女の子は神様?
「……ん……」
「気が付いた?」
目を開ける。
何か白い世界にいた。
見たことのない世界に立ってるんだけど……。
ここはどこだ?
俺、トラックに轢かれたんだよな……
「危ないとこだったね?」
危ないとこ?トラックに轢かれたた後で危ないも何もないじゃないか。
「轢かれてないよ?」
え?だって……俺……トラックの前に走り込んで……。
それで……。
「そうだね、危ない事するなぁ」
危ない事って言われても……あの子を助けるにはそうするぐらいしかなかったと思うけど……。
「あの状況じゃあそうかもね。でも、人間があのスピードと大きさのトラックに轢かれたら死んじゃうよ?」
まぁ、確かにあれはもう助かる見込みないだろうなぁ。
「ほんとにね」
って、ちょっと待て。
「うん?」
俺は誰と喋ってるんだ?
「私と」
私?えーっと。
視線を少しだけ下げてみると、そこには助けたはずの女の子がいた。
あれ?何で俺と一緒にいるんだ?ここは天国とかそういうとこかなーとか思ってたけど。
「残念、天国じゃないよ。あと、喋ってるって言っても君は声を出してないけどね?」
そう言われれば……さっきから声に対して頭の中で考えてるだけだな。
「うん、君の考えてる事を読んでるからね」
女の子は微笑みながらそう言うが、俺の考えを読む?どうやって?そんな事出来るわけないじゃないか。
「んー、出来るものは出来るんだからいーの」
軽く言ってくるが、そんな事できるわけないし……。
でも確かに今声を出さなくても会話ができてるな。
何でそんな事ができるんだ?
「まぁ、神だしね」
え……?神?
「うん」
神様なの?
「うん」
何で?
「えっと……何でと言われても、神だから……としか言えないよ……」
ちょっと困った顔をしてるけど、ほんとに神様?
「そうだよ?」
……んー.
まぁ、何でもいいか。
「え?いいの?」
おう、神様だとか言われても正直わかんねぇし、別に信じる信じないとか関係なしに今目の前にいて、こうやって変なやり方の会話が出来てるしな。
「ふーん、面白いね」
面白いか?まぁ、いいか。
ただ、考えてる事が読まれるってのはあんま気持ち良いもんじゃないな。
「そう、じゃあやめる」
え?やめれるの?
「今、感覚を一つ切ったから、これでもう考えは読めないよ」
そうか、もう読まれてないのか。
結構簡単に切り替えられるんだな。
「……」
こっちを見ながらニコニコしてるけど、 話さなくなったな、何でだ?
あ、そうか、声出さないと向こうには伝わらないか。
「えっと、ここはどこなんだ?俺、死んだんだっけ?」
「ここは神の御所、まぁ普通の人が住んでるとことは違って、神々が住む場所だね」
……えーっと……。
「あと、死んでないよ?」
「え?だって……」
俺、トラックに轢かれたんだよな?
確かに俺はトラックの前に走り込んだはず……。
「死んでたらこの場所にも来てないからね。魂だけになって意識もなく、次に産まれる時まで世界を彷徨ってるから」
「じゃあさっきのトラックは?夢かなんかなのか?」
「トラックはちゃんといたよ。あの場所で走っていたし、何事もなく通過して行ったよ」
どういう事だ?
「んーっとね、女の子を助けようとしたじゃない?」
「ああ」
「あれね、私なんだけど」
「まぁあの時見たまんまの姿だからそれはなんとなくわかるが」
「その、私を助けようとして人が死んじゃうなんて悲しいから、ここに転移させたんだ」
「転移……」
何かアニメとかで聞いた事のある言葉だな、確か別の場所に瞬間的に移動するとかだったか。
「そんな事が出来るなら、俺の行動は無駄だった?か?」
「ううん、そんな事ない。私あの時はれっきとした人間だったから、トラックに轢かれたら死んじゃう」
「神なのに?」
「神でも、現世に存在するためには人間とほぼ同じ体になるから。自分を転移させたり、トラックに轢かれても平気なんて事はないんだ。だから助かったよ」
「もし助けなかったら?」
「死んじゃう。神でもあの時の体は人間だから、死んじゃって神としても消滅しちゃうとこだったの。だからありがとう」
そうか、まぁ俺の行動が無駄じゃなかったんなら良かった。
嬉しそうな顔をしてる女の子を見てれば、落ち込む事もないか。
無駄死にとかじゃなくて良かったぁ。
「というか、何で神様があんな場所にいたんだ?」
「面白そうだったから!」
「面白そう?」
「うん、だってここにいたってやる事ほとんどないし、何も面白い事ないから」
「そうかぁ」
神様が面白がってそういう行動を取っていいのだろうか?
いいんだろうなぁ、実際にそうしてるんだし。
「それで?俺はこれからどうなるんだ?まさか神様を助けたから神様になれるってわけでもないだろ?」
「まぁね、人間から神になれる事なんてそうそうないから、違うよ」
そうそうないって事は、なくはないのか。
まぁ、俺は別に神様になりたいわけじゃないからどうでもいいけど、つまらなさそうだし。
「えっとね、私を助けてくれた代わりに死ぬのはちょっと嫌かなって思って」
ちょっとなのか……。
「だからあなたを助けたんだけど……」
「だけど?」
「私、神は神でもあなたの世界の神じゃないの」
「え?という事は、別の世界って事?」
「うん、だからね、転移させたのはいいんだけど、あなたを元の世界に戻すことはできないの」
「……」
「あっちの世界にはあっちの世界の神様がいる。ほんとは干渉しちゃ駄目なんだけど、今回は私の存在がかかってたから、特別に転移できたの。でもほんとはしちゃ駄目なことだから、転移で強制的に呼ぶことは出来ても、戻すことは出来ないの。二度目の干渉になっちゃうから」
んー、帰れないのか……。
「帰れない場合、どうなるんだ?ずっとここにいるのか?」
「ここには長くいられないの。ここは神のための場所だから。ここに神でもない人間がいると、段々記憶が曖昧になって、意識も少しずつなくなって、魂がすり減って行って、最後には消滅しちゃうから」
「何か危ないとこだなぁ」
「神にとっては居心地がいいから、危なくはないんだけどね」
「ここにいられない、元の世界にも帰れないとなると、どうすればいいんだ?」
「私の世界に移動してもらう事になるね」
「俺がいた世界とは違うのか?」
「だいぶ違うよ。あっちは科学が発達した世界だけど、こっちは科学なんてあんまりない。その代わりに魔法があるかな」
「魔法……か」
何か、ラノベとかアニメとかで見た世界のようなとこなのかな?
というかこれって、よくある設定とか言われてる異世界転移なのか?
そんなに詳しいわけじゃないけど、多少はラノベを読んだりしたことはある。
同級生にそういうの詳しいのがいたっけなぁ。
たまに面白そうなのは借りて読んでたけど。
あ、そういえばあいつに借りた本、まだ返してなかったっけ……。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
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