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ヒルダさんは警戒中



「何度も言うようじゃが、ワシの専門は剣じゃ。槍の事を詳しく教えてやることはできん。それと、そちらの嬢ちゃん……ソフィーちゃんもじゃ。ワシはリクに戦い方を教えに来た。じゃから、常に相手をしてやれるとは限らん。それでもいいのであれば、教えてやろう。……若者が、無理をして身の丈に合わない依頼で命を落とすのは、しのびないからのう……」

「は、はい! わかりました! よろしくお願いします!」

「私も了解しました。お世話になります!」

「あ、えっと……よろしくお願いします!」


 エアラハールさんからモニカさんとソフィーに、注意のような説明する。

 真剣に話すエアラハールさんは、心から若い人間が志半ばで亡くなってしまう事を、憂いてるように見える。

 ……素直じゃないお爺さん……なのかな?


 元Aランク冒険者であり、今は引退しているエアラハールさんは、結構な年だ。

 これまでにも、無謀な挑戦をして、死んでしまった冒険者というのを数多く見て来たのかもしれない。

 引退して、スケベ爺さんに見える振る舞いをしておきながらも、やはり心は人を助ける冒険者のまま……という事なんだろう。

 こういう人に師事できる事、紹介してくれたヴェンツェルさんも含めて、感謝しないとな。


「うむ……そうじゃな、モニカ嬢ちゃんはマックスの娘という事もある。剣ではなく槍を使う事で、ワシから教える事は少ないかもしれんから、金貨三十枚にしておくからのう」

「あ、はい……」

「ひょっひょっひょ! これで若いおなごと遊び放題じゃ!」


 モニカさんの授業料は俺やソフィーよりも安いようだけど、思わぬ臨時収入になったため、女性と遊ぶ算段をしてあまり人に見せられない表情で笑っているエアラハールさんに、さっきまでの真剣さや威厳も、ましてや冒険者魂のようなものは一切感じられない。

 ……やっぱり、ただのスケベ爺さんなのかもね――。


「ん?」

「ヒルダさんね、どうしたのかしら?」


 話がまとまったところで、訓練場に入って来る女性がいた。

 そちらに視線を向けると、後ろにいたモニカさんも入り口を見て、呟く。

 確かに、訓練場に不釣り合いなメイド服を着ているその人物は、ヒルダさんだ。

 入ってくるなり、広い訓練場を見渡して、真ん中付近で固まっている俺達に気付くと、足早にこちらへ来た。


「リク様、ご昼食の用意が整っておりますが、如何致しましょう? それと、アルネ様、フィリーナ様も部屋でお待ちです」

「呼びに来てくれたんですね、ありがとうございます。……アルネ達もいるのなら、一緒に昼食を頂きます。――エアラハールさんもどうですか?」


 昼食のため、俺達を呼びに来てくれたみたいだね。

 アルネとフィリーナも部屋にいるのか。

 姉さんやエフライムはまだしも、レナも部屋を訪ねて来そうだし、戻って皆と一緒に食事をした方がいいだろう。

 そう思って、ヒルダさんに戻る事を伝えつつ、エアラハールさんにも一緒にどうかと聞く。


 城に来てくれてるのに、俺達だけ昼食を取って、エアラハールさんはどこか別の場所で……というのも何か違う気がするからね。

 ちなみに、ヒルダさんはエアラハールさんを警戒しているため、いつもより少し離れた場所で止まった。

 モニカさんやソフィーが被害に遭ったのを見ているから、当然の事だと思う。


「ワシもいいのかの?」

「人数が増えるけど、大丈夫ですか?」

「料理は多めに用意しておりますので、問題ございません」

「なら、ご馳走になろうかの。ひょっひょ、城の食事か……楽しみじゃのう」


 首を傾げるエアラハールさんと一緒に、ヒルダさんに大丈夫かと聞き、問題ないと頷いてくれたので、全員で一緒に昼食を取る事になった。

 食事をしながらでも、昔の冒険者をしていた時の事を聞いたり、マックスさんやヴェンツェルさんの事を聞いてみるのも、楽しいかな?

