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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1938/1950

フレイちゃんとの繋がり



「キキー! キ、キー!」

「え、でもそれは……魔法が使えないと、フレイちゃん達を呼び出せないし……」


 心配してくれるフレイちゃんだけど、いつでも力になる、というような事を言ってくれた。

 ただ、気持ちは嬉しいけど、もし協力して欲しい事があったとしても魔法が使えない現状では、呼び出す事ができないしなぁ……。


「あぁそれだけどね、リク君。アルセイスと会って力を授けられたでしょ?」

「力……魔力弾の事ですか?」


 ハルさん達との話を終えたらしいネメアレーヴェさんが、俺とフレイちゃんの会話を聞いていたらしく、参加してくる。

 アルセイス様から授かった力といえば、重要な場面で使っている魔力弾の事だろう。

 ユノを任せられるか試す意味の方が強かった気がするけど、アルセイス様と出会っていなければ魔力弾を使えなかっただろうから、もっと困った事になっていたかもしれないし、感謝している。


「そうそう。まぁそれをよくわからない使い方をして、マギシュヴァンピーレを消滅させたのは驚いたし、正確には授けたのではなくリク君が持っている魔力の扱い方を教えた、というくらいなんだけど」

「よくわからないって……まぁ、俺自身もなんであんな事ができたのかよくわかっていませんけど」


 魔力弾が形を変えて、大きさすらも変えてマギシュヴァンピーレに使えたのは間違いないけど、どうしてあぁいう事ができたのかまでは自分でもよくわかっていない。

 なんとなくできる気がしたから、やってみたらできた、というだけだしね。

 まぁ魔法にしたって、論理的な事とかよくわかっていないし、魔力自体よくわからない力といえばそうだから、そんなものかなくらいに考えている。


「もうちょっと、自分の力と扱いに関して知っていた方がいいと僕は思うけど……それはともかく。アルセイスがリク君に協力しておいて、僕がしないなんて示しが付かないからね。特にリク君は、獣人達を救ってくれた。獣神としては何もしないわけにはいかないんだ」

「お礼が欲しくてってわけじゃないので、気にしなくてもいい……なんて言っても、多分駄目なんでしょうね」

「リク君のそういうところは、僕としてはすごく好ましいし、ユノ様やロジーナ様が一緒におられるのも納得するんだけどね」


 うーむ、獣人さん達を助けるのはアマリーラさん達が近くにいてくれるからってのが大きい。

 それに、帝国との戦争でアテトリア王国と協力する事になったんだから、俺としてはそれで充分なんだけど。

 でも、神様というか祀られている獣神様としては、それだけではいけないって事なんだろう。

 断ろうとしても断れない雰囲気だし、ここは遠慮しない方が良さそうだ。


「そういうわけでね、本当はウィンドスピリットを呼び出してそうしようとしていたんだけど……風というのは、獣人にとっても特に関わりが深いし。結局フレイムスピリットが来ちゃったから、そっちにするけどね」

「キキー!」

「はいはい、遠回しでごめんね。こうして人や我が子のような獣人と話すのは久しぶりだから、ついね。とにかく、フレイムスピリットとリク君を繋げて、呼び出せるようにしようかなって」

「フレイちゃんを? 呼び出せるようになるのなら嬉しいですけど……」


 魔法が使えないのに、フレイちゃんを呼び出せるのだろうか?

 いやまぁ、ネメアレーヴェさんは魔法とは違う方法でフレイちゃんを呼び出したようではあるけどね。

 本当はウィンさんを呼び出したかった、というのは置いておいて。


「僕が仲介になる、に近いかな? 自然の魔力と人間などの生き物が持つ魔力は少し違うんだけど、だから魔法のような呼び出す手段が必要なんだ。でも、僕がパスを繋げる事で魔法を介さなくても、呼び出す事ができるようになる」

