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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1931/1950

獣王国祝勝会

ブックマーク登録をしてくれた方々、評価を下さった方々、本当にありがとうございます。



 以前、帝国に戦争を仕掛けた国の軍隊は、マギシュヴァンピーレによって一人残らず壊滅したらしい。

 通常、殺し合いの戦争であっても敗北側は何割かは生き残る。

 死者よりも怪我をして戦えないという人の方が多い場合だってあるはずだ。

 それなのに一人残らずとは……マギシュヴァンピーレを直に見た後だからわかるけど、おそらく逃げる事もできず魔力を吸いつくされたんだろうな。


「……じゃあ、その場所は今でも不毛の大地になっているんですか?」


 いち早く気を取り直した、というよりまだ衝撃を引き摺っているようだけど、それでも声を絞り出すようにしているモニカさん。


「そうね……帝国との国境に面した場所、緩衝地帯だったから人が暮らすような事のない場所でもあったのが幸いね」

「そうですか……」

「その際に、第三段階というのまで見たわ。あまり近付きすぎると魔力を吸われて危険だから、離れてだけど。私は魔力誘導で多少は防げても、完全にはいかないしね。それで、限界を超えて魔力を吸収したマギシュヴァンピーレは、塵になるように消えていったわ。魔力が一切残らない場所と外傷が一切ないのに、もう動く事のない人間だけを残して、ね」

「かなり異様な光景だったでしょうね……」


 さらに追加で、不毛の大地になった場所では魔法が使えなくなってしまっていたらしい。

 考えてみればそうか。

 ドラゴンの魔法はともかくとして、この世界で一般的に使われている魔法は、人などの体内にある魔力を核のようにして自然の魔力を集めて変換し、発動するもの。

 だから、自然の魔力すら一切なくなってしまった場所では、使えないんだろう。


 多分、自分の魔力だけで魔法を使うドラゴンの魔法、それが使用できる俺やエルサなら話は別なんだろうし、エルサも今の話を聞いてそう言っていた。

 まぁ現状は、魂の損傷が原因で練習してなんとかできるようになった結界くらいしか、俺は使えないんだろうけど。 

 そしてその話の中で、現皇帝も魔法を使って見せたらしい……これはおそらく予想通りなんらかのドラゴンと契約しているからだと思われる。

 この世界に来た直後の俺よりも魔力量があるらしいので、自然の魔力を必要とせず魔法が使えた、という可能性は絶対ないとは言い切れないけど、それよりもドラゴンの魔法の方があり得るだろう。


「あとそうね、他に話すとすれば……さっき話した核を壊せばって弱点に繋がる事なんだけど――」


 レッタさんによると、第一段階に対して現皇帝が魔法を使って消滅させた、という事らしい。

 一応とはいえ対処できる事で、現皇帝の……その時はまだ皇帝ではなかったらしいけど、その人が主導し秘密裏に行っていたマギシュヴァンピーレの研究が、数段進める事ができるようになったらしい。 

 ちなみにだけど、マギシュヴァンピーレを使った対軍隊の時もまだ秘密にしていたため、正体不明の魔物が現れたという事にしたようだ。

 そのため、帝国側の軍にも犠牲者が出たとか。


 姉さんの話を聞く限り、前皇帝は無能な人ではなかったようだからもしかしたら、ある程度勘付いていた可能性はある気がするけど。

 自分の息子がやる事で、ある程度目をつむっていた、知らないふりをしていたとかかもしれない。

 まぁそのあたりは、現皇帝率いる帝国を打ち倒して前皇帝を探し出してから、聞けばいいか。


「リク様! 準備が整いましたぞ!!」


 レッタさんが知る限りでマギシュヴァンピーレの詳細をほとんど聞き終わった頃、タイミング良くハルさんが飛び込んできた。

 どうやら俺達を歓待する準備ができたらしい。

 あまり大仰な事はやめて欲しいけど、ハルさんの様子を見る限り諦めた方が良さそうだ。

 ともあれ、俺達は冒険者さん達や兵士さん達も一緒に、ハルさんに連れられて城の中を移動。


 途中、ハルさんから案内がてらに城内の事をあれこれ教えてもらったけど、獣王様が自らというのはいいのだろうか? アマリーラさんがハルさんと同じ事をやりたそうにしていたのはともかくとして。

