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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1929/1950

待ち時間は気になっていた話を聞く



「あちこちある爆発跡は、フレイムフォグのせいなんですね」


 ユノ達が遊んでいるその向こうで、跡形もないと言う他ないくらい完膚なきまでに破壊された門。

 巨大化したエルサが悠々通れるくらいの門の面影は、申し訳程度にというか周囲に残っている外壁から察せられるが、爆発跡と思われる焦げ跡などを残しながら、そこだけぽっかりと口を開けているようだった。

 話を聞いてみれば、門の前で戦って魔物の侵入や外壁へ取り付くのを防いでいたのだけど、フレイムフォグが大量に突撃。

 大爆発と共に破壊されたらしい。


 俺達の方にも結構フレイムフォグが飛んできていたけど、さすがに巨大な門を跡形もない程一気に破壊できる程じゃなかったと思う。

 多分だけど、門や建物などを破壊するために、魔物達の中に組み込まれて、そちらで多くを消費したんだろう。

 ほんと、帝国は爆発させるのが好きだな……破壊という意味ではわかりやすいけど。


 ともあれ、いつまでも門やユノ達の遊びを鑑賞しているだけではいけないので、合流して適当に周辺の魔物を掃討。

 さすがにその頃には、肩車してくれていたハルさんから降りて、俺も参戦。

 何故かピッタリと張り付いて、俺の一挙手一投足を見逃すまいとしているハルさんを近くに置きつつ、門の外と内の魔物を倒して行った。

 門内では、アマリーラさんとリネルトさん、その他数名の獣人さんが鬼の形相で暴れていたが、それはともかく……俺の姿を見た瞬間、アマリーラさんが止まって駆け付けたり、再びハルさんに肩車されるなどの一幕はあったけどそれはいいとして。


 アマリーラさん達はともかく、他にも戦っている獣人さんを見ると、フレイムフォグによる門破壊のアクシデントはあれど、大量の魔物達は獣人さんだけでなんとかなるだろう、と言っていたリネルトさんの言葉も納得できた。

 ユノ達のように遊ぶ感じではないけど、アマリーラさんばりに暴れて、魔物が吹っ飛んでいたからなぁ。

 時々、味方のはずの獣人さんも吹っ飛んでいたけど。


 門の内側にある崩壊した建物に、魔物だけでなく獣人さんがめり込んでいたりするのは、見なかった事にした方がいいんだろう。

 ハルさんやアマリーラさんも、お気になさらずと言っていたし、めり込んだ獣人さんもさわやかな笑顔で手を振っていたしね。

 ……怪我とか大丈夫なんだろうか。

 そうしている間に、ある程度魔物を倒し終え、ミスリルの矢が尽きたエルサが疲れ果ててボロボロなフラッドさん達を回収してきて合流。


 エルサを見て一斉に跪く獣人さん達に驚きつつも、小さくなったエルサがいつものように俺の頭にドッキング。

 獣王であるハルさんに肩車され、さらにドラゴンのエルサが頭にくっついているという、モフモフに挟まれたモフモフタワー状態になった。

 それはともかく、フラッドさん達がボロボロなのは疲れと魔物の返り血や土汚れであって、多少の傷はあったけど大きな怪我はないようだ。

 結構無茶したっぽいけど、何事もなくて良かったかな……さすが、クラン選りすぐりの冒険者さん達だ。


「……あんまり、人がいないんですね」


 そんなこんなで、色々と力加減がおかしい獣人さん達によって、盛大に歓迎されながら王都に入り、王城へ。

 以前アテトリア王国の王都で行ったパレード以上に、獣人さん達が熱狂していて、どこを見てもモフモフの誘惑がばら撒かれている状況には目だけでなく、フラフラと釣られそうになったけどそれはともかく。

 アテトリア王国の王城よりは小さく、というよりあまり背の高い建物を作る文化ではないのは、王都内を歩いているときも感じたが、その城内では鎧を着た兵士さんが多少いるくらいだった。


「一部の者を除いて、避難させましたからな。王都も含め、残っているのは戦える者達ばかりです」

「そういう事ですか」


 国境の関所にもいたけど、戦えない獣人さん達は各地に避難させたから、人気が少ないのか。

 王城内は華美ではないけど内外で白亜の綺麗で、それなのに人気がない今の状況は少し寂しいように思えた。

 まぁ、魔物がいなくなればいずれ元に戻るんだろうけど。


「ではリク様、歓迎の準備をしてまいりますので、こちらで少々お待ち下さい」

「えっと、あまり大袈裟に歓迎とかは……人も少ないんでしょうし、魔物の数が減ったら早くアテトリア王国に帰ろうと思っていまして」

「リク様を歓迎しないなど、ティアラティア王国の恥! ひいては、王族の恥でもあります! なにとぞ……なにとぞ!」

「は、はぁ……」

「リクさん、少しくらいならいいと思うわよ? さっきのあれで、ほとんど魔物がいなくなったしね。歓迎が数日に及ばなければ、予定より早く帰れると思うし」

「……数日、少なくとも五日くらいは、歓迎の催しをするつもりだったのですが」

「え!? さすがにそれは……!」


 五日も獣王国に留まっていたら、帝国との戦争までの時間がほぼなくなってしまう。

 さすがにそれは、とアマリーラさんを味方につけてハルさんを説得し、とりあえず今日だけという事になる。

 国を挙げて、それができなければ最低でも王都を挙げての歓迎の催し、お祭りになりかけていたのを、アマリーラさんの「リク様はお忙しい!」と一喝してくれて、なんとなかった。

