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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1946/1949

現れた予想外の人物

ブックマーク登録をしてくれた方々、評価を下さった方々、本当にありがとうございます。



「はぁ……疲れた……ユノ達はほんともう、手加減を知らないんじゃないかな? 俺に言われたくないかもしれないけど」


 クランを出て、マティルデさんに会うため王城にある冒険者ギルド支部に向かうため、王都の道を疲れた足を引きずりながら歩く。

 事務員さん達、ナラテリアさん達との話は滞りなく、演習をするための冒険者さんへの通達や準備、備品など消耗品の確認なども体感で一時間もしないくらいで終わった。

 さすが、仕事ができる人達だ……とは思ったけど、話が終わるのを見計らうようにユノとロジーナ……ロジーナについてきただけのレッタさんが乱入。

 お試しというか、結界の練習と時間延長処理を施しての体験をさせられた。


 焦っているというか、戦争までの残り日数が着々と減っているから、できる時にやっておこうという事らしかったけど。

 そしてその中で、ほぼ丸一日、ユノやロジーナと訓練をさせられるという……。

 不思議な事に、結界の中でユノ達が処理を施すと、透明な結界から見える外はちゃんと時間が流れているように見えて、日が沈み、さらに日が昇ったんだ。

 まぁどういう原理なのかとかは聞いてもわからないので、そういうものと思う事にして……ユノ達曰く、そうしないと人としての精神に支障をきたすからとか言っていた。


 確かに、時間の流れを一切感じられない空間で、ひたすら訓練に打ち込むのは精神の消耗が激しそうだとは思ったけど。

 ほぼ一日経過したし、結界内ではレッタさんが(ロジーナのために)あれこれ道具を持ち込んでいて食事などの用意をしてくれていたけど、それはともかく。

 お試しを終えてみると、結界の外では数十分程度しか経過していないようだった……と、別部屋で仕事をしてくれていたナラテリアさん達と話して判明。

 時計が存在しないから、あくまで体感で数十分というくらいだけど。


 本当に、時間が引き延ばされているんだなぁと実感しながら、訓練での疲れよりも、思いっきり動いて晴れ晴れとしているユノ達を残し、クランを出たってわけだ。

 ユノ達、もしかしなくても俺でストレス解消をしていないか? と思うのは頭の隅に封印しておこう。


「はぁ、お風呂に入りたい……」


 王城の門を通り、冒険者ギルドの簡易な建物に入りながら呟く。

 結界は部屋いっぱいに作っていたから、空間的には広かったし、レッタさんがあれこれロジーナのためにやってくれていたおこぼれにあずかれたのはいいんだけど、さすがにお風呂には入れなかったからね。

 汗を濡れタオルで拭く程度の事しかできなかったし。

 心の洗濯とも言うし、お風呂に入ってゆっくりしたい……けど、まだそれはできなさそうだね、なんて考えながら、マティルデさんのいる部屋の扉をノックした――。



「演習には、特別依頼として王都にいる有力な冒険者にも参加させよう。まぁ、多くの有力冒険者は、リクのクランに入っているのだけど」

「ははは、ありがとうございます」


 大まかに、獣王国での事や演習の事をマティルデさんに伝えると、演習に参加してくれる冒険者を募ってくれる事になった。

 姉さんの方からもちゃんと話はいっていたみたいで、マギシュヴァンピーレの事も知っていくれていたけど、さすがに事が事なため、クラン所属以外の冒険者には伏せておくらしい。

 あと、ギルド内でも王都にいくつかある支部のマスターや、俺と関わりのある都市のギルドマスターなどに報せるくらいに留めるとか。


「とはいえ、国からの依頼ともなれば参加を希望する者も多いだろうな。戦争に参加するかは別として、多少の怪我はあれど命の危険がないと言える演習だ。それで報酬がもらえるとなれば、飛びつくのも多い。もちろん、手を抜くような冒険者がいないように、こちらで注意しておくが」

「お、お願いします……」


 ニヤリ、と口の端を上げるマティルデさん。

 どういう注意をするのか気になったけど、なんとなく聞いてはいけない気がした。


「クランの加入している冒険者以外で、戦争に参加する人はどれくらいいそうですか?」


 なんとなく話を変えるため、マティルデさんも言っていた戦争参加について聞いてみる。


「参加は自由意志の下に行われるため、報告義務はないのだけど……こちらの調べによると、数は少ないな。少数ながらいる、と言ったところかしら」

「やっぱり、戦争は嫌がられるんでしょうね」


 基本的に魔物を討伐する事が多い冒険者だから、人と人の命の取り合いとも言える戦争には興味がない、というか嫌がる人が多いんだろう。

 野盗などを捕まえたりなど、人に対してという事もあるにはあるけど。


「それがそうでもない。戦争そのものに興味があるなしなどは個人差があるでしょうけど」

「そうなんですか?」

「戦争があれば、国が荒れる。戦勝国になるかどうかに関わらずね。国外への牽制などもあるにせよ、普段は国内の事に対処している軍のほとんどが出張るから。おろそかになる部分があるのよ。ただまぁ、そこはあの女王様は上手くやっているわね。戦争なんかより、国内にだけ注力している方が向いているんじゃないかしら? そうは言っても、戦争に対する軍備なんかも抜かりがないようで、あの若さでそれができるのはちょっと信じられないくらいよ」


