冒険者報酬の受け取り
冒険者ギルドの副ギルドマスターのヤンさん、ヘルサルの街の代官であるクラウスさんとその秘書のトニさん。
この三人を獅子亭の店内に連れて入ったところで、ヤンさんに気付いたマックスさんが立ち上がった。
「おお、ヤンじゃないか、副ギルドマスターのお前がこんなとこに来てどうした?」
「マックスさん、お邪魔します。今日はリクさんが目を覚ましたと聞き及びましたので、今回のゴブリンに対する報酬等の話をしようと思いましてね」
ヤンさんはマックスさんに挨拶をしながら、マックスさんやマリーさん達が座っていた場所に行った。
クラウスさんとトニさんを連れて俺も先程まで座っていたテーブルについた。
「マックスさん、ここで話をしても良いですか?」
「誰かと思えば代官様か。まあ、ここのメンバーなら話を聞いて変な事をするのはいないだろうからな、大丈夫だろ」
「ありがとうございます。それでは失礼して」
マックスさんに許可を取ってすぐ、クラウスさんは俺の向かいに座った。
トニさんはクラウスさんの後ろで控えているようだ。
ヤンさんもクラウスさんの横へ座った。
獅子亭にいた他のメンバーは、俺の隣にマックスさん、もう片方にモニカさん。
マリーさんやソフィーさんは近くのテーブルについて話を聞く体制に入った。
ルディさんとカテリーネさんは厨房へお茶を淹れに行った。
すみません、本来は俺の客なので、俺が淹れないといけないのに……。
「さて、代官様の話よりもまず、私の話からとしましょうか。冒険者の報酬に関してなので、早急に決めないとと思います。よろしいですか?」
「ええ、構いませんよ。私もここで聞かせてもらいますが」
「はい、どうぞ」
ヤンさんがクラウスさんに一言断り、まずはと話し始めようとしたタイミングで皆のお茶をカテリーネさんがテーブルに置いて行く。
お茶を一口飲みつつ、ヤンさんが話し始めるのを聞いた。
淹れたばかりのお茶は少し熱かったけど、何とか顔に出さずに済んだ……猫舌は辛いね。
「それではまず、最初の魔物調査の依頼報酬ですが、これはゴブリンジェネラルを発見、討伐したことにより原因判明とみなし、依頼成功とします」
「ゴブリンジェネラルが原因だったんですか?」
ゴブリンの軍が襲って来るって事に気を取られてジェネラルを倒してからまともに調査をしてなかったんだけど……。
「我々冒険者ギルドは、ゴブリンの軍が近づいて来てる事を察知した魔物が辺りからいなくなったと結論付けました。その他に、ゴブリン達がヘルサルの街へ侵攻して来るにあたってジェネラルや他多数のゴブリン斥候部隊がこの辺りの魔物を襲っていた様子もありましたので、結果ヘルサルの街周辺から魔物の数が激減したという事だと思われます」
「成る程」
「簡単に言うと、ゴブリンの軍がこの街へ来るという過程で魔物の数が減少。ゴブリンジェネラルが街近くで発見という事で軍勢での侵攻を察知出来ました。結局、全てゴブリン達のせいだったというわけですね」
迷惑なゴブリン達だな。
ヤンさんの話はある程度想像していた通りだったのか、皆頷きながら静かに聞いている。
「それで、魔物調査の依頼達成報酬が金貨5枚となります。こちらですね」
持っていた鞄から小さな麻袋を取り出してテーブルの上に置いた。
「はい、ありがとうございます」
「いえ、お礼はこちらが言いたい事ですよ。初めての依頼で指名依頼という難度の高い依頼を無事成功させてくれたのですから」
ヤンさんの話を聞きつつ、モニカさんが麻袋を確認。
しっかり金貨5枚が入ってる事を確認していた。
「確かに、頂きました」
モニカさんの確認を受け、ヤンさんが頷き次の話しへ変わる。
「それでは、ヘルサルの街防衛の強制依頼報酬、準備時の連絡役等々の報酬、ゴブリン殲滅の成果報酬となりますが……」
「ん? どうかしましたか?」
どう言った事に報酬が出るのかの説明の後、ヤンさんが言い淀んだ。
なんだろう、何か言いにくい事でもあるのかな?