 その後、ボソッとリク様の仰る事に逆らうのですか……? と脅し文句と、さらにこれ以上食い下がるようであれば、リク様と共にこの国を滅ぼし、父上とも一生口を利きません、と言ったのがとどめになったようだけども。


 国を滅ぼすなんて事はしないけど、ハルさんにはむしろ後半の一生口を利かないという文言が効いたようだった。

 尻尾を垂れ下げながら、部屋を出ていくハルさんの背中は哀愁が漂っており、獣王様としての威厳はどこにもなかった。

 マックスさんもそうだけど、父親というのは娘にかなわない生き物なのかもなぁ……。


「それにしても、この部屋ってすごいですね。広いし、城内の他では見られなかった豪奢な部屋のような気がします」


 部屋はアテトリア王国の王城に用意されている俺の部屋が、すっぽりと入る程の広さで、調度品やソファーなども一目見てわかるくらいに高級そうだ。

 けど過度ではなく過ごしやすさなども考えられているように思う。

 それだけ、気を使って作られた部屋のようだ。

 ちなみにだけど、部屋と言っても一室ではなく小部屋……それでも高級宿の部屋よりも広く、それがいくつかあり、さすがに台所などの水場はないけど、一室と言うよりも一戸と言った方がしっくりくるかもしれない。


「リク様のための部屋と言っても過言ではないでしょう。いえ、これでもリク様を歓待するには不足なくらいですが」

「貴賓室として用意されている部屋になりますねぇ。まぁ、これまで使われた事はないのですけどぉ――」


 リネルトさんによると、この部屋は国賓などの獣王国にとって重要な人物を歓待するために用意されているのだとか。

 ただ、例えばアテトリア王国の女王様である姉さんなどが訪れても、使われないという程らしく、なんのために用意されているのかわからない部分はあると思ったけど。

 要は獣王国として、国王が認めた強い人物のための部屋という事らしい。


「そんな部屋を、俺が使うのはいいんだろうか……」

「だわぁ……疲れたのだわぁ……」


 早速フカフカのソファーでゴロゴロしているエルサのモフモフを撫で、立派すぎる部屋にいる中での平静を保ちながら呟く。

 連れてきた兵士さんや冒険者さん達は、俺達とは同じ部屋の別の部屋……言い方が難しいけど、貴賓室の中での別部屋にいる。

 時折、感嘆の声なのかよくわからない叫びのような声が聞こえてくるけど、多分部屋の豪華さに驚いているんだと思う。


「リク様にはここでも不十分かとは思いますが、それでもこれ以上の部屋を用意するのは、少々日数をいただかなければと……」

「いえ、この部屋が悪いとかではなくて、むしろ俺が不十分と言いますか……」


 不満そうにしていたつもりはないけど、アマリーラさんは俺がこの部屋を気に入らなかったと勘違いしたようだ。

 過剰すぎる部だし、さらに豪奢な部屋を用意する必要はありません、ととりあえず説得しておいた。


「失礼いたします!」


 窓から入る気持ちのいい風を感じ、部屋の快適さを堪能しつつ話していると、十人を越える獣人さんが来た。

 全員が統一された服、アレンジされたメイド服、執事服のようなのを着ているから、このお城の使用人さんとかお世話係みたいな人達なんだろう。

 パッと見の服はアテトリア王国の王城にいるメイドさんや執事さんの服とかに近いけど、よく見ると体にピッタリ合うような物で、アテトリア王国のゆったりとしたヨーロッパ風の使用服ですぐ想像できる物とは違う。

 キュロットスカートだっけ? 女性はスカートっぽいけどズボンの形になっている物だし、動きやすさを優先しているのかもしれない。


 そういうところは、なんとなく獣人らしいなと思うけど。

 あと、獣人の最大の特徴である獣耳と尻尾はちゃんと外に出るようにされている。

 全員がモフモフそうな耳と尻尾で、ついつい興味が惹かれてしまうのを我慢するために、エルサを撫でる手に力が入ったけど……エルサから抗議の声が聞こえるけど、それはスルーしておこう。


「さて、少し落ち着いたし、まだしばらくかかるみたいだから、今のうちにレッタさんに聞いておきたい事があるんだけど……ただこの状態じゃ、ちょっと話しづらいかな?」

「この者達は、父王の身の回りも担当している者達ですが、ここで見聞きした事は例え父王……獣王国の国王であっても漏らす事はありません」

「お世話をしつつも、安心してお話できるようにぃ、そういう教育をされているんですよぉ。最大級の歓待のため、ですねぇ」


 使用人さん達は、俺達にお茶を出してくれたり等々、同室別室……と言えばいいのだろうか? フラッドさん達やヴァルドさん達のお世話などを終えて、一部が俺達のいる部屋の隅で待機してくれている。

