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魔力を含むガラス



「これが、リクが作ったガラスね……確かに透明度が高いわ」

「前に見た時もそうだったが、見事な物だ」

「本当にね」


 土の棒を埋めた後、皆で確認のためにガラスを地中から出した場所へ移動する。

 役目の終わったエルサは、また小さくなって俺の頭へドッキング。

 今回は、最初のような失敗をする事もなく、魔力溜まりの影響範囲に入る前に、魔力遮断をしていた。

 また、魔力酔いでむにむに言う事はないだろう……ちょっと可愛かったから、残念。


 移動した先で、山のように積まれたガラスの破片を確認。

 そのガラスは、確かにこの世界で見たガラスよりも透明度が高く、俺が日本で見た事のある普通のガラスのように見えた。

 土に埋まっていたから、汚れてたり、傷がついてたりしてるけどね。


「以前見た時と、変わった事はなさそうだな。確かに透明度は高く、価値も相当な物だろうが」

「そうね。これをリクさんが作ったと考えると……リクさん、ガラスを作る職人になる? 多分、この国で一番のお金持ちになれるわよ?」

「いや、俺冒険者がやりたいし、ガラスを作るだけの生活は嫌だなぁ……」


 ソフィーとモニカさんも、積まれてるガラスの欠片をそっと手に取り、じっくり観察している。

 割れたガラスで手を切ったりしないよう注意しようかとも思ったけど、皆注意深く触れたりしてるので、大丈夫そうだ。

 目に見えるかどうかの小さな破片は、土に紛れてるし、特に怪我はしなさそうだね。

 そう思っていたら、モニカさんから思わぬ提案。


 確かに、透明度が高く、大きいガラスを作ろうと思えば作れるのかもしれないけど……そのためには大量の魔力を使って、広い場所で発動させなければいけない。

 環境破壊になりかねないし、またそこで魔力溜まりができる可能性があると考えると、気安くやるべきじゃないだろうと思う。

 まぁ、他にも作り方があるかもしれないけど……俺はガラス職人になりたいわけじゃないしね。

 それに、お金には困ってないというのもある。

 ……褒賞金や依頼の報酬で、使いきれない程あるしなぁ。


「モニカ、リクにガラスを作らせたら、確かに使いきれない程のお金が入って来るだろうけど……危険ね」

「……危険?」


 ジッと手に持ったガラスを見ていたフィリーナが、モニカさんの提案に対して危険だと言う。

 聞き返したモニカさんと同じように、俺やソフィーも首を傾げてフィリーナを見る。

 ちなみにエルサは我関せずで、俺の頭にくっ付いたままで、ユノは少し大きめのガラスを持って、空へ透かして見たりしていた。


「これ、ただのガラスと思ったら、大間違いね。大量の魔力が含まれているわ」

「魔力が……ガラスに? そんな事があるの?」

「多分、リクの魔法で作られたからだと思うけど……物に魔力を蓄える事は、不可能じゃないわ。さっきやった棒を魔法が伝って、離れた場所で効果を出すという事の応用ね。モニカやソフィーの持っている魔法具の武器だって、魔力を蓄えて発動させる物よ。発動式とかも組み込まないといけないから、単一の魔法しか使えないけどね」


 ガラスを見たまま、真面目な表情で説明するフィリーナ。

 俺を始めとして、他の皆はガラスを見てもなんと思わなかったのに、フィリーナだけは違ったようだ。

 もしかしたら、特別な目を持っているという事が関係してるのかもしれない。

 探査魔法を使ったら、生き物ではないのにガラスに反応するのか……。

 魔力溜まりの中にいるから、使えないけど。


「魔法具は、魔力を蓄えるためと、魔法を発動させる回路のような物を組み込むの。このガラスは既に魔力を蓄えるようにできてて、後は発動させる魔力式を組み込めば、それだけで魔法具として使えるわ。蓄えてる魔力が多くて、発動した魔法がどうなるかはわからないけどね……」

「それは……危険だな」

「確かに。リクさんの魔法じゃないけど、何も知らずに使ったら、暴発して周囲に影響を与えそうね」

「もしかして、俺が隠そうとしたのは……正解?」

「正解……と言えるでしょうね。何も知らずにこれが流通されれば、どこで何が起こるかわからないわ。誰かが魔法具として使って暴発したり、蓄えてる魔力だけを引き出そうとして失敗したり……。まぁ、リクの魔法程大規模ではないでしょうけど、ちょっとした建物を破壊できる魔力量があるわ」


 どうやら、ガラスは魔力を蓄えていて、魔法具としても使えるみたいだ。

 それはいいんだけど、それだけではなく、俺の魔力である事と、蓄えてる魔力量が大きいため、まともに扱う事ができなさそうという事だ。

 フィリーナの考えてる事が、流通した先の各地で建物を破壊する程の事が起こったら、無差別なテロのようになりかねないからね。

 俺がこのガラスを隠して、誰にも使えないようにしたのは、結果的に正解だったようだ。

 ……良かったぁ。


「ガラスの大きさによって、蓄えてる魔力は違うけど……手の平に乗るサイズでもとんでもない魔力量よ……一体どうやってこれだけの魔力がガラスに蓄えられてるのか……」

「……あー、もしかして、魔力を練ってた事と関係があるのかな?」

「魔力を練る? 魔力は体内にあるものと、自然にあるものを掛け合わせて、魔法を使うものでしょう? それを練るなんて事が……?」


 フィリーナから見ると、ガラスの大きさに対して蓄えてる魔力量が多すぎると感じているようだ。

 そう思って、ヘルサル防衛戦が終わった後くらいから、時折やっている魔力を練る……という事を話してみたんだけど、フィリーナは知らなかったようだ。

 当然、魔法が使えないソフィーも、魔法を使い始めて日の浅いモニカさんも、不思議そうに俺を見ている。

 あれ、魔法の事に詳しいエルフなら、知ってて当然だと思ってたんだけど……?


「確かにリクは、さっき聞いた限りだと自然の魔力を使わないから、全て自分の魔力で魔法を使うんでしょうけど……魔力を練る……?」

「多分これは、自分の魔力だとか自然の魔力だとかは関係なく、魔力を使って魔法を使えるのなら、誰にでもできる事だと思うんだ」


 俺が魔法で魔力を使う時は自然の魔力は使わないけど、それとは関係なく、魔法発動のために魔力を変換する前の事だから、多分誰でも使えると思う。

 自分の体内から集めた魔力と、自然から集めた魔力で、多少は感覚が違うかもしれないけど。


「それは、エルサ様と契約したから使える、ドラゴンの魔法とは関係があるの?」

「いや……多分関係ないと思う。あれは、魔法をイメージして、その通りに発動させるものだから。魔力自体は、契約に関係ないしね」

「……そうなのね。それで、魔力を練るというのは、どういう事なの?」


 さっきから、フィリーナに質問攻めにされている。

 魔法研究は、アルネの担当じゃなかったのか……と思うけど、モニカさん達の魔法具武器をフィリーナも一緒に見ていたし、兄妹だから同じ事にも興味があるのかもしれない。

 段々と俺に迫るようにして、色々聞いて来るフィリーナ。

 それと一緒に、モニカさんも興味深そうに聞き耳を立てている……あれ、俺やばい事を言ったかな?




魔力を練るのはあまり知られていない事なのかもしれません。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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