報酬が少ないとか? でもまあ多少少なくても俺は街が守れた事で満足してるから、いいけどさ。
「それがですね……ちょっと量が多過ぎまして……報酬の全てを持って来れなかったんです……」
「多過ぎる、ですか?」
「はい。報酬につきましては金貨1000枚になるのです。さすがにその量を私一人で持ち運ぶわけにもいかず……とりあえずと200枚程持って来させて頂きました」
「……1000枚……ですか……本当に?」
「ええ。ゴブリン1匹が銅貨5枚で、軍の数が10万。これだけで500枚相当なのですが、軍のうち半分近くで上位種の確認がされました。ゴブリンソード、ゴブリンアーチャー、ゴブリンマジシャン、ゴブリンナイトの4種に加え、ゴブリンジェネラルがいました。さらに軍で行動しているならば必ずゴブリンキングがいるはずです」
「……」
「それら全ての討伐報酬と、強制依頼報酬と連絡役等の報酬を加えて計算したら、金貨1000枚となりました。ただ、実際の種類の数を詳しくは計算してないので概算になりますが……」
「……そう、ですか」
俺、あまりの金額の多さに驚いて背中から汗がだらだら流れてる。
「キューがいっぱい買えるのだわ?」
ボソッと呟くエルサ。
お前はキューしか頭にないのか? というか起きてたのか……。
というか金貨1000枚って……日本円にしたら確か、1億円くらいの価値だと思うんだけど……俺がこんな大金貰っていいの?
「はっはっは! 金貨1000枚か、一財産だなリク」
「リクさんが寝てる間に魔物調査依頼以外の報酬を私は貰ってたし、他の皆も貰ってるはずだから、これはリクさん一人だけの報酬ね……個人でこれだけの報酬が出るって……」
「老後はリクに養ってもらおうかねえ」
「正当な報酬なのだろうが、金額が大きすぎてよくわからんな」
「リク様はそれだけの事をしたのですよ」
マックスさんは笑い、モニカさんは呆気に取られ、マリーさんは何か不穏な事を言ってるし、ソフィーさんは首を傾げてクラウスさんはニコニコしながら頷いている。
ルディさんとカテリーネさんはただ茫然としてる、まあ金額が多過ぎて驚くしかないよね普通は。
大金過ぎて実感も湧かなければ、このお金をどうしようかも全然わからないんだけど……。
「まずは今回持ってきた金貨200枚の確認を。それと、残り800枚につきましては冒険者ギルドに来て頂ければいつでも引き出しが出来るようにしておきますので」
「冒険者ギルドは金を持ち運べない事もある冒険者に対して、預り所のような事もやってるんでしたっけ?」
「ええ、そうです。Cランク以上であり、信頼のおける冒険者ならばお金を預かる事も出来ますし、引き出すことも出来ます。金額や履歴等は冒険者カードに記録されます。これはどの街の冒険者ギルドに行っても出来るので、便利ですよ」
ようは利子のない銀行って事か。
さすがに貸し出しやローンなんかはないだろうけどね。
ローン地獄って聞くだけでも嫌だよね、俺はローン自体やった事ないけど。
「はい、確かに200枚確認しました」
俺の隣で金貨を数えていたモニカさんの確認が終わる。
「ありがとうございます。モニカさん」
「いえいえ、私はこういうのが得意ですからね。獅子亭でもお会計を担当してますし」
モニカさん、お金を数えるのがやたらと早いんだよなぁ。
俺が銅貨100枚数える間に1000枚くらい数えてた事もあったけど、早すぎじゃない?
「それじゃあ、残り800枚はしばらくギルドに預けておきます」
「はい、わかりました。必要な時があれば、受付でカードを出してもらえば引き出せます。預ける場合も同じですね」
「はい」
冒険者カードって身分証にもなるし、ランクの確認、お金の出入金と多機能なんだなぁ。
無くさないように気を付けよう、再発行は出来るみたいだけど念のため。
「それで最後に一つ、リクさんの冒険者ランクですけどね」
「Cランクスタートは異例とは言ってましたけど、何か問題が?」
「いえ、初期ランクがCランクなのは問題ありません。今回の防衛戦で実力を示しましたしね。というよりCランクでできる戦果ではありませんけども……」
ゴブリン軍殲滅なんて一人でやるCランクはいないだろうなぁ。
さすがにそのくらいは冒険者歴の短い俺でもわかる。
「リクさんはランク昇格となり、これからはBランクとなります」
ランクに関しての話は昇格の事だったようだ。
まだ冒険者になって1か月経ってないのに、もう昇格でいいのかな? 早すぎたりしない?
ほら、隣のテーブルで聞いてたソフィーさんが驚いて……ないな……むしろ納得した顔をしてるし……。
えっと、マックスさん……どころか皆納得した顔して頷いてるよ。
納得してないのって……俺だけ……?
ランク昇格と大金を手に入れました。
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