 何か用向きがあれば、いつでも申し付ければいいという事なんだろうけど、ハルさんの準備が終わるまで特に何かあるわけではないので、壁の花のようになっていた。

 いや、壁の花っていうのは社交界とか舞踏会で使う言葉か……男性の獣人さんもいるしね。

 ともあれ、別に秘密の話がしたいわけではないけど、それでもなんとなく話づらさを感じてどうしようか? と思ったけど、アマリーラさんとリネルトさんからは問題ないとの返答。


 俺の言葉を聞いてか、なんとなく使用人さん達の存在感みたいなものが薄れた気もする。

 視線とか、息遣いみたいなものが気にならなくなった。

 よくわからないけど、そういう教育をされているからいいのだろう、と無理やり納得しておこう……詳しく聞いても、わかりそうにないしね。


「はぁ、リクの聞きたい事はあれね。最後に出てきた魔物。あれを、魔物と言っていいのかは疑問だけど」

「あ、うん。そうです。近くで見たからよくわかるけど、あれは生き物と言っていいのかすらわからない存在でした」


 レッタさんは、使用人さん達の事が気になる様子はなく、溜め息を吐きながら話始めた。

 視線は用意されたお菓子を頬張るロジーナから離れないけど。

 ……もしかして、溜め息を吐いたのは話す内容とかよりも、ロジーナの観察を邪魔されたからだろうか?

 ちなみに、ユノも同じくお菓子を頬張っており、エルサは使用人さんにお願いしてキューが用意され、それに埋もれるようにして食べている。


「遠くから見ていても、異常としか言いようのない存在だったわよ、リクさん。ただ見ているだけなのに、何か不安になるような、嫌な気持にさせる相手だったわね」


 とんでもなく大きくなっていたから、ミュータントはモニカさんからも見えていたんだろう。

 この分なら、空を飛んでいエルサだけでなくかなり遠くで戦ってくれていたフラッド達も、見えていたかも。


「隠しておく義理もないから話すけど……リクには言ったわね。帝国の奥の手よ」

「奥の手なんて用意していたのね。でも、獣王国に向けて使ったら、奥の手の意味がないんじゃ……」


 モニカさんの言う通りで、奥の手は最後の最後まで隠しておくから効果がある、ような気がする。

 まぁ奥の手に求める内容によるのかもしれないけど。


「実用段階であるなら、奥の手というより主力になり得るものなの。本来は奥の手ではなくて、主力として研究されていたのよね」

「主力……? 確かに、目の前で見たらあれが出てきたらそれだけで脅威というか、大きな街とかも簡単に潰せそうですけど」


 ひたすらに魔力を吸収するミュータント。

 被害は周辺の自然環境と魔物だけで留める事ができたけど、あれが獣王国の王都に襲い掛かればどうなるかは、近くで戦った俺が一番よくわかる。

 離れて見たモニカさんや、他の人達もあの異様さは理解しているようだし、それだけ生物としても兵器としても異常で協力だったのは間違いない。


「そうなんだけど、私が帝国にいた頃は実用できる目途が立っていなかったのよ。だから、主力として使うのではなく、奥の手にしていた……のよね、以前は」

「今は違う?」

「わからないわ。帝国は大国であるアテトリア王国を飲み込んで覇権を得ようとしている。それなのに奥の手であったはずのあれを、この獣王国に対して使うなんて何を考えているのか」

「実用できる目途って言ったけど、それが立ったからではないのか?」


 レッタさんがいなくなってから、実用化できるようになりこうして使われた。

 アマリーラさんも言っているけど、俺もそうなんじゃないかと想像する。

 奥の手ではなく、当初の予定通り主力として。


「いえ、それはないわ……正確には実用できる目途が立たないのではなく、実用できないのよ」

「え、どうしてですか?」

「リクは近くで戦ったからわかるでしょうけど、あれを制御なんてできると思う?」

「……見ただけの感想になるけど、ただひたすら周囲の魔力を吸収して膨張していたみたいですし、制御できるようには思えませんでした」

「そう。制御できない手段なんて、主力にはできないわ。あれを制御する方法なんてこの世に存在しないのではないか、とすら思えるし、帝国でもその結論だったの」


 制御できないのにそれを主力だなんて、頼りないというか信頼ができないからそれもそうか。

 まかり間違って自分達の方にミュータントが向かえば、それこそ自滅だ。

 追い詰められて、最終手段の奥の手として自爆覚悟で使う……そんな存在だったのだろう。


「しかも、リクも言っていたけどひたすらに周囲の魔力を無尽蔵に、ただただ吸収をし続けるわ。その結果どうなるか……しばらく、いえ永遠なのかも知れないけど、その地は不毛の大地になる。制御できれば別だけど、それはできない」

「……近くの魔物から魔力を吸収するだけでなく、直接取り込んで吸収もしていたし、近くにいた俺からも魔力を吸い取っていたみたいだし、それに土や草花なんかも枯れていました」



人に被害が出なくても、放っておいたらやべぇやつだったみたいです。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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