エクスブロジオンオーガの情報
「そうですか……あの場所は我が領地ではありますが、領内のみならず国内で一番の鉱山となっております。要衝と言えるのは間違いありません。……もしや、あちらでも複数の魔物が?」
「いえ、あちらはエクスブロジオンオーガという魔物がいるだけです。まぁ、その魔物が爆発したりするので、あまり強い魔物でなくとも、ちょっと厄介なんです」
「話を聞いた限りだと、ちょっと厄介程度ではないんだけど……リクさんがいるおかげで、なんとか倒せるのよねぇ……」
エクスブロジオンオーガの説明をする横で、モニカさんが小さく呟く。
確かに、結界で包むという事をしなければ、爆発の衝撃が原因で対処が難しいのは間違いないね。
「エクスブロジオンオーガ……ですかな? それはどういった……」
「閣下、エクスブロジオンオーガは鉱山などの、鉱石が採掘場所で時折見られるという魔物です。ブハギムノング鉱山では、今まで発見された事はありませんでしたが……」
「……そのエクスブロジオンオーガは、強力な魔物なのか? リク殿が言うには爆発するらしいが」
「いえ、オーガ種なので力は強いのですが、体は小さく戦う相手としては容易と言えます。道具を使う程度の知性があるのは、他のオーガと同様です。ただ、リク様も言っていますが、厄介なのがその性質です。エクスブロジオンオーガはいつでも、自分の意思で体を爆発させる事ができるのです。爆発自体は軽い怪我をするかどうか程度で、規模は小さいですし、エクスブロジオンオーガ自体も命の危機に晒されるなどの状況でもない限り、爆発しません」
「ふむ……となると、リク殿が対処しなくとも倒すのは容易なのだろうな。だが、鉱山か……そこで爆発となると……」
「はい。フランクさんの考えている通り、今鉱山では爆発させる事を忌避して対処ができなくなっています。一応、俺が考えた方法で、なんとか爆発しても問題ないようにできるのですが……」
フランクさんは、魔物が出たという事は知っていても、どんな魔物かまでは知らなかったようだ。
フィネさんが進み出て、エクスブロジオンオーガについての説明をしてくれる。
そして、爆発の規模は小さくとも、それが鉱山の内部で行われるという事で、フランクさんも危険性に気付いたようだ。
フィネさんに続き、俺も鉱山の街の状況と一緒に、結界などの対処方法を説明した。
……というか、エクスブロジオンオーガって元々鉱山とかに生息する魔物だったのか。
ブハギムノングでは確認された事がなかったみたいだけど、それは採掘していた場所の話で、山の中には元々いたのかもしれないね。
それこそ、昨日発見した穴のように、どこかが崩落してエクスブロジオンオーガの棲み処と繋がった、という事もあり得そうだ……というのは、向こうでも聞いた話だ。
なんにせよ、まだ俺達の知らない情報があるようだし、やっぱり人から話を聞いて情報を集めるって事も重要だなぁ。
「さすがはリク殿、ですな。では、その結界とやらがあればエクスブロジオンオーガが爆発しても問題ないと……」
「はい。とはいえ、それが使えるのは俺とこのエルサだけなので、現状ではどちらかがいないと対処が難しいんです」
「そうですか……リク殿がこの街にいてくれれば心強いとは思っていたのですが、鉱山の方も対処する必要がありますな。長い間鉱山での採掘作業が滞れば、国中に影響が出てしまいます」
「えぇ。なので、俺は鉱山を担当し、こちらの街ではモニカさんが調査を進めるようにしています。数日おきに様子を見るようにして、ルジナウムでもしもの事があればすぐに駆け付けるとも」
どちらの調査、解決に向けての対処も必要な事を確認し、お互いの場所で連携するようにしている事を説明。
フランクさんも理解してくれたようで、頷いてくれた。
まぁ、目先の事にとらわれるなら、まずは街近くの魔物達への対処を……と考えるだろうけど、鉱山は国の要衝でもあるから、そちらの事もちゃんと考えなければいけない。
その事をフランクさんはわかっているようで、どちらを優先という事は言われなかった。
「リク様……申し訳ありませんが、その鉱山に出たというエクスブロジオンオーガの情報で、間違いがあるのではないですか?」
「え、そうですか?」
ふと、結界の説明と一緒にエクスブロジオンオーガが爆発する条件がわからないという説明をしてから、考え込んでいる様子だったフィネさんが声を上げた。
兜で顔は隠されていたけど、籠手を着けた手を顎まで持って行って俯いていたから、なんとなく考え込んでるんだろうなぁ、と見ていたくらいだけど。
それにしても、エクスブロジオンオーガで間違った情報……かぁ。
実際に見て確認した事を伝えたと思ったんだけど、どこか不足があったのだろうか?
「はい。エクスブロジオンオーガは、自分の意思で爆発します。先程も言ったように、命の危機に瀕している場合でもない限り爆発はしません。それこそ、エクスブロジオンオーガの方に戦う意思があれば、爆発はしないのです。なので、対処方法で一番正しいのは、爆発するという意思を持つ前にさっさと息の根を止める……という方法になります」
「意思を持つ前に……? ですけど、俺が戦ったエクスブロジオンオーガは、完全に息絶えている状態から爆発していたと思いますが……」
「そこなのです。私が知っている情報では、息の根さえ止めてしまえば爆発はしないのです。なので、そこが間違いではないかと考えたのですが……」
「意思によって爆発するのなら、確かにフィネさんの言う通りかもしれませんが……でも、俺達が戦った時、ソフィーが首を斬って倒したのですが、その時胴体も頭も切り離されていたにもかかわらず、両方爆発したのを確かに見ました」
「両方……いえ、最悪切り離された瞬間に爆発の意思が働いたとしても、それで爆発するのは頭部だけのはず……離れている体に、意思を伝える事はできませんからね」
フィネさんがおかしいと思ったのは、俺が説明する中で言った倒した瞬間、つまり息の根を止めた瞬間に爆発するという説明だった。
フィネさんから聞いた内容だと、確かに息の根を止めれば爆発はしないだろうし、頭部が切り離されたら胴体へ意思を伝える事ができないために、体が爆発する事はない。
でも確かに、ソフィーが倒したエクスブロジオンオーガが爆発するところを、俺だけでなくエアラハールさんやエルサ、それこそ斬った本人であるソフィーも見ている。
……情報が食い違っている? それとも、フィネさんが知っている情報が間違っているのか……?
「……申し訳ありません。私は実際にエクスブロジオンオーガと対峙した事はなく、冒険者から聞いた情報をもとにしているので、間違っているのだと思います。実際に見たリク様の方が正しいかと」
「不確かな情報か。人から聞く情報というのは、そういう事もあるからな」
「いえ……待って下さい。もしかしたら、間違ってないのかもしれません」
「間違っていないと? しかしリク殿、実際にリク殿が見た時にはフィネが言った事は別の方法で爆発したのでしょう? でしたら、フィネが聞いていた情報が間違っているという事なのでは?」
フィネさんが言った事は間違った情報なのでしょうか……?
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