切感じない……大丈夫そうだ。
「次! てやぁ!」
「ギ……」
お次は、後ろから来ていたエクスブロジオンオーガ。
クロスカウンター……なんて器用な事はできない代わりに、向こうが殴りつけてきた拳を体……もとい結界で受けとめつつ、こちらの拳をお腹へと突き刺す。
拳だから、殴るとか打ち付けるだと思うけど、文字通りお腹の皮膚を破って突き刺さってしまった。
結界が硬いおかげもあるんだろうなぁ。
そのまま、俺の拳をお腹に埋め込んだ状態で、エクスブロジオンオーガが爆発。
押されるような感覚がするのは爆発が強いからだろうけど、結界を俺の体の動きに合わせる以外は固定している……つまり、体を動かす以外で結界が動かされる事はないため、影響はほとんどない。
空気穴も小さくしたおかげで、中に入って来る衝撃もほとんどないし、このやり方は成功のようだ。
あとは……。
「ギィ!」
「ギ……ギ……」
エクスブロジオンオーガが爆発によって、崩した体勢をすぐに立て直して再度襲い掛かってくるけど、それには構わずソフィーの方へと視線を向ける。
そちらでは、エルサが結界だと思われる魔法を発動して、衝撃を受け止めているようだ。
あっちも大丈夫そうだね……何かエルサが口を開いて叫んでいるようだけど、お互いの結界があるためこちらまで声が届かない。
至近距離にいるエクスブロジオンオーガの声は、空気穴を通してかろうじて聞こえるけど……。
「よし、それじゃ一気に行こう! せい! やぁ! はぁ!」
「ギィー!」
「ギ……ギ……」
「ギ……」
俺の結界に拳を打ち付けているエクスブロジオンオーガの顔面に、こちらからも拳を打ち込んで殴り飛ばす。
右横にいる奴には、後ろに振り向くついでに裏拳を叩きこみ、衝撃で首を折る。
さらに後ろに来ていたエクスブロジオンオーガには、振り向いた勢いのまま左手の拳を胸の部分に突き刺す。
一秒程度の沈黙の後、それぞれが爆発。
その爆発の衝撃で体勢を崩したエクスブロジオンオーガに、拳や蹴りを打ち込んでいく。
グリーンタートルとかと戦った時と違って、俺が直接触れているわけではないため、破裂はしないようだけど、その代わりにエクスブロジオンオーガが爆発してくれるから、止めを刺す必要がない。
広場そのものは結界で包んでいるし、ソフィーはエルサが守っている。
俺自身も結界で覆っているために、適当に殴れば倒せるのは楽でいいね。
ちなみにだけど、俺は格闘なんてほとんどわからない。
ボクシングみたいにフックやらストレートやらを打ち込んでいるけど、それは見様見真似。
多分、見る人が見たら動きや構えがなっていない……とか言われるんだろなぁ。
「これで……最後っと!」
「ギ……」
「な……な……な……」
適当に体を動かして、残った最後の一体に拳を打ち込む。
俺の拳を受けたままの形で、爆発するエクスブロジオンオーガの衝撃が収まるのを待つ。
黒装束の男は、あっという間に倒されて次々と爆発していく様を見て、何やら震えている様子だね。
……爆発が次々と起こり過ぎて、何度も体が結界に打ち付けられていたようだから、それで痛がっているのかもしれないけど。
「ふぅ……これで完了だね。……さて」
「くそっ! 貴様ぁ!」
「ん?」
エクスブロジオンオーガがいなくなった事を確認し、一息ついた後、男の方へと視線を向ける。
その瞬間、やけくそなのかなんなのか、モリーツさんを突き刺した剣を持って、斬りかかってきた。
ソフィーくらいの速さで、結構な実力者と思える威力があるみたいだけど……。
「なんだと!?」
「あー……」
当然、俺が何もしなくとも、結界によって阻まれる剣。
結界の方から衝撃とかを感じる事もないし、速度は同じくらいでも、威力はソフィーの方がありそうだ。
「一体……何をしたんだ!!」
「何をしたって言われても……魔法?」
「こんな魔法があってたまるか! 道を塞ぎ、エクスブロジオンオーガの爆発すら防ぐ……さらには私の剣さえも! どうなってる!」
「どうなってるって言われてもなぁ……」
あってたまるかと言われても、実際に魔法を使っているんだからそれしか言いようがない。
他に言うとしたら……ドラゴンの魔法だとか、それくらいだけど……この男にそれを教えてあげる義務もなければ義理もないからね。
「とりあえず、諦めてくれないかな? 色々話を聞きたいし……」
「何を馬鹿な事を! 私が簡単に口を滑らせると思うな!」
「まぁ、そうだよねぇ……だったら……」
「っ!?」
さすがに、モリーツさんと違って簡単に話を聞ける相手じゃないようだ。
まぁ、口封じの役割があるみたいだし、口が軽くて情報を漏らすような人には務まらないか。
とりあえず、何度も振られてどうにかして俺を斬ろうとしている剣を、結界で覆われた手でつかみ、少し力を込める。
あまり丈夫な剣ではなかったらしく、それだけで簡単に折れた剣に、男は驚愕して言葉をなくした。
「それじゃ、とりあえず捕まえさせてもらうよ。ここで話さなくとも、捕まった先で話してくれればいいから」
男が簡単に喋るような人間じゃなくても、俺は構わない。
そもそも、俺が情報を聞き出して詳しく調べる……といった機関の人間じゃないし、エクスブロジオンオーガを始めとした、鉱山内での調査はモリーツさんから聞いた事で、ほぼ完了しているから。
あとは、ハーロルトさんのような国の機関に任せれば、そっちで尋問とかをしてくれるだろう。
拷問とまで、はさすがにやって欲しくないけど……姉さんが女王様という最高権力者だから、多分大丈夫だ。
「ま、待て! 私を捕まえてどうすると言うのだ!」
「いや……国に引き渡して取り調べしてもらうよ、もちろん。俺は冒険者だし、そんな権限はないけど……捕まえて事情を話して、調べてもらうくらいはできるはずだし」
「……くっ……ふ……ふははははは!」
「ん?」
国に引き渡されると聞いて、一瞬悔しそうな声を漏らした男。
だけど次の瞬間、いきなり笑い出した。
なんだろう……おかしくなったのかな?
「私を捕まえていいのか?」
「え?」
「私は、この街で重要な役割を帯びている。もし私がこの場所、この街から離れたら、恐ろしい事が怒るぞ?」
「……負け惜しみ、かな?」
「そう思いたければ思えばいいさ。そして、ルジナウムが壊滅して後悔するがいい!」
「ルジナウム……?」
この男を捕まえる事と、ルジナウムの街と一体なんの関係があると言うのか――。
何やらルジナウムとの関係があるようですが……?
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