リクへの提案
「では次に、リク殿がパレードで観衆へ向け行う事に関してですが……」
「えっと、俺も何かするんですか?」
大臣ぽい人が、次に言ったのは俺がパレードで何かをするという事……。
ただ単に、鎧を着て馬に乗り、主要通りを周って終わりってわけじゃないの?
「必ずしも、リク殿に何かをしてもらわないと……と言うわけでは無いのですが……」
「リク殿の勇姿をその目で見たい、という方が多いのですよ」
「フランクさん……」
大臣ぽい人が言っている事を、フランクさんが話を継いで言った。
他の貴族の人達も、軍関係の人達も、ほとんどの人がその言葉に頷いている。
ハーロルトさんと姉さんは、実際に俺が魔物と戦う所を見ていたし、ヴェンツエルさんは訓練やワイバーンの皮で実際に見たはずだ。
貴族の人達は魔物との戦いじゃなく、謁見の間でバルテルと戦う所を見てたとは思うんだけど……。
「リク殿の魔法……というのが、ですな?」
「魔法ですか?」
「ええ。なんでも、ドラゴンとの契約により、普通の人間が使えない特別な魔法……との事。それを見たい人が多いのです。もちろん、ここにいる者達以外にも……観衆も英雄の存在を理解するのに、魔法を見せるのが一番かと考えます」
「……そうですか」
魔法、ねぇ……。
確かに俺の魔法は、エルサとの契約の関係上、人間が普通に使っている魔法とは違って、イメージで発動する魔法だ。
何度も使い、色んなイメージをした中で、規模や威力が人間の魔法とは全く違う……というのは理解してる。
まぁ、ユノやエルサが言う、俺自身の規格外の魔力が原因な部分も大きいんだろうけど……。
でもなぁ……。
「止めた方が良いのだわ。リクは魔力の調整が不十分なのだわ。使い方を誤ると、周囲の人間を巻き込むのだわ」
「……そちらは……ドラゴン、ですかな?」
「おぉ、これがドラゴン……可愛いですね?」
「ほっほっほ、小さいドラゴンですが……これがワイバーン討伐の時、リク殿を乗せたというドラゴンですか……」
偉い人達が集まるという事で、いつも俺の頭にくっ付いてるエルサだけど、横に座ってるモニカさんに預けておいた。
そのエルサが、モニカさんの腕の中からふわりと飛び、机に乗って部屋にいる皆に注意をするように言った。
……確かに、魔力の調節を間違えば、周囲の人達を巻き込む可能性もあるだろうけど……最近は調節に気を付けて、練習もしてるんだけどなぁ。
「私はリクと契約をしているドラゴン、エルサなのだわ」
「エルサ様……ですか。そうですね……そのドラゴンであるエルサ様が言うように、危険であるならば、リク殿へのお願いは考え直さなければいけませんが……リク殿、どうですか?」
「えーと、そうですね……危険な魔法を使わなければ、何とかなるかな、と。例えば、触れても人に害を成さない魔法とか……ですかね」
「そのような魔法を使えるのですか?」
「しかし、それではリク殿の存在を知らしめるという事は……」
「誰が見てもわかるような魔法でなければ……」
エルサの自己紹介を聞き、頷く大臣ぽい人。
その人は、俺にエルサの言う事がどうなのか聞いて来るけど、使う魔法次第では危険はないと伝える。
攻撃するのが目的の魔法でなければ、危険は少ないと思うんだよね。
まぁ、貴族の人達が小声で話してるように、見栄えはあまり良く無いかもしれないけど……。
派手な魔法と考えると、やっぱり爆発とかそういうのが浮かぶ……けどやっぱりそれは、失敗したら危険だしなぁ。
「それでは、こういうのはどうですかな?」
「何でしょう、子爵殿?」
「リク殿の魔法ではなく、エルサ様。そちらにおられるドラゴンに、リク殿が乗って上空を飛んでもらう……というのは?」
「ドラゴンに……それは素晴らしいですな!」
「リク殿を乗せていた……という事は、大きさを変えられるという事。人を乗せて飛ぶくらいに大きくなってもらい、リク殿を乗せて空を飛んでもらえば、観衆もリク殿を英雄として迎えてくれましょう!」
「それは良いですな、子爵殿!」
「そうですな。ドラゴンを観衆に見せ、リク殿の存在を知らしめる……素晴らしい案です!」
子爵らしい人が、大臣ぽい人に提案する。
その意見に、他の貴族の人達が賛成を示してるけど……この人達、もしかすると大きなドラゴンだったり、派手な演出が見たいだけなんじゃないだろうか?
