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農場に集まる魔物



「それじゃ、食べましょうか」

「はい」

「そうですね」


 部屋の入り口から見て、右側にヤンさんとクラウスさんとトニさんが座り、向かいに俺とモニカさんとフィリーナ、それとエルサが席に着く。

 エルサは、机の上だけど。

 トニさんは、最初一緒に食べるのを遠慮していたけど、多目に持って来たし、折角だからと同席してもらった。

 俺達だけ食べて、一人立ったままというのは気になるしね。


 獅子亭にて、マックスさんに用意してもらった美味しい昼食に舌鼓を打ちながら、俺が王都に行って行った事などを説明する。

 ついでに、フィリーナの事もクラウスさんに紹介。

 ヤンさんはエルフの集落に来て、顔見知りになってるけど、クラウスさんやトニさんは知らないからね。

 エルフの珍しさと、美人なフィリーナを見て目を見張ってた様子も程々に、やっぱりクラウスさんの興味は俺の事らしい。

 ……フィリーナに好奇の視線を向けないのは良い事なんだろうけど、俺としては少し微妙な気分。

 オジサンが前のめりになりながら、俺の事を目を輝かせて見て興味津々になられてもなぁ……。


「と、王都ではこんな事がありまして……」

「さすがリク様ですな。このヘルサルやエルフの集落だけでなく、王都や女王陛下……ひいては国そのものを救うとは……」

「Aランクというだけではとどまらない活躍でしょうね」

「あはは……」


 食事が終わる頃、王都での活動を話し終える。

 クラウスさんは興奮した様子で、俺の話に感心した様子で、ヤンさんは俺のランクに関する事で何やら考えてる様子。

 ちょっと大げさな気がしなくもない。

 途中、パレ―ドを行ったという部分で、クラウスさんが見に行きたかったと悔しがったけど、実際に開催される事が知らされた時、王都に向かって飛び出そうとしたらしい。

 ……トニさんに止められたみたいだけど。


 あの時は、パレ―ドが開催されるまであまり時間がなかったし、クラウスさんにも仕事があるんだから、来れなくても仕方ない。

 準備期間に余裕があったら、クラウスさんも来れたかもと思うけど、王都に集まった貴族の人達の事もあったし、長い期間を取れなかったんだよね。

 まぁ、クラウスさんが見に来てたら、マティルデさんと同じような事をしそうだから、返って良かったのかもしれない。

 あれは……冒険者を使ってたから、特殊な例とも考えられるけど、クラウスさんの様子を見るに、そういうことをしてもおかしくないしね。


「クラウス様、そろそろ……」

「わかった」


 食事と王都での事を話し終えた頃、トニさんに促されてクラウスさんが頷く。

 それを見て、フィリーナが姿勢を正したのを見習い、俺やモニカさんも改めて話に臨んだ。


「王都からの使い……ハーロルト様から聞いた話によると、ヘルサルで予定している農場の作物に関しての事ですが……」

「はい」


 クラウスさんが真剣な表情で、俺達に対して話し始める。

 その様子は、今まで興奮気味に俺の話を聞いていた、妙なオジサンの面影はなかった。

 クラウスさん、こんな表情もできたんだな……大きな街の代官を任されるくらいだから、当然か。


「確かに、以前の防衛戦でリク様が魔法により拓いた土地を使い、農場を作るよう進めております。この事は、以前依頼で様子を見てもらったリク様達がご存じかと思われます」

「そうですね」


 以前、ゴブリン達から街を守った後、冒険者ギルドで依頼を受けてモニカさん達とその場所を見に行った。

 ガラスの産出だとか、俺がやり過ぎた事への証拠隠滅のような意味合いもあったけどね。

 それがあったから、今ここで相談しに来てるんだし。


「リク様達が調査した後も、街の方で調査を進め、開拓をしております。予定では、種を蒔き、作物を育て始める段階まで来ております」

「そうですか、それなら……」

「ですが……」


 そこまで話が進んでるのなら、あとはキューを育ててくれるようお願いするだけだ。

 種を蒔くという事は、農業従事者の目途も立ってるんだろうしね。

 そう思い、ホッとしている様子のモニカさんと、その腕に抱かれたエルサを横目に見ながらクラウスさんにお願いしようとした。

 けど、俺の言葉を遮って、難しい顔をしたクラウスさん。

 何か問題でもあるんだろうか……?


「……少々問題がありましてな。このままでは安全に農場として、作物を育てさせる事はできません」

「この先は、私が話した方がいいでしょう」

「ヤンさんが?」

「はい。リクさん、予定している農地なのですが……その一部に、魔物がいるのです」

「魔物が……」


 どうやら、どこからか来た魔物が農地予定の場所にいるせいで、安心して農作業をする事ができない……という状況らしい。

 農業をする人達は、冒険者というわけでもないし、戦える人も少ないだろう。

 どんな魔物かはわからないけど、危険な相手がいるんじゃ安心して作物を育てられないのも当然か。


「その魔物なのですが……少々妙な動きをしています」

「妙な動き……ですか?」

「それはどんな?」


 ヤンさんの言葉に、俺が聞き返すのと一緒に、フィリーナが少し身を乗り出して聞く。

 フィリーナとしては、エルフという事もあり、農地に詳しいためにその魔物のの事が気になったのかもしれない。


「魔物単体では、あまり脅威ではないのですが……それなりの数がいる事と、討伐しても、数日後にはまたもとに戻っているのです。しかも、その魔物達はリクさんが拓いた農場予定地から出て来ようとしません」

「移動しない、という事ですか?」

「はい、そうです」

「……」


 脅威ではないという事は、低ランクの魔物なのかもしれない。

 ヘルサル程大きな街なら、それなりに冒険者もいるのだから、討伐自体は難しい事じゃないんだろう。

 けど、討伐してもまたしばらくすると集まって来る。

 魔物の習性なのか、農地からは移動しようとしないため、その他の場所への危険は少ないのかもしれないけど……このままじゃ農地として使う事ができないというわけか。


 魔物が来るたびに討伐すればいい事なんだろうけど、いつ集まって来るかもわからない以上、人手が必要だし、作物を育てる間……つまり農場としている間、魔物を倒し続けなければいけないと考えられる。

 数日ではなく、年単位で使用する場所だから、それはさすがに手間だね……。

 ヤンさんの言葉を受けて、クラウスさんが難しい顔をした理由に納得していると、俺の左隣に座っているフィリーナが何かを考えている様子。

 思い当たる節でもあるのかな?


「……その、農場予定地は、リクが魔法を使って開いた場所なのですよね?」

「はい、そうなりますね」

「ふむ……」

「フィリーナさん、何かあるんですか?」


 改めて確認するように、ヤンさん達へと聞くフィリーナ。

 魔物が集まって来るのと、俺が魔法を使った事に何か関係があるんだろうか?


「その魔物って、もしかしてマギアプソプションという魔物じゃないですか?」

「そうですね。珍しい魔物で、そう呼ばれています」

「マギアプソプション……フィリーナさん、知っているんですか?」


 フィリーナさんが言った魔物の名前を、ヤンさんが肯定するように頷く。

 状況を聞いただけで、集まっている魔物がわかるなんて……それだけ有名な魔物なんだろうか?

 ヤンさん曰く、珍しいらしいけど。





農場に集まっている魔物がいるようです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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