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魔力溜まりに集まるマギアプソプション



 寝ているエルサはともかく、マギアプソプションの事。

 ミミズのような体という事だから、地を這って動くんだろう。

 確かに、そのイメージだと素早く動くのは考えづらい。

 地を這ってても、素早い魔物というのもいるだろうけど、マギアプソプションは違うようだ。


 剣に当たって斬られたり、噛み付かれたりすると危ないけど、動きが遅いために避けやすいから、Dランクでも対応できる強さなんだろう。

 だけど、数が集まって囲まれると、避けるのも大変になるから、基本はCランクの魔物である……と。


「マギアプソプションの一番厄介な部分は、群れを全て討伐しても、数日後にはまた集まって来ている事です。これは、今回の事で何度も確認されました」

「魔力溜まりを一度見つけると、同族だけがわかる道を残すんです。だから、倒しても倒しても集まって来るし、放っておくと数が多くなり過ぎて大変な事になります」

「道を残す……成る程、道理で……」

「まぁ、道と行っても、匂いのような物でしょうけどね。他の者には見えませんし。それを辿って、散らばっているマギアプソプションが集まって来るんです。きっと、魔力溜まりを感知する触覚が、同族が残した匂いも探っているのかと」

「ふむふむ……」


 いつの間にか、ヤンさんもモニカさんと同様にメモを取って、フィリーナの説明に聞き入っていた。

 ヤンさんも知らなかった情報も多いんだろうね……人間だけでは魔力溜まりができる事が少ないようだし、今まであまりマギアプソプションの事を知る機会は少なかったんだろう。

 珍しい魔物って言ってたし。


「そういえば……何故マギアプソプションは、魔力溜まりに集まるのでしょうか?」


 フィリーナの説明を聞いている途中、ふと思いついたように、ヤンさんが声を上げた。

 確かに考えて見れば、マギアプソプションが何故魔力溜まりを目指すのかがわからない。

 魔物の事だから、道理にかなった理由があるのかはわからないが、俺もヤンさんの疑問と同じく気になった。


「マギアプソプションは、魔力を吸収……というより、食べるんです」

「食べる……つまり、マギアプソプションは魔力で生きているのですか?」

「はっきりと断言できる程、私達も知っているわけではありませんが……観察したエルフが、マギアプソプションが集まっていた場所では、魔力の残滓が減っていたのを確認したようです。なので、魔力を食べているのではないかと」

「成る程……ん? それでしたら、もしもの話ですが……マギアプソプションが集まった後、それをしばらく放っておいたら、魔力溜まりは解消されるのではないですか? 魔力を食べるのですから。いえ、街に近いですし、農地にする場所なので、今回はそのような事はできませんが……」


 魔力を食べる魔物……。

 魔物に限らず、生物には必ず大なり小なり、魔力を持っている。

 それを使って生命を維持していると考えるのであれば、マギアプソプションが魔力を食べて生きているという事にも納得できるね。

 まぁ、それだけで生きられるかどうかまではわからないけど……人間とは違うんだ、そういう生物だっているだろう。


 フィリーナの説明に納得していると、ヤンさんが仮定として、魔力溜まりを解消できるのではという考えを出した。

 確かに、魔力を食べるのだから、魔力溜まりにある魔力を食べ切ってしまえば解消されるだろうね。


「そうですね。やった事はありませんが、放っておいたら魔力溜まりの解消がされると考えられます。ですが……それは危険ですね……」

「危険……ですか?」

「ええ。マギアプソプションは魔力を食べるのですが……それを続けると成長を始めます。一度観察のために放っておいて、群れの数体が倍以上の大きさになったと言われています」

「……それは確かに、危険ですね」

「はいマギアプソプション単体では、危険の少ない魔物でも、大きくなり、触覚が発達したマギアプソプションは、軽々と建物すら破壊するそうです。まぁ、今回は魔力と土地の関係もあるので、解消させるのが正しいわけじゃありませんから、心配する必要はないでしょうけど」

「そうなの?」


 栄養を与えたら成長する。

 これは人間にも言える事だ。

 だから、魔力を食べるマギアプソプションを放っておいて、魔力を食べさせれば成長してしまうというのも納得できるね。

 でも、今回も魔力を食べて大きくなったマギアプソプションがいるかも……と考えたんだけど、違うのかな?

 とりあえず、疑問をそのままにはせずフィリーナに対して聞いてみた。


「マギアプソプションが魔力を食べる速度が遅いのよ。1日放っておいても、簡単な魔法を使う程度の魔力くらいしか食べないらしいわ。だから、成長するのも数日どころか、数カ月しないと無理ね。……例外的に、瀕死になると、生命維持のためなのか、周囲の魔力を吸収する速度が上がるらしいけど……これもそこまで速い物じゃないらしいわ」

「そうなんだ。だったら、ヘルサルに集まって来るマギアプソプションが、急に大きくなって街を急襲とか、そういう事は起こりそうにないね」

「ええ。集まって来たら討伐……という事を繰り返していれば、問題はないわ。しばらくそこはマギアプソプションの狩場になるくらいね」


 急に大きくなる事がないなら、危険が増す事に警戒をする必要はあまりないようだ。

 討伐しても少ししたらまた集まって来るのなら、冒険者としては報酬をもらうためにありがたいという事も考えられるね。

 ただし、今回は集まっている場所が農地として利用しようとしていた場所だから、悠長に討伐を繰り返しているだけじゃ駄目なんだけど。

 魔物がいるから、他の場所を農地にしたら……というのも、時間がかかるだろうしね。


「副ギルドマスター、準備ができました」

「はい、わかりました。リクさん、依頼の準備ができましたので、こちらに……」

「はい」


 フィリーナによるマギアプソプションの講義を聞きながら、時間を潰していると、部屋の扉がノックされ、ギルドの職員さんが入って来る。

 ヤンさんに書類を渡し、確認した後それを俺達の方へ。

 マギアプソプション討伐や、農地と魔力溜まりの調査に対する依頼だね。

 それを確認して、依頼を受けるために必要事項を記入し、ヤンさんに渡す。


「確かに、受け取りました。それでは、これでリクさん達への依頼は成立しましたね。フィリーナさん……でしたね、マギアプソプションの情報、ありがとうございました。非常に有意義な情報が得られました。これは、ギルドの方で共有しても?」

「構いません。特に秘匿する情報でもありませんしね。魔物を討伐する事が多い冒険者ギルドですから、その情報は広く知られておいた方がいいでしょう。滅多に出て来る魔物ではありませんけど」

「ありがとうございます。それでは、各ギルドには今聞いた情報をまとめて、報せる事にします」


 そうして、マギアプソプションの情報が共有される事になり、俺達への依頼を終えて話を終わらせる。

 元々、クラウスさんにキューを作ってとお願いするだけだったはずなのに、依頼を受ける事になっちゃったね……。

 まぁ、特別ランクの高い依頼でもないし、王都に帰るまでの時間もまだあるしで、問題はないかな。

 そもそも、マギアプソプションをなんとかしないと、キューをすぐに作る事ができないんだからね。




結局ここでも依頼を受ける事になってしまったようです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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