「そ、そうなんですか」

「キキ、キーキー!」


 いつでも呼び出して! と言いつつ期待の籠った視線をフレイちゃんから向けられる。

 フレイちゃんは炎だし、疑似的に目のような形をしているのはあっても実際の目とは違うんだろうけど、なんとなくそんな雰囲気を感じた。


「ただまぁ、消費する魔力が膨大だから、そこらの人が……それこそ、人に分類される中で魔力量の多い種族のエルフでも無理な量なんだけど、リク君なら問題ないしね」

「魔力量は、自分でもどうかと思うくらい多いのは自覚しています」


 エルフでも無理なくらい、となるとかなりの量だろう。

 魔力弾とどちらが大きい消費なのか、なんてのも考えたけど、いざという時にフレイちゃんが酔えるのは心強いし、戦いなどに備える時以外は有り余っている魔力だ、話し相手として呼び出すのもいいのかもしれない。


「というわけで、リク君はそっち。フレイムスピリットはこっちね」

「はい」

「キキ」


 ハルさん達が固唾をのんで見守る中、椅子から立ち上がってネメアレーヴェさんが指定した場所へフレイちゃんと移動。

 ネメアレーヴェさんの前に、フレイちゃんと向き合うようにして立つ。


「それじゃ行くよ……」


 クルリと背中を向けたネメアレーヴェさんが、俺とフレイちゃんの間に尻尾を差し込んでフリフリ……危ない危ない、思わず手を伸ばしそうだった。

 先の方とか、モフモフしてそうで中々の誘惑だ。

 獣人さんにとって、尻尾を触られるのは特別な意味があるらしいし、さらに相手は獣神様だ。

 簡単に誘惑に負けて尻尾に触れるのはいけないだろう、ましてや、ハルさん達の前だしね。


「キー」

「ん、く……物凄い無遠慮に触ってくるじゃない、フレイムスピリット。ほら、リク君も。優しくしてくれると嬉しいな……」

「え、あ、はい……」


 なんて、俺が揺れるネメアレーヴェさんの尻尾を前に我慢していると、おもむろにフレイちゃんが燃え盛る手を伸ばして包み込むように、というより炎で握った。

 ちょっと悶えたネメアレーヴェさんだけど、気を取り直して俺にも触れるように言う。

 ……触って良かったんだ。

 ちょっとどころか、かなりの期待をして言われた通り手を伸ばし、ネメアレーヴェさんの尻尾に触れる。


 俺の手を優しく包み込むようなモフモフな尻尾の毛、奥には硬質化した棘のような感触もあるから、やっぱりライオンに近いのかな?

 エルサの極上のモフモフも素晴らしいし、それとははっきりと違うけど、それでもこれはこれで素晴らしいモフモフだ……うへへ。


「……リク君はリク君で、中々の業を背負っているようだね」

「……すみません」


 ネメアレーヴェさんの言葉で我に返る。

 注目されていたのを忘れていた……モフモフを楽しむ場面ではないし、顔を引き締めないと。


「じゃあ、僕の尻尾を通してお互いの魔力を流して繋がりを作るよ。お互いの存在を感じて……」

「……っ」

「キ、キキ……」


 ネメアレーヴェさんの言葉と共に、尻尾に触れた手からじんわりとした熱が俺の体に流れて来る。

 俺の魔力も手から尻尾、フレイちゃんへと流れて行っているのを感じた。

 体に入って全身に広がっていく熱は、熱すぎる事はなくむしろ温かいと感じる程で、フレイちゃんの存在というのはこの事なのだろう。

 なんとなく、激しく燃え盛る炎の中に全てを包み込むような優しさを感じて、心地いい。


「……うん、こんなものかな」


 数秒、それとも数分だろうか?

