白衣の男性との会話
エルサは、俺の頭にくっ付いたまま暢気に真似をしたと状況を俯瞰している様子だけど、あれも試験管を壊さないためなんだろう。
先の様子を見るに、他の試験官にもエクスブロジオンオーガが入っていそうだし、爆発したら衝撃で倒れたり割れたりしそうだしね。
「くっ……さすがに二体を凍らせるのは、少し無茶だったか……リク程とは言わないが、もう少し魔力があればな……」
「ど、どういう事だ! なぜ爆発しない!?」
「……向こうは、凍らせたら爆発しない事を知らないようだね? ――大丈夫、ソフィー?」
「なんとかな。足止めが本来の役目だから、さすがに全身を凍らせるというのは無茶が過ぎたようだ……ふぅ……」
エクスブロジオンオーガを完全に凍らせたあたりで、ソフィーが膝をついて呟く。
白衣の男性は爆発しない事を驚いていた。
爆発する事は、エクスブロジオンオーガを使っている事から知っていてもおかしくないけど、凍らせると爆発しないというのは、知らなかったようだ。
……まぁ、全身を完璧に凍らせるなんて、そうそうやる事じゃないしからね。
白衣の男性が愕然としているのを見ながら、ソフィーへ近付いて声をかける。
やっぱり、ちょっと無茶をしたようで、魔力がかなり減って辛い様子だ……でも、息を吐いてすぐに立ち上がった。
動けない程じゃなさそうだけど、しばらく魔法を使うのは厳しそうだね。
魔力が完全に枯渇したら命の危険があるんだから、余り無茶はしないで欲しい……。
「とはいえ、アルネとフィリーナには感謝しなくてはな。以前魔法具の調整をしてもらったおかげで、思っていたより威力があった。それがなければ、こんな事をしようとは思わなかっただろうがな」
そういえば、モニカさんとソフィーの魔法具は、アルネとフィリーナに調整してもらってたっけ。
無駄な部分を省いて、威力をアップしてくれた。
まぁ、俺の使っている剣は調整できなかったけど……。
「とりあえず、ソフィーは休んでて。後は俺が話すから」
「……話が通じそうな相手ではなさそうだが、まぁいいか。任せっ! っと……今更、斬り離した部位が爆発か」
「……あっちは、凍らせてなかったしね。まぁ、小さい部位だから衝撃もほとんどないし、あっちも大丈夫そうだよ」
「ふぅ。それでは、私は適当に凍ったエクスブロジオンオーガを、離れた場所へ運んでおこう。エルサ程の威力は出ないから、もう外側が解け始めている」
「うん、わかった。もしものために結界はそのままにしておくよ」
「あぁ……」
「な……な……なっ!」
俺の言葉に頷き、ソフィーが離れようとした瞬間、先程剣で斬り離して地面に転がっていたエクスブロジオンオーガの腕が爆発した。
時間差で爆発したために、ちょっと驚いたけど、小さい部位だったために衝撃はほとんどなく試験管の方にも影響はなし。
エルサと違って一瞬で全身を凍らせたわけじゃないから、今氷の中でエクスブロジオンオーガが力尽きたんだろうと思う。
意識というか、完全に命がなくなった瞬間に爆発……という今まで経験してきた条件の一つが正しいなら、だけど……多分間違っていないと思う。
とりあえず、凍ったエクスブロジオンオーガは表面が少し溶け始めているので、ある程度解けたら爆発してしまう事を考え、ソフィーに任せて運んでもらう。
結界のおかげで鉱山には影響がなくとも、試験管に影響がないように、だね。
持つというより、横に転がして運び始めたソフィーを横目で確認した後、白衣の男性の方へと近寄る。
その男性は、俺達……というかソフィーが軽々エクスブロジオンオーガを対処した事と、爆発しなかった事に驚いて、空いた口が塞がらないと言った様子だ。
「えーと、とりあえず話しませんか? エクスブロジオンオーガをけしかけても、無駄とわかったと思うので……」
「なんなのだ、お前達は!!」
「なんだと言われても……ただの冒険者ですよ?」
「冒険者ごときが、エクスブロジオンオーガを……いや、そこらのなら可能だろうが、私の作ったエクスブロジオンオーガを、倒せるはずがない!」
「いや、そう言われましても……実際に倒してますし、ここまで何度も倒して来たので……というか、今、私の作ったって言いませんでしたか?」
手が届く距離より少し離れた辺りまで近寄り、白衣の男性に声をかける。
俺の声でようやく正気を取り戻し……てはいなさそうだけど、とりあえずハッとなってようやく視線が合うようになった。
そこから出た言葉が、何者かっていうのはどうかと思うけど……ただの冒険者です、えぇ。
だけど、ちゃんと答えたのに微妙に信じてもらえなかった。
それはともかく、今、確かに私の作ったエクスブロジオンオーガって言ったよね?
そこらの……というのが緑の肌をしたエクスブロジオンオーガだとしたら、赤みがかった肌をしているのは、もしかしてこの人が何かしたから……とか?
「もちろんだ! あのエクスブロジオンオーガは、私が作った傑作だ! 核を持ち込み、魔力を与える事でエクスブロジオンオーガを作り出し、そこからさらに手を加える事で、通常よりも爆発を激しく……そして、最後には必ず全てが爆発して周囲を巻き込む! 私が手を加えた痕跡も残さないと言う、一挙両得の作品なのだ!」
「核……魔力で作り出す……?」
眉に皺を寄せて聞いてみると、何かスイッチが入ったように朗々と語り出す、白衣の男性。
自分の誇れる事を聞かれたら堰を切ったように語り出すのは、研究者という風貌に相応しい。
人と積極的に接していないから、とりあえず知っている知識とかを、自慢するように話し始める人が研究者……という認識は、さすがに偏見が過ぎる気もする。
目の前の男性を見れば、間違いではないとも思えるけどね。
「そうだ! 魔物の全てではないが、一部は核に魔力を込める事で体が復元するのだ! まぁ、単純な魔物にしか核はないようだがな……」
「単純……」
それは、体の作りがとかの事だろうか?
エクスブロジオンオーガは、爆発するという性質以外だと、体の形自体は人間に似ている……ちょっとサイズは小さくて子供くらいしかないけど。
それに、知性の面も基本的に、人間を見つけたら力任せに襲い掛かるくらいしかできなさそうで、道具を使うくらいは考えられるようだけど、それも持ち上げて振る、相手に打ち付けるくらいだ。
有効に使う方法を考えていない様子なのは、今まで戦ってきてわかってる。
驚いたり戸惑ったりする事もあるけど、それは動物の本能みたいなもので、何も考えず命令に従う人形とかではなく、生きているという証とも言えるのかもしれない。
魔物の核というのは初耳だけど、心臓と似たような役割をしているのか?
それだって、そこから体を復元って……いや、ある意味単純な魔物だからこそできるのかもしれない……。
「そして私は、復元される過程である事に気が付いた……」
「……ある事……それは?」
話を聞けるならありがたいと、俺から続きを促すように質問した――。
どうやら男性は、ここでエクスブロジオンオーガを作り出していた……と言えるようです。
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