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暑苦しいのが苦手なエルサ



「さて、それじゃあ私は、あっちの槍隊と訓練してくるわね」

「それなら私は、あちらで剣を持っている兵士達だな。……特殊な武器を持っている者もいるようで、楽しめそうだ」

「モニカさんは良いとして……ソフィーさん? 訓練をする事が目的ですよ?」

「ははは、訓練をしながら、いつもは見ない武器を使って戦う者と相対するのも、楽しそうだろう?」

「はぁ……まぁ、程々に……」


 槍の訓練をしたいモニカさんは、槍隊の方へ。

 王都へ来る前は、マリーさんと魔法の特訓が主目的だったから、あまり槍の鍛錬が出来なくて不満気味だったみたいだからね。

 ソフィーさんの方は、剣を使うからというのもあるけど、特殊な武器を見るのも楽しそうだ。

 訓練も好きそうだから、楽しくする分には良いんだけど……それに付き合わされる兵士さんはかわいそうだな……と何となく思う。


「あちらは……魔法隊か。魔法を使う者もいるのだな」

「軍だから、戦闘で使えるものは全て使うでしょ。それじゃ私達はあっちね」

「エルフの魔法を教えるんですか?」

「エルフと人間は魔力がそもそも違うからな。教える事は出来ないと思うが……魔法に対する事なら色々と教えられるだろう」

「それに、あの人達は魔法で戦うだけじゃなさそうだしね。こっちにも学ぶ事があると思うわ」

「成る程ね」


 アルネとフィリーナは、魔法を使おうとしている集団に気付いて、そちらに向かうようだ。

 人間とエルフだと、魔法の出力のようなものが違うから、同じ魔法を扱う事は出来ないんだろうと思う。

 けどその代わり、人間の方は魔法と剣等の武器を交えて戦う。

 だから、二人にとっては魔法以外の戦いを学ぶ良い機会なのかもしれない。


 エルフの集落で、ソフィーさんが剣を普及していたから、ここで学んだ技術を持ちかえれば、剣で戦うエルフというのも、いつか実現しそうだね。

 ……まぁ、魔法を使わないとかじゃなく、魔法と剣を混ぜて戦うって事なんだろうけど。


「ん?」

「どうしたの、リク?」

「あぁ、ユノか」


 皆がそれぞれ訓練をする相手を見つけて移動した後、何か頭にひらめいたような感覚。

 その時、エルサと端っこで待機していたユノが近づいて話しかけて来た。


「いや、何か面白そうな事を思いついた気がするんだけど……こう、いまいちはっきりしないんだ」

「そうなの? リクが思いついた事なら楽しい事だと思うの。さっきの回転も凄かったの!」

「そう? 俺の回転攻撃はヴェンツェルさんの見よう見まねなんだけど……」

「どっちも迫力があって凄かったの! ……私もしていいかな?」


 何かを思いついたような気がしたけど、はっきりとはせず、頭の片隅で霞のようになって消えていった。

 まぁ、何かあるなら、そのうちまた思いつくだろうと考えて、気にしない事にした。

 しかしユノ、あの回転攻撃をしてみたいのか? ユノは体が小さいから、速度は出そうだけど……筋力とかはどうなんだろうか……威力が出るのかどうかわからない……。


「まぁ、やってみたいならやってみると良いよ。ただし、誰かに怪我をさせない程度にね?」

「わかったの! 試して来るの!」

「武器は木剣にするんだぞー!」

「はーい、なの!」


 回転攻撃をしてみたいと言うユノ。

 ユノなら出来ない事は無いだろうけど、一歩間違うと誰かに怪我をさせてしまうかもしれないからね。

 それと、鉄の剣だといくら刃引きしてあるとは言え、ユノの技量ならスパスパ切れてしまいそうだから、木剣を勧めておく事を忘れない。

 元気よく返事をしながら、ヴェンツェルさんがいる方へ走って行くユノ。

 ……もしかして、ヴェンツェルさん相手に試すのかな……? まぁ、あの技を考えたのはヴェンツェルさんだから、色々教えてもらえるだろうけど……大丈夫かな……? ……ヴェンツェルさんが……。


「まぁ、良いか」

「お疲れ様なのだわ、リク」

「エルサ」


 ユノを見送って、訓練場の端に来た俺の頭へ、エルサが飛んで来てドッキング。

 手合わせもあって緊張していた部分もあるから、エルサのモフモフが良い感じに緊張を解してくれて、癒しだなぁ。


「勝ったのは当然なのだわ。だけど、気を付けるのだわ」

「気を付ける……どうしたんだ?」


 エルサは、俺の強さというのを一番把握しているから、勝つのは当然と考えているのはいつもの事だ。

 だけど、気を付けるとはどういう事だろうか……?