 国が荒れる、と言うのはまぁわかる。

 大量の物資が消費され、考えるのも避けたいけど人も同じく消費されてしまう。

 そうなれば何かしら不足する所が出るのは簡単に想像できるしね。

 マティルデさんは感心や感服を通り越して、呆れも混じったように姉さんを評していくらか話してくれたけど、なんとなく女王様である姉さんには前世の記憶、俺の姉だった時の日本での記憶があったからじゃないか、と思う。


 前世と合わせると、数十……姉さんの名誉のため、詳細な数は深く考えないようにしておくけど、ともあれそれだけの経験や記憶があるんだから、実年齢と見合わなくても当然なのかもね。

 日本では、簡単に過去の戦争や国のあれこれが調べられたり、学校で勉強する事だってあったし、多分密度としてもこちらの世界基準で考えるとかなり濃いだろうし。

 ちょっとズルい気がしなくもないけど、それが生かされてアテトリア王国の人達が笑っていられるなら、それでいいんだろう。


「まぁ、女王陛下が凄い、と言うのはわかりましたが、それと冒険者の戦争に対する考えとはあまりつながらない気が?」

「そうでもないのよ。国民を安心させるためかしらね、冒険者……正確には冒険者ギルドに対してだけど、協力を要請して色々とやっているから。まぁ早い話が、冒険者に対しても色々と依頼が出るって事よ」

「稼ぎ時、って事ですか。成る程」


 冒険者になれば、必ず儲かるわけではない。

 俺はかなり特殊な方だから例としては考えないにしても、日常的に依頼を受けなければ収入がないわけだし。

 それに、実力に見合った依頼を受けなければ長く続けられもしない。

 とはいえそんな依頼が常にあるわけでもなく、場所によっては依頼が少なくて冒険者の方があぶれてしまう場合とかもある。


 それが、戦争の影響でランクは様々だけど依頼が増えるのだから、冒険者としても喜ばしいってところなんだろう。

 街中での依頼も増えて危険が少ないのもあるだろうし。

 マティルデさんから聞いた話の中には、戦争に参加するよりも上手くやれば儲かるから、というのもあったけど。

 手放しで喜ぶわけではないにしろ、日頃依頼にあぶれ気味な冒険者を始めとして、戦争は嫌がられる事ではないのか。


「冒険者は戦敗国であっても、ある程度保護されるのもあって、勝敗に興味がない者もいるが。まぁ、それを無視してという場合もあるから絶対的な信頼とは言えないけど。あとはそうね、単一の国出身者ではない、と言うのも大きな要素と言えるわ」

