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久しぶりの獅子亭



「すみません、まだ準備中……リク君? モニカちゃんも?」

「ははは、カテリーネさん、お久しぶりです」

「ただいま、カテリーネさん」


 昼前で、まだ準備中だった獅子亭の入り口を通り、店の中へ。

 店内の掃除をしていたカテリーネさんが、誰かが入って来た事に気付き、客だと思ってお断りの文言を言っている途中で、俺達だという事に気付いた。

 キョトンとして俺達を見るカテリーネさんに、笑いかけながらモニカさんと一緒に挨拶。


「お、お帰りなさい! 久しぶりね! ――マックスさん、マリーさん、ルディ! ちょっと来て下さい!」

「なんだなんだ?」

「どうしたんだい、カテリーネ?」

「何かあったのかい?」

「マックスさん、マリーさん、ルディさん。お久しぶりです」

「父さん、母さん、ルディさん、ただいま!」

「久しぶりなの!」


 数秒だけキョトンとしていたカテリーネさんは、すぐに俺達が帰って来たのだと理解してくれたのか、ハッとなって大きな声で店の奥に叫んだ。

 その声に、奥の方からマックスさんとマリーさん、ルディさんが何事かと出て来た。

 三人とも、何かの騒ぎかと不思議そうにしていたが、俺達の事を見た瞬間、先程のカテリーネさんのようにキョトンとした表情なる。

 その間に、俺とモニカさん、ユノはマックスさん達に向かって挨拶。


 ソフィーやフィリーナも会釈している。

 エルサは、気軽そうに俺の頭の上で片手を上げたような気配がした。


「り、リク!? モニカも! どうしたんだ、いきなり帰って来て!」

「そうだよ。王都で冒険者活動をしてたんじゃないのかい!?」


 まず真っ先に反応したのは、マックスさんとマリーさん。

 二人は俺達が突然帰って来るとは考えていなかったらしく、驚いた様子で声をかけて来る。

 ルディさんも声をかけようとしてくれたみたいだけど、マックスさん達の声にかき消されて、口をもごもごさせていた。

 カテリーネさんに、ドンマイとでも言われるように肩を叩かれてた……相変わらず、仲は良さそうだね。


「依頼で何か失敗して、王都を追い出されたのか?」

「陛下に失礼な事をして、王都にいられなくなったのかい?」

「いや、あの……」

「父さんも母さんも、私達が失敗したものと決めつけてるわね……」


 矢継ぎ早に質問をする、マックスさんとマリーさん。

 二人共、俺達が何かをしでかして、王都にいられなくなったから帰って来たと考えてるようだ。

 そんな失敗とかはしてないんだけどなぁ……してないよね?