 俺はもうほぼ諦めたし、ハルさんと呼んでいるからいいけど、連れている人達……特にヴァルドさん率いる兵士さん達は恐縮しきりだった。

 軍所属という事もあって、身分的なものには敏感だからだろう。

 逆に、そういった身分などに基本的には捕らわれない冒険者さん達は、多少緊張してはいるようだけど普段とあまり変わらなかった。


 俺の歓待とかをしているよりも、残っている魔物の討伐を優先した方がいいんじゃないかな? とは思ったけど、そちらは大丈夫らしい。

 マギシュヴァンピーレを倒した後、俺がハルさんに連れられてエルサと合流するまでに、大方の魔物は倒してしまっていたとか。

 ミスリルの矢……というより、この場合はエルサとヴァルドさんの弓隊が凄まじい効果を示した、という事らしかった。

 もちろん完全に魔物を掃討したわけではないので、獣人さん達の一部はそちらに行っているらしいけど、もう王都に侵入されるような恐れはなく、避難民を戻すように報せも送っているとか。


 獣人さん、仕事が早い。

 獣王様自ら先頭に立っているから、迅速なトップダウンで動きもスムーズなのかもしれないな。



「……俺、この位置でいいんでしょうか?」

「問題ございませんぞ!」


 案内された先は、舞踏会が開けるような大きな広間。

 特に飾り付けが豪奢なその部屋で、ステージのようになっている場所の中央に俺の席が用意されていた。

 一段どころか数段高いその場所で、モニカさん達の席も用意されていたんだけど、リネルトさんが気を利かせて豪勢な料理が並ぶテーブルへと連れて行ってくれていた。

 俺だけは、ハルさんに捕まって逃げ出せなかったので、エルサを捕まえて頭にくっ付けて道連れにしたんだけど……落ち着かない場所でも、エルサのモフモフがあるからなんとか正気を保っていられるなぁ。


「……絶対、キューを用意させないと許さないのだわ」

「さっきあれだけ食べてたのに、まだ欲しがるのか……」


 頭の上から聞こえてくる恨み節。

 マギシュヴァンピーレの話を聞いている間中、ずっとキューに埋もれるように食べ続けていたのに、まだ食べるというのか。

 キューに対しては、ブラックホールのようなお腹を持っているな……。


「そろそろ、皆の準備もできたようですな」

「そ、そうみたいですね」


 ハルさんの声に導かれるように、広間を見渡す。

 百人は優に超える獣人さん達、それに混じったモニカさん達が料理が盛りだくさんな複数のテーブルを立って囲み、さらに俺やハルさんを含む全ての人達がグラスを持っていて、なみなみと飲み物注がれている。

 他はわからないけど、俺は一応お酒は遠慮しているから、ただの果実ジュースだけど。

 今か今か、と開始の合図を待っている獣人さん達は、それぞれ多種多様な尻尾を揺らし、こちらに輝くような眼を向けている。


 ちなみにハルさんは、俺の斜め前辺り……おそらく最上位に俺を置いて、その下にいるという意味なんだろうけど、普通に話せる距離。

 さらに少しずれてアマリーラさんと初めて見る獣人さん数人がいた。

 手を伸ばせば届く距離にテーブルがあり、お皿や料理などが盛り沢山だけど、おそらくそこに俺が手を伸ばす事はなさそうだ。

 注目を集めて緊張しているからではなく、部屋でお世話をしてくれていた使用人さん数名が近くで待機しており、その人達が俺やハルさんの飲み物含め、あれこれやってくれるから。