 いや、アルネがいるんだ……多分ヘルサルでの事を聞きたがるだろうから、無理かもしれないなぁ……。

 フィリーナでさえ、魔力圧縮に関して興奮気味だったんだし、アルネの反応は大体予想できる。


 苦笑しつつも、ヒルダさんに連れられてエアラハールさんやモニカさん、ソフィーと一緒に部屋へと戻った。

 先頭にヒルダさんで最後尾はエアラハールさん。

 真ん中にいる俺に抱かれて、肩越しで後ろを見張っているエルサという、完全にエアラハールさんを警戒した布陣での移動となっている。

 ……ここまでしたら、さすがのエアラハールさんも変な事をしたりはできないだろうね……ドラゴンのエルサが見張ってる事は、一番大きいだろうけど。



「リク! どういう事だ!?」

「えっと……アルネ、どうしたの?」

「ちょっとアルネ、興奮し過ぎよ?」


 部屋へと戻り、中へ入ると第一声がアルネの怒ったような叫び共に詰め寄られる。

 その後ろには、そんなアルネを諌めるように声をかけるフィリーナもいた。

 実際に怒っているわけではなく、興奮している様子なんだと思うけど……いきなりどういう事かと言われるとは思ってもみなかった。

 俺の予想よりも、アルネの反応が上回ったかぁ……。


「とりあえず、座ろう。うん、その方が落ち着いて話せるし、ね?」

「落ち着いて話している場合では……」

「いいから! さっさと座りなさい!」

「おいフィリー……ぐえっ!」


 とにかく落ち着かせるように話しかけ、座ってからとしたかったけど、興奮が収まらないアルネ。

 尚も俺へと詰め寄って来るけど、フィリーナが大きな声で遮ってアルネを止め、襟首を掴んでソファーへと引っ張った。

 いきなり掴んだもんだから、服で首が締まってるけど大丈夫かな? まぁ、ソファーに投げられて咳き込んでるだけだから大丈夫か。

 アルネをフィリーナが制するのを見届けてから、モニカさん達と一緒にソファーへと座るけど、もちろんエアラハールさんは女性陣からは一番離れた場所になっている。


 少しいじけ気味になったエアラハールさんだけど、エルフのフィリーナを見て気を取り直したようだ。

 珍しいのと美人だからだろうな……アルネの方にはほとんど興味を示してないし。

 ちなみに、ふて寝していたユノはもう起きていて、レナと一緒にいたんだけど、アルネが興奮して俺に詰め寄る姿をポカンと見ていた。

 レナがいるのならメイさんも……と思い、天井に視線を送ると、両手両足で逆さにくっ付いてるメイさんと目が合い、器用に天井から会釈された。


 ……やっぱり天井が定位置なんですね。

 エアラハールさんの事をヒルダさん辺りから聞いているのか、若干いつもより離れた天井にくっ付いている。

 さすがにエアラハールさんでも、天井までお尻を触りに行ったりはしないと思う……いや、やりかねないか……。


「それでリク、魔力を練るというのはどういう事だ? 圧縮させるという事のようだが……」

「まぁまぁ、とりあえず昼食を頂きながらにしようよ。せっかく用意してくれてるんだしね?」

「そうよアルネ。聞きたい気持ちはわかるけど、他の皆の事も考えないといけないわよ? まったく、魔法の事になると周囲が見えなくなるんだから……だから研究に向いているのでしょうけど」


 フィリーナに引っ張られて、首を絞めつけられた事で少し冷静になったアルネは、それでも興奮気味に待ちきれないとばかりに俺へ質問する。

 それを抑えつつ、まずは昼食を頂く方を優先。

 せっかく作ってくれたのに、料理そっちのけで話ばかりしてもいけないしね。

 特にソフィーとエルサ、ユノ辺りからお腹が減ったと騒がれそうだからなぁ――。




アルネは自分の知らない技術という事で、興奮が収まらないようです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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