 花火の魔法や、線香花火のお試し魔法、町に出たら騒ぎになる事や、今回のキュー不足の引き金になったりするけど……王都にいられない程じゃない、と思う。


「色々と話したい事はあるけど……そろそろお昼なんじゃない?」

「おっと、そうだな。まずは昼の戦場を生き残らないとな」

「積もる話もあるだろうけど、まずはお客さんが大事だね」


 どうして俺達が帰って来たのかを、聞きたがっているマックスさん達を押しとどめ、モニカさんがお昼の営業を促す。

 そろそろ外には、獅子亭のお客さんが並び始めた頃だろう。

 あの戦場を懐かしいとも思うが、まずはそちらをどうにかしないと、落ち着いて話もできない。


「そういう事。話はあとでもできるわ。……えっと、部屋の方は使っても?」

「あぁ、お前達が出て行った時のままにしてあるぞ」

「ありがとう、父さん。それじゃ、フィリーナは私やソフィーと一緒ね。リクさんは、ユノちゃんとエルサちゃんを連れて、荷物を置いて来ましょう」

「そうだね。ありがとうございます、マックスさん」

「なに、自由な冒険者にも、帰る場所は会った方がいいからな」


 マックスさんとマリーさんは、俺達が王都に残った後も、部屋はそのままにしてくれていたようだ。

 本当にありがたいと思う。

 城も姉さんがいるから、王都も大事な場所になってるけど、獅子亭も大事な場所だ。

 帰る場所があるっていうのは、安心するね。


 マックスさんにお礼を言って、俺はユノとエルサを連れ、以前の部屋へ。

 モニカさんはソフィーと一緒に使っていた部屋へ、フィリーナを連れて行った。

 ルディさんとカテリーネさんの、エルフを始めて見る二人が、フィリーナを見て驚いたようだったけど、とりあえず話すのはお昼の営業が終わってからだ。

 大まかには話せるけど、細かい話になると時間がかかるからね。

 こういうのは、時間を取って、ゆっくり話した方がいいだろう。


「さて、荷物も置いたし……久々に行くか」

「どうするのだわ? キューの事はまだなのだわ?」

「キューの事は、明日の話だよ。久々の獅子亭だからね。部屋を残してくれてたようだし、手伝ってこようかと思うんだ」

「むぅ、だわ……」

「私もお手伝いするの!」

「お、ユノも行くか。それじゃ、久々に獅子亭の手伝いだ」

「おー、なの!」

「はぁ……キュー……だわ……」


 以前と何も変わりがない部屋で、持って来ていた荷物を置き、久々の獅子亭を手伝うため、部屋を出ようとする。

 キューの事が気になって仕方ないエルサは、それどころではない様子だけど、焦っても仕方ない事だしね。

 元気よく手を上げながら、手伝うと言ってくれたユノと共に、部屋を出る。

 ユノは、小さい子供がちょこまか動きながら頑張ってると、獅子亭の常連さんに人気だったから、久々の手伝いを喜んでくれるだろう。


「おや、モニカさんも?」

「リクさんも? 私は、今までずっと手伝って来たから、ここにいると何かしないと……と思うんだけど……」

「俺はお世話になるんだからね、これくらいはやらないと。それに、久々に手伝うのも楽しそうだし」


 部屋から出て階段を降りると、店に出る通路でばったりモニカさんと会う。

 どうやら、モニカさんもじっとしていられなかったらしく、手伝いおうとしてたみたいだ。

 初めて獅子亭に来てから、一緒に働いてたのもあって、似た考えなのがちょっと嬉しい。


「ソフィーとフィリーナは?」

「フィリーナに獅子亭の事を、懇切丁寧にソフィーが教えてるわ。涎を垂らしながらだけど……」

「ははは……ソフィーは獅子亭の料理が好きだからね……」


 ここに来るのが初めてのフィリーナに、獅子亭の料理がでどれだけ美味しいのかを説明しているんだろう。

 その途中で、料理の事を考えて涎が出てきてしまったのだと思う。

 ソフィーって、対外的にはキリッとして澄ましてるけど、モフモフ好きだったり、美味しい物に目がなかったりするんだよなぁ。

 本人は隠してるつもりらしいけど……所々に漏れてる。

 特に、エルサがお腹を見せて転がってる時とか、手を伸ばそうとして引っ込める……なんて何度見た事か……。


「ん、お前達、どうしたんだ?」

「父さん。お店、手伝うわ」

「俺も手伝います。お世話になってばかりじゃ悪いですから」

「私も手伝うの!」


 俺とモニカさんが話していると、声が聞こえたのか、厨房から顔を出したマックスさんが首を傾げてる。

 モニカさんとユノ、それに俺の三人で、店の手伝いを申し出た。


「そうか? 帰って来たばかりなんだから、休んでいてもいいんだが……」

「でも、人手はあった方がいいでしょ?」

「それはそうだが……」

「そうかい、それは助かるね。最近、また客が増えたから、新しく誰か雇おうかと考えてたんだよ」

「マリーさん?」


 マックスさんとモニカさんが話していると、急にマリーさんが話しかけて来て、俺達が手伝う事を決めた。

 声が聞こえてたんだろうね。

 それにしても、またお客さんが増えて来てるのか……カテリーネさんやルディさんも慣れて来てるのに、新しい人を雇うかどうか考えてるなんて……さすが獅子亭だ。

 これは手伝うのも、覚悟を決めないといけないかもしれないね。




元々評判の店でお客も多かったのが、さらに増えたようです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

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