「さて……頃合いか」


 広間を見渡し、小さく呟いたハルさんが立ち上がる。

 集まった人達が全員そちらを向き、モニカさん達以外というか獣人さんの全てが表情を引き締めたように見えた。

 アマリーラさんや、一緒にいる獣人さんも立ち上がってハルさんに体を向ける。

 というかそちらの獣人さんは誰だろう? 近くにいるから立場的にも高いんだろうとは予想できるけど、紹介は後でとハルさんに言われてしまったからね。


 なんとなく、ハルさんやアマリーラさんに似ていて、尻尾や耳がネコ科のものだから想像が付くけど。

 結構親しげに話していたし、ハルさんの少し下の位置で王女様であるアマリーラさんと同等、と考えるとね……。

 そうしているうちに、静かに息を吸い込んだハルさんが広場にいる全員に向けて話し始めた。


「皆、よく集まってくれた! まだ避難させた者もいるため、我がティアラティア獣王国の重鎮全てではないが……そちらはいずれ戻り、これまで通りになるだろう。押し寄せる魔物に対しても、よく戦ってくれた事だろう。それは、共に戦っていた我もよく知る事だ!! 想定外の攻勢により門を破壊され、一時は王都への侵入を許しかけたが、それも退けられた!」


 魔法での拡張などは一切なく、よく通る大きな声で広場全員に響かせるハルさん。

 もはや祝勝会のような感じになっているけど、まだ魔物は残っているんだよね。

 まぁ、もう王都が脅かされる程の数はいないようだから、勝ったと考えてもいいんだろうけど。


「集まってくれた皆ならば知っているはずだ、王都への魔物の侵入を防ぐだけで手いっぱいになっていた我らを救い、多くの魔物を退けるために助力して下さった方々がいる事を!!」


 いったん言葉を切り、広場を見渡すハルさん。

 それに応えるかのように、多くの視線が俺に集まった……そういえば俺だけ座ったままだった、立った方がいいんだろうか?

 と、戸惑いながらも立ち上がる俺だけど、注目されているのは他にも獣人さん達に混じっていたモニカさん達、それにつれてきた冒険者さん達や兵士さん達にも向けられているのがわかる。

 俺達以外は全て獣人しかいないから、人間は目立つってのもあるんだろう。


 ちょっと戸惑っている様子に、少し高い場所から見ているとわかるのが、ちょっとだけ面白い……俺も似たようなものだしね。

 ちなみに先ほど、重鎮全てではないとハルさんが言っていたけど、それは要職に就いていても戦えない獣人さんもいて、そちらは避難しているからだそうだ。

 ここに集まっているのは、生活をするためのお世話係など、最低限の獣人さん以外は全て戦える人達だとか。


 アマリーラさん曰く、獣人は戦える者と戦えない者がはっきりと分かれているらしい。

 なんて考えている間に、再びハルさんが口を開いた。


「我が娘、アマリエーレが友好国であるアテトリア王国より、助けを連れてきてくれたのだ! 彼らは空を駆け、大量にひしめく魔物へと飛び込み、我らが窮地を救って下さった!!」


 獣人の皆さんから一斉に、「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」という熱狂した歓声が上がる。

 大体の事情や状況は知っていても、どういう経緯なのかとかはまだ詳しく知らない人達もいたんだろう。

 先ほど以上に熱気の籠った視線が、俺やモニカさん達へと向けられる。


 一部、なぜここに人間が? というように首をかしげていた獣人さんも、ハルさんの言葉で納得したようだ。

 ただ、俺に向けられる時だけは、そういう人も納得した様子になったり、なぜか後ずさって戦慄しているような表情になったんだけど……あれはなんでだろう?