 フレイちゃんから流れて来る温かさを感じてしばらく、ネメアレーヴェさんの声でハッとなる。

 全身に広がる熱に、集中していたようだ……尻尾のモフモフに触れているのに、それだけフレイちゃんの存在に感じ入っていたのかもしれない。


「それじゃあ、行きます」

「うん。気負わず、呼びかけながら内側の熱を外に出す感じで」

「はい……」


 お互いの存在を感じる事で、ネメアレーヴェさんが仲介して俺とフレイちゃんの繋がりができたらしく、一旦フレイちゃんにいなくなってもらった。

 あれだけ燃え盛っていた炎のフレイちゃんが消えていくのは、なんとなく寂しい気持ちになったけど、体の中にほんのりと熱が残り、そこから繋がりを感じているからかもしれない。

 ともあれ、試しにとフレイちゃんを呼び出す。


「えっと……フレイちゃん、お願い。来て」


 この場からいなくなっても感じる、体の中の熱。

 確かな繋がりでもあるその熱に呼びかけながら、自分の魔力と一緒に外へと流していく……すると。


「キキー!」

「フレイちゃん! っとと……!」


 先程と同じく、人の形をしたフレイちゃんが現れた。

 だけど、俺の中から抜け出した大量の魔力に少しだけ体をふらつかせる。


「ごっそりと魔力が減ったのがわかる? それが、魔法を介さず直接の繋がりでスピリットを呼び出すために必要な魔力なんだよ」

「魔法にしないと、結構魔力を使うんですね……ふぅ」

「キキー?」

「大丈夫。予想より魔力を消費したから、少し体が驚いただけだよ」


 フレイちゃんを呼び出すための魔力量、魔力弾を一回放つよりも多かった。

 一度に使った魔力が多かったので、フレイちゃんにも言った通り俺の体が驚いただけだ。

 それでも、全体の魔力からすれば物凄い多いとか、体に支障がある程じゃない。

 とはいえ、マギシュヴァンピーレとの戦いなどもあって、結構な魔力を使った後だからね……休憩はしたけどさすがに完全回復しているわけじゃないし。


「ともかく、これでフレイちゃんを呼び出せるようになったね」

「キキ。キー!」

「ははは、フレイちゃんも喜んでくれて俺も嬉しいよ」


 ずっと一緒、みたいに言いながら俺にくっ付くフレイちゃん。

 上半身だけの人型とはいえ、割と筋骨隆々な形だからちょっと……と思う部分はあるけど、フレイちゃんから好かれるのは嬉しいので気にしない。

 というか、フレイちゃん達スピリットに性別ってあるんだろうか? 見た目は男女分かれているように見えるけど、人とは違う存在だからねぇ。


 実際見た目も自由に変えられるみたいだし、フレイちゃんの雰囲気とかはなんとなくユノくらいの女の子っぽい。

 だからまぁ、フレイちゃんは小さな女の子って感じで接していればいいかなと思う。


「エレメンントフェアリー……いえ、正しくはスピリットでしたか。伝説上の存在と我々は考えていましたが、そのスピリットを呼び出し、あれほど好かれているとは……」


 改めて、フレイちゃんにくっ付かれている俺を見てハルさん達が慄きなが呟いている。

 獣人さん達にとって、獣神様であるネメアレーヴェさんと、スピリット達は崇拝対象だからそうなるのも仕方ないのかな?