「あの暑苦しさは注意するべきなのだわ」

「ははは、ヴェンツェルさんはあの体格と言い、確かにそういうところがあるよね」


 どうやら、エルサはヴェンツェルさんが暑苦しい事に注意しろと言ってるみたいだけど……あれは注意してどうにかなるものなんだろうか?

 本人に近付かないという事で対策は出来るだろうけど、別に避ける相手というわけでもないから、そういう事はしたくないしね。


「今回は、実戦じゃないからあの程度で済んだのだわ。……けど、もしあの熱量が実戦で高まったら……覇気で魔力が飛ばされるかもしれないのだわ」

「覇気……? 魔力が飛ばされる事なんてあるのか?」

「普通は無いのだわ。だけど、あのヴェンツェルとかいう人間からは、熱量と覇気を感じるのだわ。そのまま高めれば、魔力に干渉する程の密度になる可能性もあるのだわ」

「そういうものなのか……」


 覇気がどういったものなのかはよくわからないが、ヴェンツェルさんは自信の熱量をそれに高められる可能性を持っているらしい。

 どう作用して魔力に干渉するのかも、俺には当然わからないんだけど、凄い事だというのはわかる。


「リクの守りは魔力によって作られてるのだわ。覇気に干渉されて、魔力が薄まったところにさっきの攻撃をされたら、全力でもかすり傷くらいにはなるかもしれないのだわ」

「……それでもかすり傷なのか……」


 ほんと人間離れしてるんだな、俺。

 まぁ、それはともかく。

 ヴェンツェルさんがそんなに凄い人なら、この国の将軍でいてくれるのは心強い。

 マックスさんと同じで裏表のない性格に見えるから、そんな人が将軍として国の要になっている事は歓迎するべき事だと思う。


「……まぁ、あの人間はリクに何かしようとはしないだろうけどだわ」

「将軍だからね、この国を守る事の方が重要なんだよ。俺がこの国と敵対とかしない限り、敵になる事はないね」


 エルサも、ヴェンツェルさんが俺をどうにかする事は無いと考えているようだ。

 姉さんが治めてる国と敵対するつもりなんて一切ないから。ヴェンツェルさんと敵対する事は無い。

 マックスさんとも親友なんだから、これからもこちらがお世話になる事はあるかもしれないけどね。

 ……まぁ、昨日と同じような感じで、事あるごとに手合わせを求められそうだけど……俺にとっても勉強になるから、悪い事じゃないか。


「さて、皆の訓練の様子はどうかな?」

「リク以外は何かしてるのだわ?」

「皆、自分を鍛えるために訓練をしてるんだよ。魔物達と戦ったりで、色々と考える事があるんだと思う」

「ご苦労な事なのだわ」


 訓練場の壁に寄りかかり、皆の様子を窺うようにする。

 エルサは暢気に言っているけど、皆これまでの魔物達との戦いで思う事があったみたいだ。

 はっきりとは言われないけど、モニカさんなんて先日の王城襲撃では、途中怪我が原因で最後まで戦えなかったのを悔やんでいるように見える。

 ソフィーさんは冒険者として、強くなる事が今一番の生きがいのような感じだし、フィリーナやアルネは万が一以前と同じようにエルフの集落が襲われた時の事を考えているようだ。

 エルフだけで守る方法、今までのエルフとは違う戦い方を考えているみたいだからね。




エルサは訓練には興味が無さそうです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はブックマークを是非お願い致します。


作品を続ける上で重要なモチベーションアップになりますので、どうかよろしくお願い致します。

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