 頭に毛玉ならぬ、エルサを乗せているからだろうか? エルフの村でもそうだったけど、ドラゴンの事を多少は知っていて畏敬や崇敬していたのと、同様なのかもしれない。


「その中でも、皆も見ただろう! 毛が総毛立つ程のおぞましい魔物を!」


 ……マギシュヴァンピーレの事だろうか。

 あれを見た時の事を思い出したのか、ほとんどの獣人さんが尻尾を立てて毛をそばだてていた。

 かなり巨大だったから、かなり離れていても見えただろうしな。

 魔力を感じただけでも、腹の底から嫌な予感が湧き出てくる程の異様さと歪さだ。

 きっと人間より感覚が鋭いと思われる獣人さん達なら、見ただけでおぞけが走ってトラウマが植え付けられたりしていてもおかしくない。


「あれを消滅させてくださった方こそ、ここにおられるリク様だ! リク様は我が一目見ただけでわかる絶対的な強者! しかし、それもあのおぞましい魔物が出現し、消滅させた事で我の目測以上であった事を思い知らされたのだ!! 我が獣王国は、様々な力が重要視される国! その我が国に舞い降りて下さったリク様は、まさしく英雄である事に間違いはない! 此度は、英雄リク様に感謝を示し、歓待するための宴である!! 皆の者、リク様と出会えた幸運に感謝し、存分に騒ぐがいい!!」

「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」

「「リク様、ありがとうございます!!」」

「「「「英雄リク様に、最高の感謝を!!」」」」


 広場が、いや城全体が揺れる程の大歓声が響き渡る。

 獣王国を助けるために来たのは確かにそうなんだけど、俺ここでも英雄扱いなのかぁ。

 嫌ではないしある程度慣れてきたけど……ハルさんを始めとして、獣王国の人達の多くは俺がアテトリア王国でも同じように呼ばれているなんて事は知らないはずなのに。

 アテトリア王国の最高勲章、一部では救国の英雄勲章と呼ばれているらしいけど、それが授与された人間がいる、くらいは知っている人がいてもおかしくないけど、それが俺だとまでは繋がっていないと思う、今はまだ。


 どうせすぐにアマリーラさんとかリネルトさん辺りが広めるんだろう、特に口止めしていないしすることでもないからいいんだけど。

 そんなアマリーラさんは、大歓声の中気持ち良さそうにというか何故か得意気な様子だった。

 俺を連れてきたのがアマリーラさんだ、とハルさんから紹介されたのが原因だろうか? いや、違うな。

 多分これは俺が歓迎されている事に対してだろう、俺も大分、アマリーラさんやハルさんなどの、獣人さん達のノリがわかってきた気がする。


「リク様、皆に一言いただけますかな?」

「え、俺がですか……そんな……俺なんて」

「リク様以外に、相応しい者はおりません。皆わかっているのです。リク様の活躍を知り、リク様を目の当たりにする事で、その絶対的な強者のオーラを。ここ獣王国では、力のある者をこそ尊重されます。それは戦う力のみに限るわけではありませんが、リク様は特に優れている、などの言葉では言い表せない程のお方です。どうか、よろしくお願いしたく……」

「は、はぁ……わかりました。そこまで言うのなら……」


 興奮冷めやらぬ、どころかこれが獣人さん達の流儀なのか、ハルさんの演説が終わった直後以上に盛り上がり続け、さらにヒートアップしている皆。

 そんな中で声をかけるなんていいのかな? とは思うけどハルさんに頭を下げられてまでお願いされたら断れない。

 というか、この国で一番偉い人のはずなのに、そのハルさんが国民である獣人さん達の前で頭を下げて、何事か、とみている人もいるようだ。

 何を言っていいのかわからないけど、とにかくやるしかないみたいだね。


 それにしても、強者のオーラってもしかして俺が纏っている分厚い魔力の事だろうか?

 エルサを見たからではなく、それを感じられるから時折獣人さんの俺を見る目が、おかしかったのかもしれない。

 今後獣人さん達の前に出る時は、魔力を放出した後の方がいいのかもしれない……放出する場所に困りそうだけども――。




獣人は人間とは違う感覚でリクを見ているのかもしれません。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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