「国への帰属意識が低い、とかですかね?」


 同じ国出身者で、出身国でのみ活動するなら多少は帰属意識が強くなるとは思うけど。


「話が早いわね。リクの言う通りよ。もちろん、アテトリア王国内の冒険者は王国出身者が多いけど」


 特にアテトリア王国は国と冒険者ギルドの協力関係が強く、安定しているため国内の出身者が多いらしいけど、逆に他国出身の冒険者を呼び込む事にも繋がっているらしい。

 冒険者は国家間の移動をしやすいのもあってか、半々とは言わずとも三割から四割程度は他国出身者の冒険者なんだとか。

 逆に、冒険者として活動しにくい国では、ほぼその国出身者で占められる事だってざらにあるみたいだ。


「だから、国を守ろうと考える冒険者が少ないし、国家間の戦争なんてそもそもに興味がない冒険者ってのも多いわね。依頼が増えるから、嫌うより歓迎するのも多いけど」

「成る程……そういうものなんですね」


 国家間にまたがる組織である冒険者ギルド。

 だからこそ、冒険者の自由意志で戦争への参加可否を決められるという側面もあるのかもしれない。

 とはいえ、冒険者自身が持っている情報などには気を遣うから、ギルドの方は大変しかないんだけど……なんてマティルデさんがため息を漏らしていた。

 冒険者本人にその気があるかどうかは別として、ちょっとしたスパイみたいな事も出来てしまうから、仕方ないんだろう。


 まぁ一応、戦争の気配がし始めたくらいから、冒険者さんの国家間移動は多少厳しくなるみたいだけど。

 それは安定しているアテトリア王国内では、あまり外に出ようと言う冒険者さんは少ないようで、あまり問題にはならないとか。

 もしかすると、こういう時の事も考えて、姉さんは冒険者ギルドと協力関係を強くしているのかもしれない……単純に、便利だからとかそう言うのもあるかもしれないけど。

 そんな風に、あれこれとマティルデさんと話していると、不意に部屋のドアがノックされた。


「来たようだな」

「あ、じゃあ俺はこれで……」


 長居してしまっているし、お邪魔になるかもと思って部屋を辞そうとしたら、マティルデさんに止められた。

 何やら俺にも関わりがある事らしい。

 ノックの主に対してマティルデさんが入室の許可を出すと、ドアを開けて入って来たのは……。


「お久しぶりですのう、統括ギルドマスター殿。おや、リク殿もおられましたか」

「え、ベルンタさん? あ、お久しぶりです」


 ブハギムノングの冒険者ギルドで、ギルドマスターをしていたベルンタさんだった。

 腰が曲がっていて、好々爺と呼ぶにふさわしい柔和な笑みを浮かべたその人は、部屋にいた俺に少し驚いた様子を見せる。


「しらじらしいわよ、ベルンタ爺。ここにリクがいる事を知っていて訪ねて来たのだろうに。というより、そう報せていたはずよ」

「おやおや、マティルデ嬢はせっかちでいらっしゃる。統括ギルドマスターというのは、それだけ重荷なのですかな?」

「えーっと……」


 不穏な雰囲気、と言う程ではないんだけど軽いやり取りのようで、何やら棘が混じっている二人にどうしたものかと戸惑う。


「はぁ、相変わらずのらりくらりと嫌味を言うのは変わっていないのね。――リクは会った事があるのは知っているけど、改めて紹介するわ。ブハギムノングで冒険者ギルドのマスターをしている、元アテトリア王国統括ギルドマスターのベルンタ爺よ」

「え、元……統括……?」

「そんな事をやっていた気もしますのう。いかんいかん、老いとは怖いものじゃて」

「とぼけているけど、全然ボケてもないから、気を付けるのよリク」


 えーっと、ちょっとだけ理解が追い付かなかったけど……とにかく、ベルンタさんはマティルデさんより前に、アテトリア王国全体の冒険者ギルドをまとめる統括ギルドマスターをやっていたって事らしい。

 それがどうしてブハギムノングという、冒険者には不人気、依頼もほぼないような場所でギルドマスターをやっていたのか疑問だ。

 ベルンタさん曰く「閑職に追いやられてのう」という事だったけど、それに対しマティルデさんは「楽隠居したいからと、仕事を全て押し付けてさっさと逃げた」との事だ。


 どちらが正しいかはわからないけど、ともあれベルンタさんがただのお爺さんではない事は間違いない。

 ブハギムノングでのあれこれがあった時、その片鱗は確かにあったけど。


「え、えーっと、それでベルンタさんはなぜここに? ブハギムノングの冒険者ギルドは……」


 マティルデさんとのやり取りは、見ている分には面白くもあるけど、それじゃ話は進まないし席をはずそうとした俺を止めた理由も早く知りたい。

 あと、ギルドマスターなのに離れてもいいのかな? とも思う。


「ギルドの方はアルテに任せて来たわい。相変わらず、というよりリク殿が問題を解決して以来、特にやる事がなくなってのう」


 アルテさんというのは、ブハギムノングの冒険者ギルドにいた獣人の職員さんだ。

 尻尾が見事なモフモフだったのでよく覚えているけど、よく考えたら俺、あの街でアルテさんとベルンタさん以外のギルド職員さんを見ていないね。

 さすがに二人だけしかいないってわけじゃないと思うけど、まぁ俺が行った時は依頼もほぼないようなものだったから、仕事自体もあまり多くないんだろうと思う。


「嘘を吐かないでベルンタ爺。リクが、というよりエルフ協力のもと行われている研究で、クォンツァイタって鉱石の価値が見出されてからは、冒険者ギルドもそれなりに忙しいはずよ」

「そんな事もあったかのう。わしはブハギムノングの冒険者ギルドを一応はまとめておるが、普段はアルテが管理してくれておるからのう」


 とぼけるベルンタさんに溜め息を吐くマティルデさんが教えてくれたけど、クォンツァイタという元々くず鉱石と呼ばれてなんの価値もなかったはずの物に価値が見出され、需要が高まった。

 まぁ魔力を蓄積する性質が他の鉱石以上のおかげで、今は戦争への備えや利用のためではあるんだけど。

 ともあれそんな元クズ鉱石、多くの鉱山で大量に産出される厄介者が、今では出れば出るだけお金になるという事で、ブハギムノングはこれまでにない程沸いている状態だとか。

 なんとなく、ゴールドラッシュかな? なんて頭をよぎったけど、金が出たわけじゃないか。


 そんなこんなで、新規の採掘者が集まるなど人が増えれば、問題も発生する。

 さらに採掘されたクォンツァイタを安全に輸送するために、護衛も以前より必要となれば、冒険者にもそれなりに依頼が出せると。

 魔物の討伐などは相変わらずほぼない状態みたいだけど、俺が行った時のような閑散とした冒険者ギルドではなくなっているみたいだ。


「まぁ臨時として急場をしのぐための職員は、近くの支部から向かわせているから、ベルンタ老が離れてられないわけじゃないけど。でも忙しくないわけじゃないの。ただ、ここに来たのは以前から私が頼んでいた事のためよ」

「マティルデさんが?」


 わざわざ統括ギルドマスターが頼む程の事だから、結構な大きな頼み事なんだろうけど――。



頼み事はリクにも関係があるのかもしれません。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

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