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皆にもスイカは好評




「おう、お疲れさん。今日の戦場は、中々手強かったな!」


 お客さんがほとんど帰った頃、厨房の仕事を終えたマックスさんから声をかけられる。

 あとは、残ってる数人のお客さんが帰った後の食器洗いや、掃除、働いた皆の夕食を用意するくらいしかないから、顔を出したんだろう。

 修羅場とも言える忙しさを、戦場と言うのは以前からあるマックスさんの癖のようなものだけど、確かにさっきまでの忙しさは戦場と言っても過言じゃないと思う。

 お腹が減ってるお客さんは、殺気立ってるからね……特に冒険者さん達とか。


「お疲れ様です」

「稀に見る忙しさだったな。手伝ってもらえて助かった」

「いえ、お世話になっているので、これくらいは」


 部屋を使わせてもらってるんだから、これくらいは手伝わないとね。


「あぁそうだ。昨日言っていたスイカっての、仕入れておいたぞ。夕食後に皆で食べよう」

「わかりました。えっと、食べ方は?」

「昨日、リクからも聞いていたから、ちゃんと切ってみるつもりだ。八百屋のオヤジ、美味い食べ方を教えてもらって、売れそうだって喜んでたぞ?」

「あはは、役に立てたのなら良かったですよ」


 予定通り、八百屋さんからスイカを仕入れる事はできたみたいだ。

 集まっていた他の人達にも、スイカを切って食べてもらったりしてたから、すぐに売り切れたりしないか心配だったけど、まだ残ってたみたいだね。

 八百屋のオジサンが考えてるように、美味しさが伝われば、すぐに売れるだろうから、早めにマックスさんに教えられて良かった。


「予想より大きい物だったな……幾つか仕入れられたんだが、一個でよさそうだな」

「皆で食べると言っても、エルサやユノが食べ過ぎなければ、多く切る必要はないと思いますよ」


 エルサは気に入っているし、当然ユノも気に入ってる。

 あの無尽蔵の胃袋に任せて食べるとかでなければ、多く考えて一個を皆で分けるくらいで十分だろう。

 俺やマックスさんの顔よりも大きいくらいだし……夕食後のデザートだしな。


「あぁ、ソフィーさん。お帰りなさい! ……ルギネさん?」

「モニカ、ただいま。帰っている途中で会ったのでな。昨日の事を覚えていて、スイカとやらを食べるつもりでこちらへ向かっていたんだ……帰り道での勧誘が少し面倒だったが……」

「いい加減、ソフィーは私達のパーティに入るべきだ!」

「本当はねぇ……ルギネ、もう一人誘いたい人がいるみたいよぉ?」

「余計な事を言うんじゃない、アンリ!」

「お姉さまは、私がいれば十分なのに……」

「……お腹空いた……焦げた肉、食べてもいい?」


 マックスさんと話していると、店の入り口が開き、ソフィーさんが戻ってきた。

 近くにいたモニカさんが、声をかけてソフィーさんを迎えたが、それに続いて店に入ってきた集団を見て、首を傾げる。

 どうやら、昨日言っていたように、スイカを食べるためにやってきたらしい……ルギネさんの顔色も悪くないようだし、魔力はちゃんと回復してるみたいだ。

 騒がしい集団を引き連れて戻って来たソフィーさんは、少しうんざりしたような表情をさせながらも、どこか楽しそうな雰囲気だった。

 久しぶりに会った知り合いと、しっかり話せて楽しかったのかもしれないね……いや、結界相手に思い切り剣を振れたから、という可能性もあるかも……?


「リク、もう一つ多めに切るか……」

「……そうですね」


 マックスさんと顔を見合わせ、大きなスイカを二つ切る事を決めた――。



「おぉ、スイカだ!」

「また食べられるのねぇ……」

「これが、スイカ?」

「焦げた肉より赤い……生肉よりは……同じくらい?」

「あの丸々とした物を切ったら、中身が赤いとはなぁ……」

「この黒いのは……種かしら? 野菜というより、果物に近そうね」

「リクさんやユノちゃん達が、美味しいと言ってたのがこれね」

「そのようだ。初めて食べる物だが、リク達が美味しいと言うのだから、間違いないのだろう」

「中身が赤いのは知っていたけれど、こうして見ると、印象が変わるわね。皮でお腹いっぱいになった私って……」

「スイカなの! 美味しそうなの!」

「キューだけじゃなく、スイカも食べられるなんて、いい日なのだわ! なんて日だ! なのだわ!」


 リリーフラワーのメンバーも加えて、夕食を皆で取った後、マックスさんが切って皿に入れたスイカが、皆の前に持って来られた。

 大きなスイカ二つを、食べやすいサイズに切っているだけあって、その量は多い。

 ……まぁ、皆で食べれば残る事はないだろうけど。

 大量のスイカがテーブルに置かれたのを見て、皆が口々に声を上げるけど……とりあえずエルサ、その言葉はいい意味で使われる言葉じゃないから、間違ってるぞ?

 まったく、俺の記憶からとはいえ、変な言葉は使わないで欲しい。


 切り方については、念のため俺がマックスさんに教えた。

 とはいっても、難しい切り方ではなく、よくある半分に切った後また半分に……と切っていって、最終的に片手で持てるくらいの大きさで三角になるように、というくらいだけどね。

 食べ方の一つとして、塩をかけて食べると言うのも教えようと思ったけど、日本と違って塩は調味料の中でもそれなりに値段が高いので、止めておいた。

 とにかく最初はスイカそのものの味を楽しんでもらいたいし、あれは好みが別れる事もあるからね。

 ちなみに俺は、塩をかけるのは嫌いじゃないけど、そのまま食べるのが一番好きだ。


「これは……確かにリクが言う通り、作って数を増やすべきだと思うわ!」

「そうね、甘くて瑞々しくて……多くの人に受け入れられそうね」

「そうだな。汁が少々べたべたするが、これも甘いためだろう。喉も潤うし、いい食べ物だ」

「でしょ?」


 フィリーナやモニカさん、ソフィーが感心しながら食べるのを見て、鼻高々な俺。

 いや、一番自慢するべきなのは、このスイカを作った人達だけど、なんとなくね。

 スイカを作る事に懐疑的だったフィリーナも、一口食べてからはヘルサルで作るのも賛成してくれる様子だ。

 やっぱ美味しい物って、多くあった方がいいからね。


「八百屋のオヤジが、売れると言っていたのも頷けるな。数が少ない事が悔やまれる……」

「確かにねぇ。仕入れをした時、これ以上は……って言われたんだっけ? また入荷したら、いち早く教えてもらわないと」

「しかし、数が少ないと店には出せないな。幸い、一つでかなりの量だから、多くの数を仕入れる必要まではなさそうだが。まぁ、何か工夫したり、料理に使えるかを考えてからだな」


 マックスさんとマリーさんは、スイカを店に出す事を考えて何やら相談している様子だ。

 スイカを使った料理かぁ……皮や種を使ったり、果肉を使ったりといった料理があるらしいとは、俺も聞いた事はあるけど……どうやって調理したらいいのかまでは知らない。

 そのまま食べるのが一番美味しいとは思うけど、マックスさんの腕で新しい味というか、違う食べ方が考え付くのに期待しよう。

 美味しく食べる方法は、いくらあってもいいからね……後で、塩をかける食べ方も教えておいた方が良さそうだね――。



皮も含めて、美味しく食べられる事を期待しましょう。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


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