他とは少し違う鎧
「元々こういった鎧は、一人で着られる物ではありませんからね」
「……そうなんですね」
慣れてる人でも、一人で着脱は出来ない物だったらしい……。
言われて考えてみると、確かにそうだ。
いや、工夫したら着れるかもしれないけど……俺はそんな工夫を頑張ろうという気にはなれないしね。
というか、この重い鎧を着たうえで、武器や盾を持って戦闘をするって、相手の強弱に関係なく相当な重労働だと思う。
……ヴェンツェルさんが筋肉隆々な理由の一端が、わかった気がした。
「兵士さん達は、皆これを着るんですか?」
「いえ、こういったフルプレートを着るのは、一部の者だけです。指揮官や騎士爵を持った方など……ですね」
「成る程……」
ヒルダさんに言われて思い出したけど、魔物達によって城を襲撃された時、俺と同じような鎧を着た人はあまりいなかった。
全くにいなかったわけじゃないけど、ほとんどが部分鎧で戦ってたのを覚えてる。
備える時間が無かったから……とも考えられるけど、全ての兵士がフルプレートというわけじゃないようだ。
指揮官や騎士爵……というと、守らなきゃいけない人が、身を守るために着るという事なんだろう。
……でも、ハーロルトさんも着てなかったような……?
時間が無かったからなのか、動きにくいからなのかはわからないけど、情報部隊と言っていたから、身軽な方が良いのかもしれないね。
「終わりました」
「ありがとうございます。それじゃ、次の鎧を着ますね」
「はい。私はまたカーテンの外で待機しておりますので、もしお手伝いが必要な事があれば、お声をおかけ下さい」
「はい。ありがとうございます」
鎧を外し終え、ギャンベゾンのみになった俺に言って、ヒルダさんはカーテンの外へと出る。
お礼を言って見送った後、別の鎧を着るために準備を始めた。
「さて、次の鎧は……と」
姉さんを楽しませる着せ替え人形になるつもりはないけど、折角用意された鎧なんだから、一応は全部着てみようと思う。
もしかしたら気に入る鎧があって、今後の冒険者活動の時に装備したい、と思える物もあるかもしれないからね。
……あまり気乗りはしないんだけどね。
「んー、あんまり似合う鎧が無いわねぇ……」
「リクさん、金属鎧があまり似合わないんですね……」
「勇ましく見える金属鎧は、俺には合ってないのかもしれないね」
時折、ヒルダさんに手伝ってもらいながら、用意されていた鎧を着て皆に見せて行く。
姉さんやモニカさんが言っている通り、今まで来た鎧の中で、似合ってる鎧は無かった。
金属でできた鎧自体が、着慣れないという事もあるのかもしれない。
ちょっと違うかもしれないけど、初めてスーツを着る人みたいな感じかな?
……スーツを着た事は無いけど。
「ん? これは……?」
少なくなって来た鎧を見て、ちょっと他と違う物を発見した。
それに触れてみると、金属でできているようなんだけど、少しだけ他と違う感触を感じた。
青みがかってる鎧……か。
「とりあえず、着てみるか」
他の鎧と違い、それは部分鎧になっていて、胸部分とスカート状に下へ伸びる部分……ブレストプレートとフォールズって言うんだっけ……。
それと、肘近くまでのガントレットと足からすねの鎧……サバトンとグリーブで作られた鎧だった。
これなら、他の全身を覆う鎧と違って動きやすそうだ。
「んー、思ったより軽い……かな?」
青みがかった鎧を着て、動きを確かめる。
全身鎧より軽いのは当然なんだけど、それでもさらに少しだけ軽い気がする。
鎧で覆ってない部分はギャンベゾンを着てる。
部分的な物だから、ヒルダさんに手伝ってもらう事なく、一人で着て動きを確かめながらカーテンの外に出た。
鎧で覆ってない部分はギャンベゾンを着てる。
「……どうですか?」
「とても似合っておいでですよ。それでは、皆様に見てもらいましょう」
「はい……」
ヒルダさんに見せた後、皆のところに行ってその鎧を見せる。
どうでも良いけど、俺が色々着替えて鎧を試してる間、皆くつろぎ過ぎじゃないかな?
お茶だけじゃなく、茶菓子っぽいものまで食べてるし……。
「へぇ~、それは似合ってるわね」
「リクさん、格好良いわね」
「ふむ……リクには部分鎧の方が良いのだろうな」
「皮の鎧から金属になっただけで、強そうに見えるわね」
「実際は、皮だろうが金属だろうが、関係無く強いのだがな……」
「リク、格好良いの!」
「今までで一番まともなのだわ」
青みがかった部分鎧は、皆に好評のようだ。
やっぱり動きづらい全身鎧よりも、部分鎧の方が良いみたいだ。
でも、皮の鎧も軽くて動きやすいから、結構好きなんだよなぁ。
「その鎧は……あれね」
「あれ? この鎧だけ、他とちょっと違う感じだけど……どんな鎧なの?」
「それはワイバーンの皮を加工した物を、混ぜ込んで作った鎧よ。貴重な物だけど、一応持って来させてたの」
「へぇー、これがワイバーンの皮で作った鎧……」
「全身鎧にしたかったのだけど、ワイバーンの皮は貴重だからね。部分鎧にしかできなかったようね。……まぁ、りっくんのおかげで皮は大量に入ったから、全身鎧もできるだろうけど」
ワイバーンの皮で作られた鎧って事は、火に強かったり、他の金属よりも丈夫だったりするんだろう。
もしかすると、青みがかってるのは、ワイバーンの皮の色が混じってるせいなのかもしれない。
……もう少し青を強くして、紋章とかを入れるとどこぞのゲームに出て来る鎧に近くなるだろうけど……それはさすがにね……。
「ワイバーンの皮……成る程ね……」
「気に入った?」
「んー、皮の鎧も軽くて動きやすいから、どうするか悩むけど……これも悪くないね」
まぁ、これはパレード用の鎧なだけだから、このまま着て冒険者活動ができるとは思ってないけど、金属製の鎧というのも考えておいても良いのかもしれない。
ワイバーンの皮は、多少持ってるから……それを使ってね。
珍しく、これだけは皆に好評なようだし、ね。
「さて、最後の鎧だね。……これだけ、他とちょっと違うような感じだ」
最後の鎧は、ワイバーンの皮で作られた部分鎧ではなく、今までと同じ全身鎧。
でも、他と違ってちょっと薄く作られていて、ちょっと軽い。
ただ、いたる所に装飾が施されていて、彫金されている部分もあり、見栄えは良さそうだ……俺に似合うかどうかはわからないけどね。
「えっと……すみません、ヒルダさん」
「畏まりました」
ヒルダさんにまた手伝ってもらって、その軽めの鎧を着る。
薄めの金属でできてるけど、これって戦闘に使うとなると、ちょっと薄すぎないかな?
軽いのは良いんだけど、ちょっと心もとない気がする。
「では、皆様に……」
「はい」
鎧を着終えてカーテンの外へ。
皆の所へ歩いてみてもらうために移動する。
「んー……似合ってないわけじゃないけど……」
「華やかな鎧なのね。でも、さっきの鎧の方が、リクさんには似合ってたかも……」
「それは……戦闘用じゃなく、儀礼用の鎧か。しかしリクにはあまり……」
等々……やっぱり全身鎧は皆に不評なようだ。
全身鎧で騎士のような姿で、格好よく戦う……というのは俺には合ってないようだね。
……ちょっと悔しかったりはしないよ、うん。
装飾が華美な鎧も、リクに似合ってるとは見られませんでした。
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