 ただ、何故かアマリーラさんが得意気に胸を張りながら、尻尾を揺らしているけど……割といつもの事のようになってきたし、気にしないでおこう。


「んで、リク君。フレイムスピリットを維持するうえでの魔力消費の方はどうだい?」

「え? あ、えっと……」


 ネメアレーヴェさんに言われて、自分の魔力に意識を向ける。

 そうしてみると、ほんの少しだけ魔力が流れ出ているのに気付いた。


「確かに少しずつ魔力が消費されている感じがしますね。ただ、何もしていなければ特に問題にならない程かなって」


 呼び出したフレイちゃんを維持するのにも、魔力が必要なのか……消費量としては、意識しないと気付かないくらいだ。

 何もしていなければ、魔力回復量の方が勝っている可能性すらあるから、他で魔力を使わなければずっと呼び出したままにもできるかもしれない。 


「……はぁ。本来なら、維持しているだけですぐに魔力が枯渇するんだけどね。そもそも呼び出す事自体できないけど。ほんと、リク君の魔力量は僕でさえ驚く程だよ」

「リクの魔力は、もう考えるだけ無駄なのだわ。というかリク、私を置いて行くななのだわ!」

「あ、エルサ。そういえば……」


 溜め息を吐くネメアレーヴェさんに答えつつ、俺に叫んだのは、部屋の扉を開けて……正確には、獣人メイドさんの一人に開けてもらって入って来たエルサだった。


「その様子だと、忘れていたのだわ! リクは酷い奴なのだわ!」


 ネメアレーヴェさんの登場で、忘れていたわけだけど……エルサにはすぐ見抜かれたみたいだ。

 キューや料理を食べるのに夢中だったし、ネメアレーヴェさんが現れた時も、ユノ達と違って興味を示さずそのまま食べ続けていたようだったからね。


「ごめんごめん。エルサも頑張ったからそのまま食べてもらっている方がいいかなって思ったんだよ」


 自分が忘れていたのを棚に上げての言い訳。

 後で説教をされる気がするけど、とりあえずエルサは俺に言いたい事がありそうなのを飲み込んで、俺の頭にふよふよと飛んできてドッキング。

 忘れていて酷いと自分でも思うけど、やっぱりこの形が俺としては一番しっくりくるね。


 ただ、どれだけの量を食べてきたのか……満足するまで食べた影響だろう、大きさはいつも頭にくっ付いている時と変わらないのに、少しだけズッシリとする感覚があった。

 重いとかいうと怒られそうだから、口には出さないけど。


「あ! 魔力を使っているのだわ! 私に魔力が流れてこないのだわ!」

「痛いからやめてエルサ。今はフレイちゃんを呼び出しているからね。そっちに魔力が行っちゃっているのかも」


 抗議をするように、俺の頭をペシペシと叩くエルサ。

 ちょっと痛いから、やめて欲しい。

 フレイちゃんの維持で魔力を使っているから、いつも大量すぎて漏れている魔力がなくなっているらしい。

 エルサは俺から漏れた魔力を吸収するのが好きだからなぁ。


「さすがに、いつまでも維持ができるだろうってくらいでも、このままってわけにはいかないか……」

「それだけじゃないよ、リク君。通常なら呼び出す、というか形を作るために魔力を使って終わりになる。スピリット達は自然の魔力の集合体のようなものだかね。呼び出した後は自然の魔力を使って存在の維持や力の行使をする。けど――」


 ネメアレーヴェさん曰く、自然の魔力を使うから呼び出す以外では俺の魔力などは必要ないけど、今は違う呼び出し方をしている。

 魔力的な繋がり、エルサとの契約に近い状況なので、フレイちゃんが姿を維持するためだけでなく、力を行使するのにも俺の魔力を使う事になるのだとか。

 だからなのかはわからないけど、フレイちゃんとの確かな繫がりを感じる。


 なんというか、目で見て姿を確認するだけでなく、確かにそこにいるのだと温かい存在を感じるといったところか。

 少しだけ、エルサとの契約に似ているかもね。



「リク君の魔力なら、そこまで気にする必要はないかもしれないけど、一応注意はしておいてね。気付いたら魔力が枯渇している、なんて事になったら目も当てられないよ」

「わかりました」


 これまでは呼び出す際の魔力消費だけで良かったけど、今後は違うわけだ。

 俺の代わりに魔法を使ってくれる、と考えればいいのかもしれない。

 むしろ、加減もできるフレイちゃんに任せた方が、俺より的確に魔法を使ってくれるだろう。

 フレイちゃんだから、炎系に限られるけどね。


「まったく、リクは誰にでも魔力を使うのだわ」

「……まぁ、持て余しているくらいだから、無駄にするよりはいいと思うんだけどね」


 エルサとしては、俺の魔力が独り占めできないから拗ねている部分もあるのかもしれない。

 そう考えるとちょっと可愛く思えるな……と考えていたら、契約のつながりを通してエルサに伝わったのか、頭をはたかれた。

 ……さっきよりも痛いけど、照れていると考えておこう――。



素直になろうとしても、まだ照れが勝るエルサのようでした。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


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