「子爵殿、それには異を唱えさせて頂きます」
「何故かな、ハーロルト殿?」
「私は見たことがあるのですが……大きくなったドラゴンは、パレードを行う通りに収まらない大きさです。観衆の前で大きくなる事は、観衆を巻き込んでしまいかねません。それに空を飛ばれたら、我々が警護をするにも問題が出ます。軍としては、エルサ様に乗る事は、賛成致しかねます」
「ふむぅ、成る程な……」
エルサに乗る事を提案した子爵さんが、ハーロルトさんが反対する事で、悩むように腕を組んだ。
確かに、エルサが大きくなったら、開けた場所じゃないと周囲が危ないね。
パレードという事で、観衆が詰め寄ったり警護の兵士がいたりするだろうし、周囲には人でいっぱいな事は間違いない。
そんな場所でエルサが大きくなったりしたら、建物に被害は出ないだろうけど、人に影響が出てしまうだろうなぁ。
「子爵殿の意見、もっともですが、私としてもハーロルト殿の意見に賛成です。それに、空を飛ぶのは誰の目から見ても、確かな存在を示す事にはなりますが……それはリク殿を観衆に、という観点からは少々疑問を感じます。エルサ様の存在を示す事になりませんか?」
「確かに……その通りですな……」
大きくなるのはエルサだし、それに俺が乗ると言っても、当然目立つのはエルサの方だろう。
大臣ぽい人が言うように、俺を観衆に見せるという目的ではなく、エルサを見せる目的に変わってしまいそうだね。
いやまぁ、俺を見せるのという目的とか、正直どうでも良い気がするんだけど……部屋にいる人達はそうじゃないらしい。
「それなら、やっぱり俺が魔法を見せますよ」
「しかし、観衆が危険に晒されては……」
「大丈夫です。危険が及ばないような魔法を考えますから」
「大丈夫なのだわ、リク?」
「心配してくれてありがとう、エルサ。大丈夫だよ、良い考えがあるから」
俺が動ずすべきか悩んでる、大臣ぽい人に進言して、魔法を使う事を承諾する。
大臣ぽい人は俺の言葉に、観衆が危険に会う事を危惧しているようだけど、良い考えがあるからね。
火を扱う魔法や召喚魔法らしい、ウィルオウィスプを使い出した時から、ちょっと考えてた事だ。
エルサは、俺が魔力の調節を失敗した時の事を考えてくれたらしいけど、考えてる事なら、少しくらいは調節に失敗しても、派手になるだけで被害は出ないと思うからね。
「大丈夫なの、リクさん?」
「リク、観衆を巻き込んだらパレードが台無しになるんだぞ?」
「私達にも、危険が及ぶかもしれないわね?」
「リクの考えはわからんが……俺は信じてみようと思う」
「ありがとう、アルネ。大丈夫だよ、考えてる通りにイメージできれば、人間や建物に被害を出さなくて済むから」
俺の進言に、ざわめいている貴族達とは別に、近くに座って話を聞いていたモニカさん達も、心配そうに声をかけて来る。
アルネだけは、覚悟を決めたように俺を信じると言ってくれたけど……覚悟なんて決めなくても良いからね?
アルネだけは、リクの魔法が周囲に被害をもたらさないと信じれくれているようです。
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